52
「は、話がどんどん進んで行って整理が……某は、我らは、これからどうなるんです?」
「そんな不安そうな顔にならんでもいいよ。さっき言った通り、『君達を閉じ込めてた』この村は今日で解散。君達は陽の下に出られるんだ。まぁもう出てるけど」
「きゅ、急過ぎます……皆になんと話せば……」
「ああ、そういえばさ、ここの村人って外の世界の『行方不明者』でいいのん?」
「っ……」
表情が強張る神代ちゃん。
「そだよぉ(ゴ)」
「アンタが答えるんかい」
(元)朝の来ない謎の村、【暮森村】。
始まりは、数世紀前のフランスまで遡る。
とある村の長が、苦労して手に入れた【魔導書】にある事を願った。
『村に永遠を約束してくれ』と。
『害が来れば排除してくれ』と。
果たして、その願いは叶えられた。
村を存続させる為に、村人が減れば新たな村人を凡ゆる手でおびき寄せ、記憶を書き換え閉じ込め。
噂を聞き付けて村を滅さんとする魔術師らが現れれば、本はその者達を『契約通り』に排除し。
結果、少し目立ち過ぎた結果増えていった敵に辟易し、拠点を日本へと移したりして、その後は細々と村は『契約通り』存続して行って、
今に至る、とゴエティアさんは語ってくれた。
「ふんふん。大方、僕が飲んだお茶にはゴエティアさん由来の『隠し味』でも入ってたんだろうさ。普通の人なら、そうさな、飲んだら『前からこの村に住んでいたかのような』記憶に書き換えられる、そんな隠し味が」
「大体そんな感じよぉ」
「ここの村人さん、見覚えあると思ったら行方不明者捜索の紙で見た顔だったんだよね」
「……瓏殿は、なんとも無いので?」
「よっぽどの毒じゃなきゃ僕には通らないよ」
「うーん……今まで効かなかった人は居ないんだけどもねぇ」
「ゴエティアさんは知らないかもだけど、表に出てこないような僕以上の化け物連中がこの国にはウジャウジャしてるからね?」
「今まで目を付けられなくって良かったわぁ。ま、今日こうして見つかったんですけどねぇ」
「……その、先程の話に出た、契約を結んだ村の長、という者が、初代神代、ですか?」
「そうなるわねぇ。大分海外の血も薄まったと思ってたけど、どうやら貴方は、隔世遺伝の影響が顕著に出てるわねぇ」
「……ごえ様は、一体……?」
「本体は【魔術書(レメゲトン)】、だけど、『悪魔の使役について書かれた本』、だっけ?」
「まぁ、ザックリ言えばそうですわねぇ」
「あ、悪魔、とは?」
「凡ゆる国凡ゆる時代にて人間の望みを(捻くれた解釈で)叶えて来た人類史の発展に(考えようによっては)必要不可欠な(悪)神だよ」
「す、凄い……!」
「物は言いようねぇ」
「てか今更だけど、羽振りの良い部屋だよねぇ。財源はどうなってるんだい? この辺に金脈や油田でも?」
「ああ、それは全て『その子のお陰』よぉ」
「神代ちゃんの?」
「そぅ。その子は特殊な力を持って生まれる神代の女の中でも更に特殊、『未来視』を持っていたの。未来を『夢』と言う形で視る事が出来たのよ」
「へー、それで一稼ぎしたって事ね。神代ちゃん凄いじゃん」
「ぅぅ……」
「でも代わりに視力を失ってねぇ。生物や無機物の『気の力』も見えてたみたいだから日常生活は大丈夫っぽかったけど……視力が戻って良かったわねぇ」
「なぁんだ。僕はてっきり、ゴエティアさんが『神との契約云々』とか言って目を潰して良いように扱ってたのかと」
「ご、ごえ様はそんな酷い事はしませぬっ」
「そういうのは『契約違反』だからねぇ。そこんところはしっかりしてるわよぉ」
――さて。
「一通り話したから神代ちゃんも納得した頃合いだし、そろそろ行こっか」
「そうねぇ」
「ご、ごえ様……」
5
ドドド――
「え? こ、この揺れ……こんな時に、地震?」
「なんだか、凄い『殺気』が迫って来てるわねぇ」
ドドドドドドッッッ―― ゴォンッッッ!!!
本殿の扉が吹き飛んで。
陽の光が中まで差し込んで来る。
それを遮るように、扉があった場所で仁王立ちしていたのは、
一人の『シスター』だった。
「瓏さん! やっと見つけました!」
なんだクノミか。
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