第55話 蜘蛛の牙

俺とブラックドッグのクロドは、2階建ての大きめの屋敷の前にいる。


「さてこの中にいる奴らは、全て『蜘蛛の牙』のメンバーである事は空間把握で確認した。クロド、行こう」


「分かったワン」


ガチャガチャ。


「ん? 鍵が掛かってるなぁ。まあ、当たり前か」


コンコンコン!

ノックをする。


「誰だ!」

ドアの内側から声がする。


「あぁ~。どうしよ、何にも考えないでノックしちゃったよ」


「ははは、任せろワン」


クロドがちょっと下がり、勢いを付けると、ドアに体当たりした。


ドゴンッ!

「ぐへっ」


クロドが押し倒したドアに、押し潰された人がいた。


とりま、服と武器は亜空間に収納だ。


「何だ何だ!」

「お前誰だ!」

「その黒い犬はブラックドッグか?」


奥から出てきた3人の男。

此奴らの武器と服も亜空間に収納だ。


「え? 何で裸になってんだ?」

「ぶ、武器が無い。

急に全裸になりオロオロする男達。


ドカッ!

「ふげっ」

「ぎゃっ」

「ぐへっ」


クロドが全裸の男達に体当たりして、突き飛ばした。


俺とクロドは奥に進みながら、次々と出て来る男達を全裸にし、封印していった。


この屋敷を空間把握したところ、残りは3人。奥の部屋にいる。


ドカッ!


俺は奥の部屋の扉を蹴飛ばした。


シュッ。カツンッ!


部屋の奥から矢が飛んできた、俺の心臓の位置に正確に当たるが、予め展開していた亜空間が矢を弾いた。


「くっ、貴様ぁ!何者だぁ!」


部屋の中には3人は立っていた。

中央に眼帯の男、右に弓を構えた男、左に背の低い痩せた男。


中央の男が叫んでいた。


「あ、Cランク冒険者のユウマです」


「ユウマ? 何しに来た?」


「え~っと、俺が領主の屋敷に召喚されて行く途中で、シミツコ商会に雇われた『蜘蛛の牙』の男達に襲われたのでその報復と言うか、まあ、闇組織は犯罪集団なので、壊滅しに来ました」


「くっ、こんな暢気な野郎に、うちの拠点が潰されるとはな」


左側にいた背の低い男が居なくなっていた。空間把握してるから、秘かに動いたのは知ってるんだけど、鮮やかだね。認識阻害系のスキルがあるのだろうね。


俺の横に来てナイフで首を斬ろうとするが、亜空間に弾かれた。


カキンッ!

「へっ?」


「ふぁ~。どうするワン」

クロドが欠伸をして、顔を傾け俺を見ていた。


俺はチラッと背の低い男を見て、武器と服を亜空間に収納して封印した。


そして、弓を構えた男の、武器と服を亜空間に収納して封印した。


そして眼帯の男と向かい合う。


「な、何だと!くっ、貴様・・・」


「おい、ユウマ誰か来たワン」

「うん。分かってる。騎士団かな?」


ダダダダダダダダダダダダ。


大勢の騎士が部屋に入ってきた。


「蜘蛛の牙ぁ!観念しろやぁ!」


叫んだ男は・・・。


「ユウマぁ!ご苦労だったなぁ。後はこっちでやるから手を出すなぁ」


「サキヨマ? ・・・騎士団ちょ?」


どうだぁ。と言う顔で俺を見て、満足感100%の満面の笑みを浮かべるサキヨマ。


なんだか、ざまぁされた感覚なんだけど、どう言う事?


領主に、『蜘蛛の牙』を潰すから逮捕してねって頼んでいたので、何もおかしく無いんだけど。


なんだか納得がいかないが、俺は部屋を後にする。取り敢えず、その前に亜空間把握で確認していた、隠し金庫等金目の物は、亜空間に収納しておいた。


盗賊のお宝は捕まえた者の物だから良いよね?


てへ。


その後、サキヨマ騎士団長が領主の館に、全裸の男達を大勢連れ込んだと、腐女子メイド達の話題になったのは、言うまでも無い。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る