第56話 騎士団の活躍?

俺とブラッグドッグのクロドは、『蜘蛛の牙』の拠点を出た後、顔を見合わせた。


「クロド、『蜘蛛の牙』の拠点が、後2つ残っているんだけどさ・・・」


「みなまで言わなくても、分かるワン」


「はぁ」


俺とクロドが『蜘蛛の牙』の拠点殲滅まで、後1歩まで追い詰めたところに乗り込んできた、勝ち誇ったサキヨマ騎士団長の顔を見て、一気にやる気が無くなったので、宿に帰る事にした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


次の日の朝、冒険者ギルドに顔を出すと・・・。


「昨日、騎士団が『蜘蛛の牙』の拠点を壊滅させたんだって」


「凄いねぇ。今まで末端のチンピラしか、逮捕出来なかったのに、騎士団の面目躍如だね」


騎士団の活躍が噂になっていた。

騎士団の活躍?

あれ? 騎士団って何かやったっけ?


俺とクロドが拠点に乗り込んで、『蜘蛛の牙』を制圧した後にやって来て、逮捕しただけでしょう。


ふむぅ。納得出来ないなぁ。


「おう!ユウマ、なんだか浮かない顔をしてるなぁ。何かあったかい?」


その時、『黒紅の無頼』のリュウセイが声を掛けてきた。


「リュウセイさん、お早う御座います。ちょっと納得が出来ない事があったので・・・」


「俺で良ければ相談に乗るよ。黒き獣の肉を分けて貰った借りもあるしね」


「有難う。この都市の貴族や大商人の事が分からないので、相談に乗って貰おうかな?」


「じゃあ、向こうで座って話を聞こうか」


ギルド併設の酒場のテーブルに座って、リュウセイに昨日の話をした。


「成る程、『蜘蛛の牙』などの闇組織は、盗賊と同じ扱いだから、捕まえて突き出せば、報酬と犯罪奴隷として売った代金が貰えるんだが、騎士団長にやられたみたいだな。騎士団が捕らえた事になってるな、噂も騎士団で流したんだろう」


「そう言う事か」


「今更、討伐を主張しても報酬を貰うのは難しいかもよ」


「あ、それは別に良いです。貰えるとは思って無かったし、まあ、聞いてしまったら悔しい気持ちはありますから、聞くだけ聞いてみますよ」


「そうかぁ。でも拠点が、まだ2つ残ってるんだろう?」


「はい。でも、騎士団の話を聞いたら、もう倒す気はなくなりました」


「ヤバいな。逆に『蜘蛛の牙』の反撃があるかもよ」


「反撃?」


「先ず、捉えられた仲間の奪還。そして騎士団とユウマに報復があるね」


「はぁ、元々潰そうと思ったので、来れば倒しますので俺は平気です」


「流石、ダンジョン攻略者だ」


「はは、それより、領主にお願いしたシミツコ商会の仕置きも、気になりますね」


「シミツコ商会が特に変わった噂は聞いて無いね」


「ええ!何のお咎めも無し?」


「それは分からないなぁ。調べて遣ろうか?」


「有難う御座います。タダでは申し訳無いので、これでお願いします」


昨日『蜘蛛の牙』から貰った隠し財産の中にあった、金貨を1枚渡した。


「え!! こんなに? じゃあ、関連する他の情報も探ってやるよ」


「お願いします」


そこに受付嬢のヤヨイが来た。


「すいません。ユウマさん、お願いがあるのですが、聞いていただけませんか?」


「ん?」


「それじゃ、俺は席を外すよ」

リュウセイはそう言う、席を立ち背を向けて歩いていった。


「リュウセイさん、お願いしますねぇ!」


俺が声を掛けると、リュウセイは背を向けて歩きながら、サムズアップして右手を軽くあげた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る