第29話 ダンジョンで昼食を

俺ユウマはブラックドッグのクロドと共に、ダンジョン『魔獣の窟』の14階に来ていた。


中層の15階より下の、ミノタウロスがいるエリアに入る前に、食事を取る為、ダンジョンの休憩場所にいるのだが・・・。


どうして、こうなった。


『魔獣の窟』の地下11階から14階の中層で、オークから助けた冒険者達や、前回助けて食事を振る舞った冒険者達や、知らない冒険者までついて来たのだ。


「ミノ牛を御馳走してくれるんでしょう!」と女性冒険者のアヤカさん。


「楽しみぃ」

同じく女性冒険者でワクワクしてるマナミさん。


彼女達は、前回『魔獣の窟』から出た時に約束したから良いのだけど。


ミノタウロスは強敵だ。

中堅の冒険者パーティーも負傷覚悟で挑まないと、討伐出来ないらしく、美味しいのは知ってるが、中堅の冒険者達は滅多に食べられない。


「この前ユウマくんに御馳走して貰った食事美味しかったんだよねぇ」

「俺も噂に聞いてたよ」

「今日食べられるなんて幸せぇ」


いつの間にか食べる事が確定してるみたいだ。御馳走するって言って無いけど?知らない人達も多いんだよねぇ。


しょうが無いので、ミノ牛を焼きましたよ。焼き肉みたいに薄切りにして、タレを付けて焼いて、秘伝のタレもサービスです。


皆、大満足でお替わりしてくる始末。


アヤカさんが「これでは、ユウマくんが大損するわ!」って言って、皆から食事代を回収してくれたので、儲かってしまったけどね。


アヤカさんが「また、御馳走してね」って耳元で囁いて、ウィンクしてきたので、快く了解しました。


これって気があるって事?いや、食事に釣られてるだけだよね。勘違いしちゃいけないぞ。うん。


「儂は分からんぞ、ワン」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


一方、ダンジョン『亡霊洞窟』で食事休憩をする、ミナト達『焔の剣』のメンバー4人と二つ名『闇の探索者』リュウセイ。


「リュウセイ、食事は作って貰うぞ!」

ミナトがリュウセイに告げる。


「分かっている。事前の約束だからな。但し、味は普通だぞ」


「ふん。不味く無ければ良い、多少は我慢してやる」


「食材と調理器具は『焔の剣』で用意すると言う約束だが、何処にあるのかな?」


「ヒマリ、出してやれ」


「はいよ」


前回ユウマが準備した食材がかなり余ってたので、食材に掛かる費用をケチり、『焔の剣』が用意する約束をしていた。


オーク肉もかなりの量がまだ残っていた。


弓使いヒマリがアイテムバッグから、オーク肉と前回ユウマが用意した食材と調理器具を出した。


調理器具器具と食材を点検するリュウセイ。


「これは、ダメだ。腐ってる」


「え?そんなはずは無い!アイテムバッグに入れてたんだぞ!」


「臭いを嗅いでみてくれ」


「う″!く、くさっ!」とヒマリ。

「本当だ腐ってるよ!」とアオイ。

「うへぇ。ナニコレ?」とユイナ。


「何だとぉ!ユウマが持ってた時は、1ヶ月前の肉も食えたはずだ!」


「へぇ、そのアイテムバッグには、時間停止の機能があったんだろうな?」


「アイテムバッグでは無く、空間魔法だったけどね」とヒマリ。


「成る程、ヒマリさんが持ってるアイテムバッグには、時間停止の機能が無いのでしょうね」


「うへぇ。食材は全滅って事ね」

とアオイ。


「ミナト、食事どうするぅ?お腹すいたよぉ」と回復士ユイナ。


「どうもこうも、食材が無いからなぁ。どうしようも無い」


「非常食は持参してないのか?」

信じられないって顔のリュウセイ。


「アイテムバッグがあるから、大丈夫って思ってたのよ」

と言い訳のヒマリ。


「食材はユウマに任せっきりだったから、考えた事も無いわ」

と他人事のユイナ。


「リュウセイ!そう言うお前は非常食を持ってんのかよぉ!」

と怒鳴るミナト。


「勿論あるよ。普通各自が持ってるだろう。はぐれたらどうするんだ」

とバッグから干し肉を出すリュウセイ。


「ちっ、寄こせ!」

腕を振ってリュウセイの干し肉を奪おうとするが、リュウセイは干し肉の持った手を素速く躱し空振る。


「おいおい、他人の非常食を奪うのは犯罪だぞ。しょうが無い、一切れずつ売ってやる。俺の非常時の取って置きだから、命を削る様な物だ。高値だからな」


「くっ」

唇を噛み締め、リュウセイを睨むミナトだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

【作者からの一言】


ユウマの作ったミノ牛の焼き肉と、リュウセイの干し肉一切れの値段が同じだった事は秘密です。

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