第53話 騎士団長サキヨマ

リミツナ伯爵の館を出ようと廊下を歩いていたら、立ち塞がる騎士がいた。


「おい、お前が冒険者のユウマだな?」


「はい。そうですけど、何かご用ですか?」


「俺は騎士団長のサキヨマだ!いいか、冒険者如きが、簡単に伯爵の騎士になれると思うなよ」


「何の話でしょうか?」


「お前が伯爵に騎士として召し抱えられても、冒険者上がりの騎士など、俺が許さんと言う事だ」


「配下になる件はお断りしました」


「ふん、伯爵の声掛けがあっても、騎士は連携が重要なのだ。冒険者が騎士と連携が取れるはずが・・・、ん? 断った?」


「はい。仰る通り冒険者に騎士は勤まりません。俺は冒険者ですから、断りました」


伯爵に騎士にするとは、言われてないけどね。配下にならないかって話だった気がする。


「断ったのかぁ!」


「はい」


「誰もが憧れる民に敬われる職業だぞ!」


この人何を言いたいんだ?


「私にはとても勤まりませんので」


「貴様ぁ!騎士を馬鹿にしてるのかぁ!」


「馬鹿にしてませんよ」


「ぐぬぬ、その態度が馬鹿にしてると言うんだぁ!」


はぁ、あれか? ビビらないで淡々と対応してるのが、気に入らないのか? 強いモンスターと戦ったからなぁ。以前だったらへいこらしたと思うが、全然怖く無いんだよね。


「態度がお気に召さないのであれば、謝罪致します。馬鹿にしているつもりは無いですし、騎士の方々も尊敬しておりますよ」


「くっ、白々しい態度をとりおって、ちょっと顔を貸せ!騎士の実力を見せてやる」


「訓練所で模擬戦でもする気ですか? 私は見ての通り剣士では無いので、剣は使えませんし、剣以外の武器も使えません」


「はぁ? 『魔獣の窟』の攻略者だろう。魔法か? 魔法を使うなら魔法でもいいし、テイマーならその黒犬と戦っても良いんだぞ」


ダンジョン攻略者だって言う事は知ってるのか。う~ん、四属性の魔法も使えないし、テイマーでも無いんだよねぇ。クロドとこのおっさんが戦ったら、食い殺しちゃうしなぁ。


空間魔法もあまり見せたくないんだよなぁ。


どうしよう。


「おい!サッサと答えろ」


「いや、テイマーでも無いし、四属性魔法も使え無いんですよねぇ。冒険者は自分のスキルは秘密にしているので、答えられませんね」


「な、なにぃ!ならばどうやってダンジョンを攻略したぁ?」


このおっさん、俺の話を聞いてるのか?

スキルは秘密で答えられないって言ってるだろう。あぁ、面倒臭いなぁ。


「あぁ、面倒ですので、ここで戦いましょう。この後やる事があるんです。スキルの一端をお見せしますよ。その剣で今直ぐ攻撃してきても良いですよ!」


この後、『蜘蛛の牙』を懲らしめないとダメなんだよね。


「貴様ぁ、ついに化けの皮が剥がれたなぁ!儂を馬鹿にしおって、騎士爵の儂に不敬は、許さん!」


サキヨマが抜剣し、渾身の一撃を繰り出して来た。本気で首を斬り飛ばす剛剣。


通常の冒険者だったら死んでるね。本気で殺しにきてるよ、このおっさん。


「ふぬっ!」

ガキン!


俺の周りに亜空間を展開して剣を弾く。


「なにぃ? な、何で当たらない?」

ガキン!


「ぬお!」ガキン!「とう!」ガキン!「くそっ」ガキン!「ふぬっ」ガキン!


「もう良いですかぁ?」


「はぁ、はぁ。貴様ぁ!守りだけは一丁前だなぁ。くそっ」


「帰りますよ」


俺はサキヨマの横を通り過ぎようとしたら、前に回り込み行く手を塞ぐサキヨマ。


「くそっ、どこへ行く。まだ勝負は着いてないぞ」


もう、面倒だ。


俺はサキヨマの剣と鎧、服、下着を亜空間に収納した。


「ユウマァ!逃がさんぞぉ!」


足を開き両手を広げ、全裸で立ち塞がる騎士団長サキヨマ。


「ここに変態がいまーす!」

俺が右手を口に添えて大声で叫ぶと。


「きゃあああああああああ!」

メイド達の悲鳴が聞こえた。


「き、騎士団長が、ぜ、全裸でお客様を襲ってるううううううう!」


サキヨマが涼しくなった自分の股間を見て、顔を真っ赤にして、素早く股間を両手で隠し走って逃げ出した。


「貴様ぁ!覚えていろよぉおおおお!」


俺はサキヨマの持ち物をその場に置いて、領主の館を後にした。


その後、館中で変態騎士団長の噂が広まったのは言うまでもない。


そして腐女子メイド達が、陰からサキヨマに熱い視線を注ぐ様になるのであった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


宣伝です。すいません。

新作投稿します。


6/11 0:00に

第1話をスタートします。

気が向いたら読んでみて下さい。


タイトルは、

『邪悪な勇者と神槍の英雄~虐げられた普通の槍兵が成り上がり「ざまぁ」する~』


URLは

https://kakuyomu.jp/works/1177354054898248060

です。


宜しくお願い致します。

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