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【EP5】


お、視点戻ったな。


さて、今がどんなシーンかと言うとーー

「ったく……ホテルで寝てたら急に明るくなって何事かと思ったわよ」

「ふふ、モリちゃんが寝てる間に色々ありましたからねー」

「色々ってレベルじゃ無かったろ……」

「わ、ワルプルギスの夜でした……」

荷物を持って、港へと到着した所だ。


--あの後。


僕らは遊園地を後にし、モリちゃんを叩き起こし、スイーツ姉妹の後片付けを手伝って、今の昼過ぎに至る。

さて……港に着いたのはいいけど……ん?

おっと。

まるでこの時間に来るのを分かっていたかのように、


「おかえり」


クルーザー、サングラス、ロリババア。

感覚的には一日ぶりの再会だが……

「ナヨさんからしたら数時間ぶりでしょうね」

「……誰だ?」

「お、女の子……でも、何やら凄味が……?」

「私の恩人の一人でナヨさんって方ですっ。瓏さんと『同格』の存在なんですよっ」

「瓏なんて片手で捻られる」

「ホントの事だけど大人げないババアだなぁ」

「……コイツより上が普通にいるのか」

「も、もう別作品です……」

クルーザーに乗り込む僕達。

スイーツ姉妹は「ツレを待つ」と言ってたけど、クノミが無理矢理乗せた。

まぁどうせ後で合流する予定だったからいいんだけど。


--クルーザーは海の上を走り出す。


「ったく……アイツに『来なくて良い』って連絡しねぇと」

「あ、あっちの港で待ってて貰わないとだね」

「むふふ……漸くお二人の旦那様を見られるんですねっ」

「姉さんゲスい顔やめなさい」

「ほらナヨさん。依頼通り魔法瓶だよ。お納め下さいな」

「ご苦労」

「「ちょっと待った!!」」

スイーツ姉妹が大声を出し、田道間(たじま)姉妹は首を傾げている。

いやクノミは傾げるなよ。

「なんだい? 僕は元からコレの回収が目的だったんだが?」

「いやお前中身開けるとか言ってたろ!」

「む、無慈悲ですっ」

「でもなー、依頼主を裏切る事になるしなー」

「問題ない」

んふーとナヨさんはサングラスをキラリとさせ、

「さっき依頼主から『回収後の扱いは任せる』って電話があった。でも瓏に報酬はキチンと払う」

「はえー。変わった依頼主さんですねぇ」

「何がしたかったのよ……」

はぁ……と息を吐くスイーツ姉妹。

「ったく。やっぱりテメェは信用ならねぇ」

「ど、ドン引きですっ」

「僕を少しでも信用してくれてたなんて嬉しいねぇ」


--和気藹々とした船旅も終わり、僕らは本土へと到着。


「おーい! なんだかみんな大変だったみ「『鬼灯』!」え? ぬわー!」


両手を振って港で待っていた一人の男がマカロンちゃんの投げた鬼灯に閉じ込められた。

ボトンっと地面に落ちる巨大な鬼灯。

バタバタと中で中身が暴れてる様はモンスターボールのゲット演出のようだ。


クルーザーが停泊し、みんなで降りてそこまで行って、


「え、これ、鬼灯? うわ、キモ(素)」

「何してるんですかマカロンさんっ。ご挨拶したかったのにっ。顔も確認してませんっ」

「だからだよっ、ぜってー会話の機会なんざ設けねぇからなっ」

「な、なんだか恥ずかしいですし……『虚像』っ」

「ああっ! 鬼灯ごとあっちにワープしました!」


向こうに止めてあったjeepの方へと跳んだ姉妹は、こそこそと男を見られないよう車に押し込んだ。


「むぅ……どんな男性が二人の心を射止めたのか見たかったのに」

「別に良いでしょ顔くらい。話は聞けたんだし」

「僕は顔見たよー」

「えっ、ホントですっ? あの一瞬で見るなんて流石ですっ。どんな顔でっ? イケメン系ですっ? ワイルド系っ?」

「んー、『量産型黒髪イケメンラノベ主人公』って感じ?」

「ああ……うん」

「えっ? モリちゃんそれで分かるんですっ? フワッとし過ぎですっ」


モリちゃんは過去、姉を助ける為に『色々調べた』。

というより、縋った。

凡ゆる漫画、小説、歴史書……

黒魔術、土着信仰、怪しい道具……

その努力を、執念を積み重ねたからこそ、僕の所に辿り着けた。

いや、他の人が同じ努力をしても、普通僕と会うのは叶わないのだが、そこは運も相待って。

だからこそ、モリちゃんはそれなりにサブカルにも精通してるのだ。


「母さんもう来てるわよ。ほら、車の横に立ってる」

「ホントだねっ。でも、数時間ぶりにまたここに呼び出すなんてなんだか悪いなぁ」

「そうでもないわよ。すぐの再会で喜んでると思うし」

「だってよクノミ。しばらくは実家にいたら?」

「それとこれとは話が別ですっ。おーいっ」


--田道間姉妹の車を先頭に、僕のバイクとスイーツ姉妹のjeepは目的地を目指す。

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