エピローグ



 また、ダメだった。



 私はため息を吐きながら『夢幻残影ファントムワールド』を閉じた。



「一体、どうしたらいいのかな」



 どうしたら、クリシたちを助けて、リリィが死なないで済むんだろう。



、失敗っと」




「ユグドラシル」

「どうしました」

「ごめんね。『世界樹』を通して夢の世界の私に連絡をさせて」

「お安い御用よ。あなたが竜と人間が共存するを現実にしてくれるのなら」

 ユグドラシルは退屈そうにあくびをした。

「紅茶でももらえる?さすがに世界を覆う『夢幻残影ファントムワールド』の長時間展開は魔力疲労が起こるわ」

「まったく、アタシ以外の竜が殺されて魔力が満ちた世界で一番魔力を浪費してるわよ、あなた」

 ユグドラシルは皮肉を込めて笑った。

「そうだね。あ、紅茶はストレートで」

「…… アンタ、ホントに竜使いが荒いわね」

「それはお互い様でしょ」

 器用に紅茶を用意するユグドラシルを横目に、私は窓を開いた。

 蒼い月が輝き、空は雲一つない綺麗な星空が広がっていた。

「早く、みんなを救いたいな」

「ホントよ。というかなんでそもそも起点を竜がまだたくさんいる時代にしないのよ」

「ほら、想像できることしか夢にできないし、滅竜戦線バスターオーダー以前とか私全然わからないし。だから、あなたたちと出会う前くらいからしか再現できないのよ」

「なんだかんだ不便ね、その能力」

「だってこんなに危険な能力なんだし、少しくらい制約がないと不公平でしょ」

「アンタらしい考えだよ、ホント」

 ユグドラシルが紅茶を持って窓際に寄る。

「さて、また次の方法を考えるとしますか…… 」


 紅茶を飲みながら、私はクリシのことを思い出していた。


 空に蒼白い流星が一条、走った気がした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

蒼き瞳の君を探して 蒼恋華 @Blue_LoveLotus

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る