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──それからは、想像通りのハードワーク。

雑魚ラッシュではあったが心なしか悪霊の質もどんどん上がって行って……それら目的地が近いという証左だった。

にしても、やっこさん。

矢鱈、ウチら(クノミ含む)を観た瞬間飛び込んで来るな。

殆ど意思なんて存在しない連中だろうに……ウチらを掃除機かと勘違いしてるように、自ら吸われ寄って来る。

アイツを狙えばいいのに、幽霊からはまるでモテないらしい(近付きたくない気持ちも解るが)。

目的は……マザーハートか?

この傾向は、昔からあった。

悪霊を祓えるマザーハートではあるが、同時に、引き寄せてもしまう。

奪った所で、悪霊に使えるわけないってのに。

それとも……『救済』でも求めてるってのか?

こんな悩みは、マザーハートを捨てれば全て解決するんだろう。

まぁ、アタシもシフォンも、その決断を下そうなんて露ほども考えた事は無いが。


「夢ってのは、覚めたくないよね」

「おや? どうしたんです瓏さん?」

「考えてたんだよ。ここの時間が外よりゆっくりな理由。遊園地ってのは夢の世界なんだ。キラキラで、楽しくて、現実に帰りたくなくなる場所なんだ」

「なるほどっ。つまり、私にとっての遊園地は瓏さんのお家ですねっ。うん? いや待てよ? 別に瓏さんのお家じゃなくても、瓏さんの側であるならどこでもいいですね……つまり、私にとっての遊園地は、瓏さん自身?」

何の話をしてるんだ前のバカップルは……緊張感の無さに呆れていると、アイツはピタリと足を止め。

「っと。流石、ラストステージがすぐ側ってのもあって、現れたようだね。【中ボス】が」

またか。

まるで『未来を観てる』かのように、アイツは先の展開を口に出す。

そこにはまだ何も無かったが……アイツが指を向けた瞬間、その場に姿を見せた。


『黒い着物を着た女』。


女、だと思うが、顔の部分は黒いモヤがかかっていて分からない。

場所はホラーハウス(お化け屋敷)の側。

だから、一瞬、そこに関わるキャラクターが形となった悪霊、なんて推測した。

--が。

ドクン、ドクン……心臓の音がうるさい。

なのに、こんな蒸し暑い夜なのに、鳥肌が立つほどゾクリと身震い。

敵相手に視線は切らせないんで確認出来んが、双子だから分かる……シフォンも同じ思いと顔をしてるだろう。


ナンダアレハ?


ただの着物を着た悪霊の筈だ。

なのに、なんでこんな、動揺と矛盾するような『あたたかい』気持ちになる?

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