がうんがうんがうんがうんがうん
アパートを出て通りを右へと歩く。
すぐに大通りへと出て通り沿いに曲がった。駅に向かって栄えている方角だ。
想像していたよりも街は普通だった。
私は急に自分の心配が馬鹿馬鹿しくなり、なんだかアイザワに着いて来てもらったのが気恥ずかしくなってしまった。
車も大通りを走っているし、ビニール袋を提げて歩く人や、それこそ私のようにコインランドリーに寄ろうというのかカゴに衣類を入れている人も見かける。いつもの街並だ。
少し寂しく見える気もするが、それはアイザワの言う様に私に病が残っているせいかもしれなかった。
途中、アイザワに伝えたコンビニの辺りに差し掛かった。
彼の言う通りそこはピカピカのコインランドリーへと変貌を遂げていて、夕暮れの混沌とした空の下でまっさらな白い光を吐きだすその建物は夜の海に線を差す灯台のごとく孤高の存在感と安心感を放っていた。
「ね、本当にすっかり変わっているだろう」
「そうだな……いつの間に」
私が臥せる前は潰れる素振りなど一切見せていなかったというのに……。
とは言え、丁度良かった。
手に提げて持ってきた汚れ物をコインランドリーへと吐きだす。
がうんがうんと豪快に機械は回転し、その回転は居並ぶ洗濯機たちと同期していく。
各々の回転、しかし同じ種類、同じ目的の回転が、この建物全体を駆動させる歯車の連なりのようだった。
しかしその光景の中に誰一人として人間がいないのが、また私の不気味に思う心を呼び覚ますのだった。
洗濯終わりを待つ人の影が、ない。
コンビニを改装した為に広めの作りとなっているランドリーのどこにも人はいない。乾燥機も洗濯機もこんなにも回っているというのに。
がうんがうんという回転だけが響くその中にいると、まるで自分もそこへ巻き取られそうな気がして、私たちはそそくさとそこを出た。
やはり何かおかしい気がしていた。
一刻も早くこの違和感を拭い去りたかった。
自然と、歩調は早まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます