第16話 冒険者ミウと風月の戦乙女

俺はブラックドッグのクロドに乗って地下10階に戻った。


俺の背中にオークから助けたほぼ全裸の女性冒険者が、腰に手を回ししがみついている。


ちょっと前に挨拶した女性冒険者だけのパーティーを探す。


あ!見つけた。


「すいませーん」


「あら、どうしたの?」


「後ろの女性をオークから助けたのですが、女性用の服など手持ちに無いので、ダンジョン外まで同行して貰えませんか?お金は払います」


俺はクロドから降りると、女性冒険者もクロドから降ろした。


「あらあら、大変だったわね。こっちにいらっしゃい」


女性冒険者に予備の服を着せていたので、俺は後ろを向いて待つ。


肩を叩かれて振り向くと、冒険者の服を着て俯く女性冒険者。


「有難う御座いました。私はミウです。お名前を教えてください」


「そう言えばまだ名乗って無かったね。俺はユウマです。助けられて良かったです」


ミウは俺の顔を見てにっこり笑った。


「私は『風月の戦乙女』のカノンよ。責任持ってミウを都市まで連れて行くわ、報酬は要らないわよ」


「私はカエデ宜しくね」

「ワカナよ。ミウの事は任せて」

「マナミでーす」


女性冒険者のパーティー『風月の戦乙女』のメンバーが、それぞれ自己紹介をして来た。


女性冒険者はそう言って、ミウの隣に立ちミウの肩を抱いた。


「有難う、じゃあもうそろそろ夕飯の時間だから食事を御馳走しますね」


俺は亜空間から食材と料理道具を取り出した。


「あら、有難う。遠慮無くいただくわ。じゃあ、宜しくね」


ミウはカエデ達に連れられて、何やら話をしている。


カエデはミクからオークにやられた時の話を聞いている様だ。


「酷い!オークに襲われてる女性を助けないなんてぇ!」

「信じられないわね」

「もう大丈夫よ」


それから暫くして、食事を作ったので、みんなを呼んだ。


「食事が出来たよー!」


簡単で美味しい鍋とパンだ。

食材も大量購入していたので、奮発したので・・・。


「おお!野菜も入ってるじゃん」

「暫く干し肉ばっかりだったから嬉しいわ」

「良い香り」

「食欲をそそる香りねー」

「美味いぃ!何これ?馬鹿うまぁ」

「本当!美味しいわ」

「元気出るぅ」


大変好評で食事を終えました。


食後に俺が後片付けをしていると、女性達はクロドをモフっていた。


「じゃあ、俺達は行きますね。ミウさんを宜しくお願いします」


「ワン!」


寝そべってモフられてたクロドは起き上がり俺の元に駆けてきた。


「あぁぁぁ」

「もっとモフりたかったぁ」

「ほらほら、シャンとして」

「そうね」

「ミウは任せて」

「色々有難う御座いました」

「クロちゃん、じゃあ、またねー」


俺はクロドに乗って、下の階に向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


その頃の『焔の剣』は、漸く起きて食事をしており・・・。


「ぅぅ、まずいぃ!」

「何よぉ!私の料理に文句付けないでよぉ!」

「んじゃ、食べてみてよ」

「本当だ・・・。ゲロまずっ」


炭になったオーク肉を食べていた。


その時、腐った臭いが立ち込める。

「何だこの臭いはぁ!」

「くさっ!食欲が無くなるよぉ!」


そこに現れたヘルハウンド。


ヘルハウンドは犬のゾンビだ。

黒い身体に赤い眼が特徴で、痩せて肋が浮き出ており腐臭がする。


「はぁ、はぁ、はぁ」


「きゃあああああ!!」

悲鳴を上げる回復士ユイナ。


「くっそ!誰も見張りをしてなかった!」


剣士ミナトはボロボロの剣を手に取り、ヘルハウンドに向かっていく。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

【作者から】


一般的にヘルハウンド=ブラックドッグですが、この小説では別のモンスターとして、扱いますのでご注意下さい。


ヘルハウンド。

犬のゾンビで、腐った臭いがする。


ブラックドッグ。

黒い犬のモンスター。

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