第57話 指名依頼
冒険者ギルドで受付嬢のヤヨイさんが、お願いがあると言う事で声を掛けてきた。
「どんな話でしょう?」
「ギルドからのお願いなのです。ギルド長の執務室に来ていただいても宜しいでしょうか?」
「はい。分かりました」
俺とブラックドッグのクロドは、ヤヨイさんに案内されて、ギルド長の執務室に行った。
執務室に入ると、ギルド長が執務机の椅子から立ち上がり、ソファに腰を掛けた。
「ユウマ、来てくれて有難う。まあ、座ってくれ」
「はい」
俺はギルド長の向かいのソファーに座った。
クロドは俺が座ったソファーの横に寝そべった。
「お願いと言うのはだな、『焔の剣』が依頼失敗していた、レア種のキラーデュラハーンの討伐の件だ」
「キラーデュラハーンの討伐?」
まだ解決してなかったの?
何やってんだろう。
「ユウマにギルドから指名依頼をするので、受けてくれんか?」
「指名依頼ですか?」
Cランクの冒険者に指名依頼って聞いた事ないよ。
「そうだ。このまま放って置けんのだ」
「何故でしょうか?」
キラーデュラハーン討伐ってAランクの依頼じゃないの?
「強力なレア種がいる為、ダンジョンに入る冒険者が極端に少なくなり、ダンジョンのモンスターが増えておる」
「はい・・・」
いやいや、それは知ってるよ。聞きたい事は違うんだけどなぁ・・・。
「このままの状況が続けば、モンスターの大量発生及び暴走、つまりスタンピードが起きて都市が危険に晒されるのだ」
そんな事は知ってるよ。常識でしょう。
「ん~、何点か確認があります」
「なんだ?」
「指名依頼ってBランク以上の冒険者にする依頼ですよねぇ。俺はCランクですので、受けられませんが?」
「指名依頼が出来んのは分かっておる、依頼を内々でお願いするのだ」
「ふむ。それが通ったとしても、キラーデュラハーンの依頼レベルはAだったはず、Cランクの俺に依頼するのは明らかにおかしいですよねぇ」
「む、ユウマなら2つ返事で受けると思ったのだがなぁ。レベルは足りんが、ダンジョン攻略者のユウマなら可能と思っておる。依頼では無くて、ユウマが自主的に対応して、結果の報酬に色を付ける形でどうだ?」
俺なら2つ返事で受けると思った?
自主的に対応って、依頼ですら無いじゃん。
随分軽く見られてるなぁ。そりゃちょっと前なら、正義感から二つ返事で即答したかも知れないが、騎士団とシミツコ商会の件で、何だか疑り深くなってるんだろうな。
「可能か不可能かで言うと可能ですし、討伐自体は全く問題ないんですけどねぇ。ギルドの規定を無視してまで、俺に頼む理由を知りたい。他の高ランク冒険者の仕事を取る事になるし、スタンピードの防止は騎士団案件ですよねぇ」
ああ、成る程、騎士団絡みかぁ。
騎士団から何らかの圧力を掛けられたな、このオヤジ。
騎士団の狙いは何だ・・・?
サキヨマは、Sランクの『焔の剣』が依頼失敗してるから、Cランクの俺が行けば失敗又は殺されると思ってるのか?
「むむ、そ、それは・・・」
「この都市に冒険者がいなくても、他の都市から呼べば良いし、冒険者じゃ無くても騎士団が行けばいいのですよね。ギルド長、騎士団からどんな圧力を受けてるのですか? それとも金ですか?」
ちょっと鎌掛けてみるか。
「む!そ、そんな事は・・・」
焦るギルド長から冷や汗が流れる。
あは、騎士団の圧力確定でした。
ジト目でギルド長を見る。
「はぁ、冒険者ギルドは冒険者の味方だと思ってるから話しますが・・・」
と言って、昨日の出来事をギルド長に話をした。
「ギルド長が冒険者より、騎士団側に立つなら、俺はこの都市を出ます。それと、この件は他の冒険者の方々にも話します」
「ちょ、ちょっと待て、ユウマと騎士団の事情は分かった。儂からも『蜘蛛の牙』の件については、正式にクレームをあげよう」
「それで、終わりですか?」
「むむ、何を望む?」
「いや、今は思いつきませんが、キラーデュラハーン討伐も、騎士団に正式に依頼するべきでは?」
「むむむ、しかし、冒険者ギルドの尻拭いを、騎士団に頼む事になるからそれは難しいのだ・・・」
「はぁ。じゃあ、他の都市の冒険者に依頼してください」
この人ダメだなぁ。メイを野放しにしてた事と言い、ギルド長不適格だぞ。
サキヨマ騎士団長は色々やってくれるなぁ。都市を出る前に落とし前を着けないとなぁ。
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【作者から一言】
いつの間にか、ちょっぴり逞しくなっているユウマでした。
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