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↑↓
——村の外。
訊かれて、答えに詰まります。
詰まってはいけない質問なのに。
そも、なぜ『出た事がない』のを、この方は当然のように知っているのでしょう。
カマを掛けている? でも、何の為に?
『某の力』では、表情までは読み取れません。
外に出る?
勿論、考えた事もあります。
——生まれた時から、この村の風景しか知らぬ某。
遊び場は、周囲を囲む森ぐらい。
外には、凡ゆる娯楽があると聞きます。
憧れはありました。
……けれど、それは無駄な考え。
なぜって、それは、亡くなった母も祖母もそのまた母も……歴代の巫女が何世代も成し遂げられなかった事。
何世代も、村の外の風景を知りません。
本の中の知識しかない、想像の産物。
……凡ゆる景色を見てみたい。
……温かくて眩しいという太陽を見てみたい。
けれど、某は無力。
例え出られたとしても、この目では、満足に生きられないのは明白。
それに。
今の某は、『この方が村で暮らしてくれるのなら』、それでも——
「僕のお願いを聞いてくれるなら、君の願い、全て叶えてあげるよ」
え?
す……全ての……
「願い、と?」
「うん。(ぼそり)まぁ、了承してくれなくても半強制だけれど」
そんな、都合の良い話があるのでしょうか?
「……願い、とは?」
「お、乗り気だね。なぁに、難しい話じゃない。君の願いを叶えたら、『外に居る知り合いと仲良くして欲しい』、それだけさ」
知り合い……? 仲良く……?
いや、それ以前に……『外に居る』?
これでは、既に、この方は某の願いを知っているかのようで。
「まぁ君の答え聞いてないんだけど、」
話しながら近付いて来る彼。
大き過ぎる気配と、頭が蕩けるような甘く蠱惑的な香り。
「雰囲気で了承したと見做しちゃうね。じゃ——『光彩奪目(こうさいだつもく)』」
瓏様が言葉を放ち、同時に、某の二つの目蓋の上を指でスッと横に滑らせると、
ピシッ!
闇がヒビ割れて——
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