第6話 ブラックドッグ

「ごふぉっ!」


俺は水を吐き出して、眼を覚ました。


こ、ここは・・・。


スライムがいる水の中で溺れたはずだが・・・。


ん!!


「うおっ!!」


俺の胸に黒い毛深い足が乗っていた。


犬?


黒い大きな犬がこちらを見ている。

燃えるような赤い眼。


ハァ、ハァと口を開き舌を出してる。


「ブラックドッグ!!」

ブラックドッグというモンスターだ。


地球にいる大型犬種のニューファンドランドに似ている。


ニューファンドランドはそもそも大きいのだが、更に二回りは大きそうだ。


体高も1mを越えており、がっしりとした体型で、小さな垂れ耳。小さく、くぼんでいる目。


長い被毛がふかふかしていて、足には水掻きがあった。


「助かった様だなワン」


低い声でブラックドッグが喋った?

驚く俺に続けて話し掛ける。


「儂の名前はクロドだワン」


「お、俺はユウマだ・・・」

敵意は無さそうだ。


クロドは俺の胸から前肢を退けて、隣に座った。


「助けてくれたんだよね。有難う」


「主の遺言だからなワン」


「遺言?」


「そうだワン。儂はモンスターで主はテイマーだったワン。このダンジョンで瀕死になった主と儂は、この落とし穴に落ちたワン。主から死ぬ間際に、この落とし穴に落ちた人を助けてくれと頼まれたワン」


「そうだったのか、有難う」


俺は起き上がり、辺りを見回す。


出口の扉が見えた。


「クロドはここから出ないのか?一緒に来てくれると助かるんだけど」


「儂は扉を開けられ無かったのだワン。開けて貰えるなら一緒に行きたいワン」


「良かった。俺は弱くて戦えないので、助かるよ」


「宜しくワン」

クロドは扉の方に歩き始める。


「クロド、ちょっと待ってくれ」


「ワン?」


「今のままだと不安があるので、スライムを倒して強くなっておきたい」


「分かったワン」


クロドは座っって独り言を呟く。

「スライムは経験値が少ないから、急にそんなにレベルは上がらないと思うがワン」


「経験値!・・・クロドも転生者なのか?」


「ん?儂は違うぞワン。主が転生者だったワン」


「え!主が転生者だったのか!もしかして日本人か?」


「おお!主は日本人だったワン。ユウマも日本人なのかワン?」


「そうだ。転生前は日本人だった」


「そうかぁワン。主と同郷だったかワン」

クロドは嬉しそうに尻尾を大きく何度も振っていた。


その後、クロドにせがまれて俺の身の上話をする事になり、クロドは貰い泣きしていた。


「ユウマは苦労したんだなぁ、ワォーン。儂が一緒に行動してやろうワン」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


その頃『焔の剣』は・・・。


ゾンビを倒した剣士ミナト。

「ユウマ!解体して魔石を取っておけ!」


「ユウマは首にしたから、いないってば」

と魔法使いアオイ。


「じゃあ、誰か解体してくれ」


「嫌よ!臭いし」と回復士ユイナ。


「私も嫌よ」と魔法使いアオイ。


「自分で解体すれば?」と弓使いヒマリ。


「うっ、俺も臭いから嫌だな」


「このまま放置しましょう」

ヒマリが先に歩き出す。


「そうだな。クエストを達成すれば、お金が手に入るからいいか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る