第50話 シミツコ商会2

俺とブラックドッグのクロドは、シミツコ商会本店の応接室で待たされていた。


テーブルに上には、そこそこ上等の部類に入る紅茶とお菓子が置かれていたが、朝早く呼び出されて朝食もとっていない俺達は、紅茶もお菓子も食べて、今、亜空間から取り出したサンドイッチとスープを食している。


「朝早くから呼び出しておいて、いつまで待たせるんだろうねぇ」

俺はクロドに話しかける。


「随分甘く見られてるワン」


「だよねぇ。大商会の会長とは言え、朝食も出さないし、このまま昼になったら、今日は仕事が出来なくなるよ。俺は今お金に余裕があるから良いけど、普通の冒険者だったら、生活が苦しくなるな」


「帰るかワン」


「そうだね。後半時あとはんとき待って何の連絡もなければ、置き手紙をして帰ろう」


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シミツコ商会の会長シミツコは、朝遅く起きて前日の報告を聞きながら朝食を食べる。


報告を聞き終わり、朝食も食べ終わるとゆっくり紅茶を飲んでいた。


「そう言えば、マタカシに頼んだ、件の冒険者はどうなっている?」


「朝早くに迎えに行きまして、現在応接室で待機させております」


「良し、会おうか」


マタカシとシミツコは応接室に入った。


「ん? いないぞ」


「そんなはずは・・・」


マタカシはテーブルの上の置き手紙を見つけて、素早く近付くと手に取った。


「置き手紙か? なんて書いている」

シミツコはマタカシに聞いた。


「はぁ、冒険者の仕事がある為、本日はお暇しますと丁寧な文面でかかれています」


「どれ、見せてみろ」

シミツコは、マタカシより置き手紙を乱暴に取り上げて、中を読んだ。


「くっ、この内容は本当の事か!依頼を受ける間もなく連れ出し、1日の稼ぎの保証もなく半日待たせたと書いているぞ。文句の言い様が無いではないか。食事も出して無いのか?」


「はっ、冒険者故に依頼前に呼び出さないと、本日はお会い出来ないのでそうしました。また、Cランクごとき、紅茶と菓子でも過分と思って食事は出しておりません」


「ぐぬ。Cランク冒険者ごときが、この儂の誘いを断るとは、生意気なぁ!手勢を使って無理矢理にでも連れて来い!」


「はっ!畏まりました」


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俺とクロドは、屋台の昼食を食べて冒険者ギルドに向かっていた。


「目ぼしい依頼は残って無いだろうね」


「そうだろうワン。常設依頼でも受けて、ついでにモンスターを狩るパターンだワン」


「そうだねぇ」


冒険者ギルドに入ると、俺達を見掛けた受付嬢のヤヨイさんが駆け寄って来た。


「ユウマくん、何処に行ってたの? 領主様から館に来るようにお達しがあったわ」


「ええ!今度は領主かぁ」

貴族は商人より嫌いなんだよねぇ。

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