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突然現れたクノミ。
僕好みの藍色シスター服(ミニスカ)。
組んだ腕で重そうな両乳を支えるポーズもグッド。
因みにこのシスター服は、どこからか調達したソレではなく、あの『変化する服』の力で実現した変身フォームである。
「ろ、瓏殿、お知り合いでございます?」
「いや、知らないなぁ」
「瓏さん!? クノミですよ! 一緒に住んでる貴方の可愛い助手であり都合の良い女ことクノミです! ま、まさか! 既に洗脳済み!? 許せません!」
「瓏殿!?」
「すぐにっ、目覚めさせてあげますからねっ!」
ドスンッ!
クノミはその手に『身の丈ほどの巨大な十字架』を顕現させ、正面に構えた。
本殿の床がめり込むほど、相当な重さだと置いた音でも分かるソレを、片手で軽々しく扱うクノミ。
「あの子、何者ぉ? お仲間の魔術師? 教会の悪魔払い機関(クリーナー)?」
「いや、ただの『(元)中居さん』だよ」
「シスターコスしてくれる宿泊所? いかがわしい匂いがするわねぇ」
「『実際いかがわしいとこだった』からなぁ」
「むぅ! 瓏さんが知らないお姉さんと仲良さそうに話しててムカムカします!」
ブンッ!
クノミは十字架の先端(短い方)をゴエティアさんに向け、
「話は狐さんから聞きましたよ! 貴方が村人を長年苦しめて来た悪い悪魔さんだと!」
おっと、狐も来てたんだ、クノミの側に居らぁ。
狐と話した、ってのは、狐が『人間形態』に成ったのかな? それともクノミ自身が『動物の言葉が解る服』に着替えたのかな?
「それだけなら見逃していました……が! 流石に瓏さんを拐ったのは許せません! 覚悟は出来ていますね!」
「随分と手前勝手な襲撃者さんねぇ」
「僕もたまに扱いに困るよ。今のあの子は僕の声でも止まらないだろうねぇ」
「はぁ……『バエル』、『パイモン』、『ベレト』」
ゴエティアさんが胸の前に手をかざすと、音も無く床に『三つの魔法陣』が浮かび上がり——三体の悪魔が召喚された。
いずれも、有名な悪魔の王達。
……対するクノミは一人のコスプレシスター。
狐は参戦しないだろうし、僕も傍観者だしで。
こんなの戦いにすらならないよっ。
と、思う所だろう。
「……あの子の服って、どういうシロモノなのぉ?」
「この界隈じゃ有名な人がクノミの為に作った『嫁入り道具』でね。頭で思い描いた存在なら何にでも『成れる』んだ。ゲームに出るような剣の達人な勇者や天変地異を起こせる大魔法使い、暴虐非道の魔王などなんでもござれよ」
今回クノミが想像したのは、とある英雄級のゴーストバスター。
彼女が最近読んだ漫画に出てくる主人公の師匠キャラで、シスター服の最強エクソシスト(悪魔祓い)だ。
時には巨大な十字架を振り回して悪魔を薙ぎ飛ばし、
時には十字架から謎ビームを放って悪魔をチリにし、
時には十字架に悪魔をはりつけにしたら謎爆発したりと。
キャラが作中で出来た事を、そのまま、クノミは三人の悪魔の王で『再現』した。
「んー、てかゴエティアさん。仮にも現れたのは有名な悪魔さん達なのに弱過ぎひん?」
「詠唱バフなしの様子見だったからねぇ。それでも簡単にやられる連中じゃないんだけどぉ」
「様子見でスナック感覚に消費される悪魔王……もっと強い悪魔とか出せれば或いは?」
「てか君はどっちの味方なのぉ?」
「むおおお! また仲良さげに!」
ズダダダダと今度こそゴエティアさんに殴りかかるクノミ。
——と。
バッ!
両手を広げ間に立ち塞がる一つの影。
「ら、乱暴はやめて欲しいで御座います!」
勇気を振り絞ったのは神代ちゃんだ。
「どいてください! 貴方の事も聞きました! 最も苦しんだであろう元凶の子孫だと! もうこの相手の事は嫌々敬わなくて良いんです!」
「い、嫌々では御座いません! 某の不幸が盲目だった件でしたら瓏殿に戻して頂いておりますっ」
「貴方も瓏さんと仲良しですか! 本当に度し難い村です! 成敗!」
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