第3話 ポーター

俺はユウマ。ポーターだったのだが、首になっちゃったよー。


「ユウマの亜空間に格納していた物を全部出せ」


「はぁ、分かったよ」


俺は亜空間からパーティーの荷物を全部出した。


幾つかの武器は俺のお金で買った物だが、俺は武器を使えないし、まあ、いいかと思って全部渡した。


Sランク冒険者パーティーである『焔の剣』リーダーの剣士ミナトは、俺が亜空間から出した物を、ダンジョンで入手したアイテムバッグに収納した。


「おお!本当だ。まだまだ入るな」

ミナトは満足そうな笑顔。


「じゃあ、あばよ!」

ミナトがいきなり剣の柄で俺の後頭部を殴りつけた。


ガンッ!

「んぐっ」


俺は崩れ落ちる。


おいおい、マジか?

ダンジョンを出るまでは一緒に行くと思ってたが、ここでお別れなんて。


俺は後頭部に鈍い痛みを我慢して、他のパーティーメンバーを見る。


「大人しく死んでねぇ」

「バイバイ!」

「じゃーねー」


弓使いのヒマリ、火魔法使いのアオイ、回復士のユイナの3人は、そう言うと既に背中を向けて出入口に向かって歩いていた。


くそぉ!声が出ない、目の前が暗くなっていき、俺は気絶した・・・。


俺はポーターだった。


ポーターとは冒険者の物資を運搬する職業。


ダンジョンに行く冒険者に同行して、冒険者の荷物や採集した素材を運ぶのだ。


好きでこの職業に就いた訳ではない。


俺は空間魔法使いで、戦闘系のスキルを持っていない為、出来る事と言えばポーターぐらいなのだ。


この世界では、15才になると教会に行って神様からスキルを与えられる。


スキルには色々あって、戦闘系の物理スキルだと剣術や槍術、弓術など武器を使ったものがあり、魔法スキルだと火魔法、水魔法、風魔法、土魔法の4属性魔法が有名だ。


冒険者に憧れ、剣のつもりで木の棒を持って野山を駆け回ってた俺は、戦闘系のスキルを貰いたかった。


しかし、神様から与えられたスキルは、空間魔法だった。


空間魔法は物を空間に収納し、収納した物を展開する事が出来る。


荷物を持たなくても良いので、便利な様に思える。悪くはないのだが、良くもない。


この世界には、アイテムバッグと言う魔道具があるからだ。


魔道具は魔法を付与した道具であり、空間魔法を付与したバッグをアイテムバッグと言う。


つまり、アイテムバッグを買える人にとって、空間魔法は不要なのだ。


それでも、アイテムバッグは高価で、皆が買える物では無いので、ポーターの仕事が成り立つ。


その程度だ。


教会で空間魔法のスキルを与えられた俺は、家に帰り父親に報告すると、父親はガッカリした事を隠そうともしなかった。


母は俺が3才の時に病気で死んで、父親が男手ひとつで育ててくれたのだが、父親は足に怪我をしていて、まともに働けず貧乏だったからだ。


父親は、神様から俺に良いスキルが与えられる事を、期待していたらしい。


そして俺は行商人に預けられた。


売られたと言った方が正確かな。父は行商人に金を貰った様だしね。


その後、行商人の元で馬車馬の様に働かされた。


基本はポーターとして行商についていき、食事や雑用を何でもやった。


休みなし給金なしで食事は朝晩のみ、まるで奴隷の様な日々で・・・逃げ出した。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


一方ユウマを首にした『焔の剣』。


「おいユウマ、この道で良いのか?」

と言って振り返る剣士ミナト。


「ユウマは首にしたじゃん」

マッピングした地図を見ている・・・・弓使いのヒマリ。


「そうだった」


「この道って、さっきも通った道じゃない?」

と回復士ユイナ。


「ちゃんとマッピングしてる?」

とヒマリに聞く魔法使いのアオイ。


「はぁ?マッピングなんてしてないよ」


迷っていた・・・。

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