20

「二人とも、遊園地デートは楽しい?」


「はいっ」

「楽しめる要素あった? 私見逃してたかも」

「廃墟好きなら堪らんのになぁ……」

「おや? 瓏さん、あの建物の二階部分の窓に、『女性が見え』ません?」

「んー? アレはお化け屋敷かな? あー、確かに居るね、白い服着たの」

「え、ちょっとやめてよ、何も見えないんだけど、嘘でしょ?」

「いるよーモリちゃん?」

「クノミは『死に触れた』者だからねー、見えてもおかしくないよ。僕は元から魂や精霊等を観測できる【竜眼】持ちだからだけど」

「……今後、変なの見えても報告しないでいいからね」

「ビビリだなぁ……っと。あそこか」

目的地へ辿り着いた。

そこは『広場』。

周りに放置された屋台やプラスチックのテーブルと椅子を見るに、食事や休憩をしながら催し物を眺められた場所なんだろう。

「この地面の焦げ跡……瓏さん、ここって、まさか?」

「そのまさかさ。ここが『集団失踪事件の現場』だ」

「うぇ……こんな跡、消さないから客も来なくなるのよ」

「いや、どうも擦っても擦っても『消えない』らしいぞ」

「そんな補足聞きたくなかったんですけど……」

さて、と僕はキョロキョロと周囲を見渡して。

「この辺には目ぼしい事件の痕跡は無いな。【原因となったモノ】が落ちてたら良かったんだけど」

いや、原因というか『救済』かな。

「それらしいモノは普通に当時の警察が回収してるでしょ」

「因みに、瓏さんの言霊の力で事件そのものを『無かったこと』には出来るんですか?」

「ん……現場にこうして直接来てるから、『半分は解決』するかな。『半分は失敗』するだろうけど」

「成功率半々ってこと?」

「いや、言葉のままだよ。『半分解決し半分失敗』。歪な形で子供達が救われる。被害者の半数の子達が戻って来るならまだ良いけど、全員戻って来てもその『見た目は』……的な?」

二人は少し青ざめた顔に。

想像もしたく無い地獄絵図だろう。

それはそれとして、

「おっと、気付けばそろそろお昼か。調査は後回しにして君らのママンお手製弁当食べよっ」

「食欲無くすような事言った後によくそんな提案出来るわね……」

それでも、僕がテーブルに移動してお重を広げると、二人もこちらにやって来た。

「ふむふむ、サンドイッチに唐揚げ、サラダにフルーツ……保冷剤付きで傷まないように配慮もされているね」

「私も手伝ったんですよっ。(コポポポ)はい二人とも、冷えたお茶をどうぞっ」

「ありがと」

「よくこんな場所でのほほんと出来るものね、二人とも……」

「いただきまーす」「ますっ」「はぁ」

モグモグ……これは冷えても美味しさを保つよう計算された作り方ですねぇ……唐揚げも良い感じ。

「で、この後はどんな予定?」

「そーだねー」

と。

「あっ、お前らっ」

「あわわ……どうしてここに……」

寛いでたら、スイーツ姉妹に見つかった。

どうやら姉妹もここに用があるようで……。

「ランチタイムだけど?」

「ここには来るなっつったろーがっ」

「こ、こんな場所でお昼とか、日本の人は変わってます……」

「待って、私を変人一派と認識しないで」

「私は瓏さん一派と思われても構いませんが?」

僕はお茶を一口飲んで、

「そんなお二人は、こんな遊園地廃墟で何をしてるんだい? 『美少女二人が遊園地で肝試しして来た』って動画の撮影?」

「関係ねぇだろ、んなこと」

「ひ、秘密ですっ」

「ま、予想はつくけどねー。僕ら『同業者』だろうし」

途端、二人の目付きが鋭くなる。

僕はその視線から目を離さず、

「君らの邪魔をする気は無いよ。僕らはここの爆発事故について調べに来ただけだし」

「どうだか。お前さっきキャンプに来ただけとか抜かしてただろ」

「な、何となく、息を吐くように人を騙す『詐欺師』の空気を感じます……」

「キャンプに来たのは間違ってないし、遊びに来たってのも嘘じゃない。僕らが君らと敵対する理由も無いんだよ。てかここは君らの島か? 人に文句言える立場か?」

「……行くぞシフォン」

「え? あ、ま、待ってマカロンちゃん」

スイーツ姉妹は僕から目を逸らし、その場を去った。

「うーん。やっぱりあの姉妹だったようだね」

「かねこりにいた時のように仲良くしたいんですが、怒らせてしまいましたね……瓏さんは悪く無いんですが……口を挟めなかった自分が情けないです」

「てか同業者とか言ってたけどアンタほんとにあの二人がここに来た理由知ってんの?」

「ブラフに決まってんだろ。上手くゲロってくれるかなと思ったけど、思うように行かないね」

「アンタって奴は……」


「さ。メシ済ませたら残りの場所もまわるよ」

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