第25話 解体所のおやっさん

俺はギルドの裏の解体所に来た。


「今晩は!おやっさーん!」


大声で解体所責任者のおやっさんを呼ぶ。


「おう、ユウマ。解体かい?」


「買取だけだよ。量が多いのでこっちに出す様にメイに言われた」


「ふぅん。何もメイに報告しなくても良かったんじゃ無いか、今日はヤヨイも居たし、この前メイに絡まれてただろう」


「俺もそう思ってヤヨイさんの列に並んだんだけど、無理矢理メイに連れていかれたんだ。メイが俺の担当なんだって、ヤヨイさんに替わって欲しいな」


「担当?そんなの聞いた事無いぞ。それは後で俺が聞いてやるから、取り敢えず素材を出しな」


「どこに?このテーブルには乗りきらないよ」


「そんなにあるのかい。じゃあ倉庫に行こうか」


俺とおやっさんは解体所の奥の倉庫に来た。


「ここに出してくれ」


「はい」


俺は『魔獣の窟』で採取したモンスターの素材を亜空間から倉庫に展開した。


素材は魔石、皮、角、牙、骨等で肉は無い、食用にとっているのだ。


「おいおい、まだあるのか。凄い数だな。亜空間の容量が増えた様だな」


「へへっ」


「ん!なんだこの解体技術は!!俺より上手いじゃ無いか、神業だな。素材が全く傷んでいない。数ミリの誤差もなく切り分けられてる。と言うか切った後すらない!誰が解体した?」


「えへへ、秘密だよ」


「スキルか?まあ、深く追求はしないでおこう。しかし、お前が一緒に行動してた『焔の剣』とは雲泥の差だな」


「『焔の剣』・・・。ダンジョンから帰ったのか・・・」


「なんだ、『焔の剣』の事を気にしてるのか?」


「気にしてると言うか・・・」


「この前の様子だと争う気は無いんだろう。無視しとけ」


「そうだね。会いたくも無い」


「良し、『焔の剣』とメイと会いたく無いなら、直接ここに来い。これだけの量の素材を持って来られるなら、依頼を受け無くても問題無いだろ?」


「有難う、そうさせて貰います」


「奴らの提出した魔石は酷いモノだったよ。素人の方がマシなくらいだ。素人だって丁寧に解体すればそれなりなんだが、3分の1は買取したくないレベルだった。メイがどうしてもと言うから買い取ってやったくらいだ」


「はは」


「このレベルの解体が出来るなら、解体の量が多い時に手伝って欲しいな」


「タイミングが合えばね」


「ん!ミノタウロスも狩ったんだな。それもこの量は凄い。あれ、ミノ牛の肉が無いぞ!」


「肉は食べるから、買取に出さないよ」


「買取じゃ無くて良いから、俺に個人的に売ってくれ。ミノ牛は旨いんだが、中層の下の階に行く奴が少なくて滅多に入ら無いんだ」


「良いよ、1体分で良いかなぁ?」

俺はミノ牛の肉を1体分倉庫のテーブルに置いた。


「おおおおお!肉の解体も見事だ」


「買取の料金はいつ頃分かるかな?」


「直ぐ出るよ。これくらい素晴らしい素材だ。最上級の値段に間違い無い、数を数えるだけで直ぐ金額を計算出来る」


「分かった」


「ところで、ミノ牛を狩れるなら、下層にも行けるか?」


「行けると思うけど?」


「下層に美味しい肉があるんだよ」


「え!なになに?」


俺はおやっさんに下層の情報を聞いて、明日も『魔獣の窟』に行く事が確定した。


クロドも涎を流して隣で大賛成だったしね。


「絶対行くワン!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る