18
――船着き場に船を止め、降りる僕達。
「はぁ……やっと着いた……微妙にまだ気持ち悪……」
「大丈夫? モリちゃん。はい水」
「ありがと、姉さん……んっんっ……はぁ……、……しかし、住んでるとこの近くにこんな島があったとはね」
姉妹を横目に、僕はナヨさんに向いて、
「もう帰るの?」
「ん。明日、同じ時間くらいに迎えに来る」
「世話かけるね。しかし、ホントにここに【例のブツ】はあるのかい? あるんなら、依頼者が自分で取りに来ればいいのに」
「その『事情』は何れ分かる。じゃ、お願い」
ナヨさんはサングラスを掛け直し、颯爽と去っていった。
さてさて、先ずは何からしようか。
――と、先の予定を考えていた矢先。
「あん? アイツじゃねぇのかよ」
「か、観光客の方でしょうか?」
僕ら以外の第三者の出現。
少女……まぁ僕らと同じぐらいの歳の二人組。
二人とも白Tシャツとカーキーのカーゴパンツという動きやすそうなミリタリースタイルで。
栗色の髪色と瞳の色からして海外の子だろうが、日本語は上手い。
おっぱいも、僕のツレに劣らずデカイ。
『双子の姉妹』かな? 見た目そっくりだし。
他に人は居ないと思ってたから、多少面を喰らった。
「おう、お前ら。どんな目的でここに来たか知らねぇけど、島の中心にある【遊園地】には近付くなよ?」
「きゃ、キャンプとか、廃墟マニアの方々ですか? 島には人工物は多く残ってますが、今彼女が言った通り、古くなって危険ですので気を付けて下さいね?」
言って、二人は踵を返し、去ろうとして、
「し、シフォンちゃんに、マカロンちゃん?」
ピタリ、足を止めた。
「ん? 何? 姉さんの知り合い? いや……昔の知り合いとかはあり得ないだろうし」
「ああ、成る程、『そういう事』ね」
首を傾げるモリちゃんと、納得する僕。
しかし、振り返ったあちらの姉妹は、顔に警戒心を浮かばせて、
「お前の知り合いか?」
「う、ううんっ、知らない……で、でも……なんだか……どこかで……」
「おいっ。お前ら、アタシらを知ってんのか?」
うーん、これはややこしい話になったな。
まぁ、上手く煙を巻くか。
「この子の言う事は気にしないで。アニメとかが好きな子で、君らに似たキャラ名を思わず叫んじゃっただけだから。もしかして、ホントにそんな『お菓子みたいな名前』だったり?」
二人は僕を見る。
代表と思ってくれたのだろう。
「お前は?」
「僕は市内に事務所を構えるしがない探偵さ。今日は知り合いに教えて貰った静かな島でキャンプをするつもりで来ただけ」
姉妹はジッと僕を見る。
僕のポーカーフェイスを舐めるなよ?
「……そうか。兎に角、あまりウロチョロしない方がいいぞ」
「で、ではっ、失礼しますっ(ペコッ)」
今度こそ、二人は去って行く。
「んーっ、んーっ」
また余計な事を言わぬよう、二人が見えなくなるまでクノミの口は手で塞いどいた。
「……、……よし、居なくなったな」
「(パッ)ぷはぁ! ろ、瓏さん! 今の子達は!?」
「あの二人かもね」
「やっぱり!」
「だから誰なのよ」
モリちゃんに軽く説明。
「はぁ……姉さんが死んでた時に仲良かった双子の姉妹が成長した姿で現れた、と」
「そうなのっ。この感動は私にしか解らないよっ。……アレ? でも、なんで瓏さんがあの二人を知ってるんです?」
「僕に知らない事はないよ」
「流石ですっ」
「でも、姉さんが館を出た時はまだ子供だったんでしょ? たまたま容姿が似てた名前も同じ子達、って方が現実的じゃない?」
「そうとも言い切れないけどね」
僕は話に割り込んで、
「あの世界の時間の流れは進んでるようで歪んでてね。今現在? 幼い姉妹があちらで働いてたとしても、こちらの世界では既に『転生済み』というパターンがあってもおかしくない」
「……もう会えないと思ってたのに……すると、他にお別れしたお姉様もこの時代に!?」
「或いは」
「おほーっ、素晴らしいですっ」
テンション高いなぁ。
「に、しても、随分と深刻な雰囲気を出してたんじゃない? その姉妹とやらは」
「この島に何かをしに来たんでしょう……出来ればお手伝いしたい所ですが……瓏さん。ここはどんな島なんです?」
「んー? さぁ。よく知らないけど、昔は【テーマパーク】とかがあって盛り上がってたらしいよ」
ナヨさんからの簡単な情報しか僕の中には無いわけだが。
「さっき二人が言ってた遊園地、ってやつの事ね」
「二人は『近付くなよ』と言ってました……瓏さん、そこに【何か】あるのでしょうか」
「さぁて。あの二人の目的は見当もつかないね。それより、僕らもいつまでも突っ立ってないでさっさと移動しようぜ」
先に歩き出す僕に、姉妹は何か言いたげだったが黙ってついてくる。
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