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カタッ
何かが動いた音。
僕は【それ】から目を離してなかったので見逃さなかった。
動いたのは、【本】。
「ゴエティアさーん。居るのは分かってますよー」
「ろ、瓏殿っ、そのような言い方は……それに、ゴエティア殿、とは?」
「それは」
パララララ……
と。
奥の黒い本が開き、勝手にページをめくり出し——
パァ ——開いたページから光が放たれて……
「ふぅ」
輝きが収まると同時に、本の前に、一人の【女性】が現れた。
神秘的な黒いドレスを纏った艶やかな黒髪の美女——
という期待を裏切る、パーカーとショートパンツ姿の部屋着巨乳美女。
そんな美女は チラリ 神代ちゃんを見る。
ビクッとなる彼女。
「あ、ああ……ごえ様……申し訳ございませぬ……このような事になるなんて……」
「ん? このようなって? 僕が君の目を戻した事? 僕が村に光を戻した事? 僕のような余所者を本殿まで許した事?」
「す、全てです瓏殿っ。この村にとっても前代未聞ばかりで っ」
「そうかい。ま、そんな村も『今日で終わり』さ」
「——え?」
ポカンとする神代ちゃんは放っといて。
僕は本丸を見据える。
「さて。ゴエティアさん、僕みたいのがここまで来た時点で後の流れは想像出来るよね」
「……はぁ」
神は机に腰掛け、脚を組み、両手を上げて、
「降参、降参よぉ」
あっさり、身を引いた。
「ええ……少しは抵抗しないの? 僕を亡き者にすれば、数世紀も維持して来たこの村での暮らしは続けられるよ? バトルパート無し?」
「ええ。私だって、それなりに力はあると自覚してるけど、流石に『自殺』はしないわよぉ」
「ちぇっ。やりがいのない神様だこと」
「長生きするコツは臆病でいる事だからねぇ。流石に、ウチの巫女の目を治したり、夜を朝にするようなのは相手に出来ないわぁ」
「そっか。じゃ、『行きましょ』か」
「因みに、私はどうなるのぉ?」
「ん? 別にどうこうはしないよ? 僕は『君を欲しがった』依頼者の意向に従って君を回収しに来たんだ。君の力は奪わないし、望むならこの本殿ごとその依頼者のとこに移送してもいいよ」
「至れり尽せりねぇ。じゃ、行きましょうかぁ」
「お、お待ちをっ」
と。
話の腰を折って来たのは神代ちゃん。
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