第17話 烈風の戦士

オークから助けた女性冒険者のミウを、女性だけの冒険者達パーティー『風月の戦乙女』にお願いして、俺とブラックドッグのクロドは、ダンジョン『魔獣のいわや』の地下11階の中層に降りてきた。


そこで腹ごなしにオークを少し狩ったので、今日は眠る事とした。


俺はモンスター除けの結界の魔道具を起動し寝袋に潜る。


「儂が見張りをしてやろうワン!」

とクロドが言うので、見張りをお任せしてぐっすり眠る。


「クロド、有難う。任せたよ、お休みー」


夜明け前、クロドの声で目を覚ます。


「ユウマ!ユウマ!誰か来たワン!」


「誰だ?こんな朝早くに・・・」


俺は目を擦り、寝袋から出て寝袋を亜空間に収納すると、クロドが見ている方向を向いた。


俺が寝てたのは広めの空間だ。


空間には出入口が1つだけあり、その出入口から傷だらけの冒険者が2人入ってきた。


「ああああ!あの時の男かぁ!」


入ってきた冒険者は俺の顔を見るなり叫んだ。


ミウの仲間だった冒険者達だ。


「俺は『烈風の戦士』のアユムだぁ!貴様ぁ!仲間を返せぇ!ミウを何処にやったぁ!」


「ミウさんは、別の冒険者にお願いして、ダンジョンの外に送って貰う事になったので、安心して下さい。しかし彼女は貴方達を、もう仲間とは思ってませんよ」


俺は冷静に淡々と会話をする。


「何だと!いい加減な事を言うな!」


「あのね、オークに犯されて殺されそうになっている仲間がいるのに、自己満足の為に助けを借りない人は、仲間と言えないでしょう。仲間なら何としてでも助ける道を選ぶものです」


「ううう、煩い煩い!」


「それより、後の2人はどうしたのですか?」


「てめぇ!何故俺達の後にオークがいた事を教えなかったぁ!その所為でダイキとカイトはオークに殺されたんだぁ!責任を取って貰うぞぉ!」


「どんな責任ですか?後ろにオークがいた事など覚えてもいませんが、助けを断ったあなた方を、俺が支援する義務は無いですよ」


「煩い煩い!・・・くっそぉ!」


冒険者は剣を抜いて構えると、もう1人の冒険者も舌打ちをした後、剣を抜いた。


「ちっ、しょうが無いなぁ。付き合うぜ」


う~ん、魔石を抜いて即死とはいかないしなぁ。ああ!心臓や脳味噌を亜空間に収納すれば即死かも?でも、人を殺すのはなんか気が引けるなぁ。


俺が迷ってると、ビビってると思ったのか、ニヤニヤ笑ってゆっくりと近付いて来る冒険者達。


俺は冒険者2人を封印した。


念の為、『風月の戦乙女』がダンジョンを脱出するまでを想定し、1日後に解除する事にした。


「でも、モンスターに襲われたらヤバいかなぁ。結界の魔道具はこの先も使うしなぁ」


思わず独り言を呟くと、クロドが俺に話し掛けた。


「この辺りに儂が小便すれば、中層程度の弱いモンスターは近付かないワン!」


「え!そうなの?それは凄い。お願いするよ」


冒険者達の近くにクロドが小便をして、俺達は先に進む。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


その頃冒険者ギルドの受付メイは、『焔の剣』が依頼達成の報告に来るのを待っていた。


「ミナトさん達は絶対に依頼を達成するわ」


一方『焔の剣』はダンジョン『亡霊洞窟』で迷っていた。


「ここ何処よぉ!」

「こっちじゃない?」

「はぁ、まだ歩くのー」

「つべこべ言わないで進むぜ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る