第15話 オークと遭遇した

俺とブラックドッグのクロドは、ダンジョン『魔獣のいわや』上層を、縦横無尽に駆け回った。


俺は、今までは冒険者と言ってもEランクだったので、薬草を採取する程度のクエストしかしておらず、殆どはポーターとして罵倒されながら支援する日々だった。


それが、命を救った事で涙を流して感謝されたのだ。


張り切るのも無理は無いだろう。


『魔獣の窟』は地下30階のダンジョンだ。


地下10階までを上層、地下20階までを中層、そしてその下を冒険者達は下層と言っている。


何百年か前に最下層の地下30階にて、ダンジョンボスである双頭の魔獣オルトロスを討伐した英雄がいる。


現在俺はクロドに乗って地下5階を走っている。


地下深く降りながら、危険な状態になっている冒険者を探していた。


「この階には、いなさそうだ」


「そうだワン」


「もう少し下に行ってみるか」


「ワン!」


中層のオークを狩りに行く目的を忘れそうだ。


俺は空間魔法の習熟度が上がり、モンスターの身体を空間把握し、空間収納でモンスターの皮、骨、肉などを瞬時に別々に収納出来る様になったので、解体する必要さえ無くなった。


もう、狩りと言うか流れ作業的なものになっている。


そんな感じで進み、地下11階の中層に到着した。


オークが出て来る階層だ。


オーク。

茶褐色の剛毛に覆われている、二足歩行の猪だ。


体長170cmから200cmぐらいで、手は人間と同じ作りになっている事から武器を持つ事もある。


通常は素手で体当たりや噛み付きの攻撃をするが、倒した人族から奪った武器で攻撃もする。


武器を持つ個体は、人族を倒した場合が多く、より凶暴で強い。


そんな武器を持ったオーク達に襲われて、ピンチの冒険者達を発見した。


しかも性欲旺盛な雄のオークに女性冒険者が、犯されそうになっていた。


男の冒険者達は余裕が無く、助けにはいけなそうだ。


俺は女性冒険者を襲っているオークを封印し、冒険者達に声を掛けた。


「こんにちは!助けは必要?」


「何だ!貴様ぁ!俺達の獲物を横取りする気かぁ!」


オークを睨んだまま叫ぶ男。


「あ、そう」


獲物を横取りした事になると色々厄介な事になるので、ここは手助け不要だなと思って、女性冒険者を見ると。


オークに引き裂かれた衣服を抱きしめて、震えながら俺に懇願した。


「た、助けてください!」


「分かった。あなただけ助けます」


俺は女性冒険者の手を取り、クロドの上に引き寄せる。


「何言ってんだぁ!助けなんか要らないだろう!」


男は此方を見てギョッとした。


ブラックドッグに乗った俺と衣服を引き裂かれた女性冒険者。


「な、何言ってんのよぉ!私はオークに犯されそうになって、助けを求めたのにぃ!無視したあんた達とは一緒に居られないわ!」


「くっ、目の前の此奴を倒して助けようと思ってたさ!」


オークに振り向き身構える冒険者。


「はぁ?いつ倒すのよぉ!犯されてから助けられても遅いわよぉ!」


「・・・」

無言になる冒険者達。


「じゃあ、頑張ってね」


俺はオークの封印を解除して、その場を去る。


上の階に女性冒険者だけのパーティーが居たので、この女性はお任せしよう。


女性冒険者は、引き裂かれた服を自分と俺の間に挟んで、振り落とされない様に、俺を背中から抱きしめている。


胸が背中に当たってるんですけど。


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その頃『焔の剣』は、『亡霊洞窟』の休憩場所で、まだ泥のように眠っていた。

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