第62話 サキヨマの企み

「あ!ユウマだ!」

「おい!ユウマ!」

「止まれ!」


俺とブラックドッグのクロドが街を歩いていると、声をかけられた。


「ん?」


振り返るとサキヨマもと騎士団長と2人の男が普段着で、駆け寄ってきた。


「おい、一緒に騎士団詰め所に来て貰おうか」


サキヨマが俺の腕を掴もうとしたので、亜空間を展開した。


カツン。

「痛ぅ」


あ、突き指したかな? 骨折まではいってないと思うが……。


「どの様なご用ですか? 同行は拒否します。この場で仰って下さい」


「き、貴様ぁ」

掴もうとした指を押さえて、サキヨマは怒りをあらわにする。


「この街に暮らす者として、騎士団の活動に協力しろ」


「お断りします。その服を見ると休暇中じゃ無いのですか? 公務中とは思えませんね」


「ぐぬぬ、『蜘蛛の牙』の情報を教えろ」


「拒否します。必要な事は騎士団で調べて下さい」


「なにぃ!住民の安全の為に必要な事だ。『蜘蛛の牙』の拠点が後2つあるらしいな。最低でも場所は教えろ!」


「ん~、それくらいなら良いかな? え~と、ねぇ」


俺は空間把握の能力で現在の『蜘蛛の牙』の拠点を確認し、逃げた奴らも潜む場所をサキヨマに教えた。


「そこに逃げた者もいますよ。敵の数が多いので、騎士団全員で行く事をお勧めします。」


「お前も来い!」


「お断りします。それでは、さようなら」


俺はその後にサキヨマ達が、何か言ってたが無視して歩き出す。


ガツン!


俺を追ってこようとしたサキヨマ達は、俺が展開した亜空間に頭を強かに打って昏倒した。


下を見たまま歩いてて電柱に当たったら、物凄く痛いんだよね。予測してない衝撃に身体の備えがない事から、相当痛いはずだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「痛ぅ」

ヨロヨロと起き上がるサキヨマ達。


「くそっ、ユウマめぇ」

指を擦るサキヨマ。


「あいつも懲らしめたいですねぇ」

おでこが赤く腫れてるトカツモ。


「全くです」

トカツモの背中に当たっただけなので、怪我らしい怪我のないリマサノ。


「そうだ。良い考えがあります。」

リマサノは冒険者達の噂を思い出した。


「何だ!」


「ユウマはダンジョンで頻繁に冒険者達を助けているらしいです。冒険者が『蜘蛛の牙』に捕まれば、助けに行くはず」


「成る程、それは良いアイデアだ」


「助けに行ったユウマの後から拠点に行くのだな」


「あわよくば、『蜘蛛の牙』とユウマが争う隙を狙って、両方倒せば一石二鳥だ。ぐふふ」


良からぬ事を考えながら、ユウマに教えられた拠点に向かうサキヨマ達。


「おい!あの小娘を見ろ」

「おお!冒険者ギルドで見た事がありますね。ぐへへ」

「上手く騙して拠点に連れて行きましょう」


サキヨマ達は、1人でトボトボ歩いていた女性の元に駆け寄り取り囲んだ。


「な、何ですか?」


「お嬢さん、俺は騎士団のトカツモだ。ちょっとしたお願いがあるんだ、この街に暮らす者として、騎士団に協力して欲しい。」


「あぁ、サキヨマ騎士団長とトカツモ副団長ですね。普段着だから分からなかったわ」


「そうそう、俺はサキヨマだ。実は今俺達は、私服で調査中でな……」

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