第52話 領主リミツナ伯爵

俺とブラックドッグのクロドは領主の館に来た。領主の館は塀に囲まれた大きな屋敷で、門の前に門番が二人立っていた。


俺とクロドが門番の前に歩いてきた行くと、クロドを見てちょっとビビりながら、門番が話し掛けて来た。


「Cランク冒険者のユウマか?」


「はい。そうです」


「念の為、冒険者証と召喚状を確認させてくれ」


「はい。どうぞ」

俺は冒険者証と領主からの召喚状を門番に見せた。


「良し、問題ない。事前に聞いているので、通って良いぞ。真っ直ぐ進むと入口がある。そこで名前を言えば中に入れる」


門番が門を開けた。


えっ、遠い・・・。

門の中に入ると館入口までわりと距離がある。クロド乗って行ってもいいのかなぁ?


「クロド、乗せて貰ってもいい?」

「良いワン」


クロド乗り易い様に伏せた。


俺はクロド乗ると、クロド起き上がり走った。はやっ!


あっという間に入口着いた。


入口から初老の男が出て来て、かなり慌てた様子で俺達を待っていた。


門番から何らかの連絡がいったんだろうね。だけど、思った以上に早く来たから、慌てた感じかな?


「ユウマ様ですね。私は領主リミツナ伯爵の執事エトシーでございます。お待ちしておりました。此方にどうぞ」


エトシーに案内去れて屋敷の中に入ると、控え室に案内された。程なくして、エトシーが再度迎えに来た。


そして応接室の様な部屋に案内された。


部屋に入ると貴族の男が、1人掛けのソファーにドッシリと腰掛けて待っていた。


挨拶しようと「私は、」と言ったところで、声を掛けられて挨拶を中断した。


「お主が、ユウマか? 今日は正式な謁見では無いのでな、堅苦しい挨拶は要らぬぞ。そこに腰掛けよ」


「はい。失礼致します」

と言って、俺は2人掛けソファーに腰掛けて、クロドは俺の隣の席と反対側の床に伏せた。


「思ってたより、来るのが遅かったのぅ」

とリミツナ伯爵が言うので、午前中にシミツコ商会に招かれた事と、午後にあった領主の館に来る途中も事を話した。


勿論、俺のスキルは適当にぼかして説明した。


「成る程、シミツコは儂の召喚を後回しにしろと、そう言うつもりなのだな。しかも『蜘蛛の牙』と繋がっていたか、良し、儂の方で処理しておいてやろう」


とリミツナ伯爵に言われたが、『蜘蛛の牙』は、俺が対応しようと思ってたからね。


「ありがとうございます。『蜘蛛の牙』は、この後帰り掛けに潰しますので、逮捕だけしていいただきたくお願い致します。シミツコ商会はお任せします」


「ほほう、流石ダンジョン攻略者だのう」


「伯爵様の話はその件でしょうか?」


「うむ、攻略の感謝とお主と会っておきたいと思ってな。どうだ何か欲しい物があるか? 何でも言ってみろ。出来れば儂のところで働かんか?」


「欲しいものは自由です」


「む、儂のところで働く気は無いと言う事かぁ。惜しいのう。まあ、今日のところはここまでとするか。無理強いはすまい」


「はい。有難う御座います。それではこれで失礼致します」


「ああ、攻略の褒美をやろう、これを持っていけ」


リミツナ伯爵が金貨が入った布袋をくれたので、有難く受け取る事にした。


これも断ると、貴族の面子を潰す事にもなりかねないからね。


で、お暇して応接室を出て、入口に向かって館の中を歩いていたんだけど、如何にも騎士ですって言う雰囲気の男が、行く手を遮っているんだよね。


はぁ、面倒臭い。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る