第41話 許されざる奴ら

ダンジョン『魔獣の窟』で俺とブラックドッグのクロドと冒険者パーティー『風月の戦乙女』の5人は寝た。


のだが・・・。


ソロリソロリと近付く影が・・・。


「アユム、アユム、起きろ」

囚われた元『烈風の戦士』のアユムに、ヒソヒソ声で話し掛け揺する男。


「ん? ん~」

人差し指を口に当てて、アユムを拘束した縄と猿轡を外す男。


「お、ケイト!助かったよ」

元『烈風の戦士』の生き残りの1人であるケイトが、アユム達を助けた。


「クッソー、此奴ら俺達の前で、肉パーティーなんかやりやがって。もう腹ぺこで目が回りそうだぜ」


「取り敢えず縄で縛るぞ」


アユムとケイトは仲間の縄を外し、ユウマと『風月の戦乙女』の5人を、縄で縛り猿轡を噛ませた。


「むぐっ、むぐっ・・・」

縛られた時に目を覚ましたが、喋れない俺と『風月の戦乙女』の5人。


「おう、サンキュウ」


「コイツらどうしてくれようか!」


「人も殺せん甘ちゃんがぁ!」


「大人しくしてろぉ!ひっひっひ」


「猿轡を噛ませれば、詠唱も出来ないだろう。おかしな魔法も使えまい」


「後でゆっくり可愛がってやる」


「都合の良い事に、今夜は他に冒険者もいないしな。ぐへへ」


「この黒犬のモンスターは、縛っても拘束出来そうに無いので殺すぞ」


「そうだな」


剣を鞘から抜いて、振りかぶるアユム。


「んぐっ!」

驚き目を見開く『風月の戦乙女』の5人。


くっ、縛られるまで気付かなかった。


クロドを殺すってええええええ!

もう怒ったぞ。


なんで、猿轡をしたぐらいで、空間魔法が使えないと思ってんだ。


いつも無詠唱で発動してるぞ。


俺はクロドに振り上げた剣が、振り降ろされる瞬間に、剣を亜空間に収納した。


と同時に俺と『風月の戦乙女』を拘束した縄と猿轡も、亜空間に収納した。


「へっ?」


振り降ろした剣が、急に消えて驚くアユム。


目を開けたクロドが、アユムに体当たりして突き飛ばす。


ドゴッ!


「ぐふっ」


そして、素早く踏み込み、アユムの背中に前足をおいて動けない様にした。


「おい、ユウマ!こいつは儂に任せろワン」


「分かった」


俺は驚いて逃げだそうとした冒険者達の足元に、亜空間を作った。


ガタガターン!


勢い良く転倒する男達。


「いてぇ!」

「な、なんだぁ!」

「ひぃ」


俺は男達の持つ武器と服を、全て亜空間に収納した。


「これで、逃げる事も出来ないだろう」


『風月の戦乙女』達が男達に駆け寄り、呆然とする男達の剥き出しの胯間に蹴りを入れる。


「もげろー!」

「これでも喰らええええ!」


「いってえええ!」

「ぎゃっ!」

「ひぃぃぃぃ」


そして、剣とナイフで男達を殺そうとする。


「待って!」

俺は『風月の戦乙女』を止めた。


「ユウマ!また助ける気?」

「コイツら殺さないとダメだよ!」

「ユウマが止めても私は殺すよ」


「いや、俺が殺すよ。殺させてください」


「ん、分かった任せる」

俺の決意の表情を見て、カノンは俺に任せる事に決めた。


俺は男達に歩み寄る。


「ひ、ひぃ」

「助けてぇ」

「もうしません」


俺は泣き叫び許しを請う男達を、無言で一人ずつ殺していった。


「ぎゃあああああああああああ!」


後ろから、一際大きな声で泣き叫び、許しを請う声が聞こえた。


「た、助けて、・・・イ、イヤだぁ、痛いよう・・・、ひぃぃぃぃ」


ガリガリ!ブシュッ!グチャ・・・。


そこから咀嚼音が聞こえて、不気味な黒い何かに、生きたまま喰われるアユムがいた。


その様子を、目を細め見詰めるクロドがいた。


クロド、怖ええええ・・・。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「クロド、起きてたでしょ」


「まあ、今後もあるから、ユウマに決意して欲しかったワン」


「気付くのが遅れてたら、殺されてたよ」


「あんななまくらに儂の首は斬れんワン」


「ホント・・・?」


「ワン」


どっちやねん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る