vol.8

浦野がそれを言い出したのは再開の合図をかける直前だった。

「俺正直、クラスにはクジで決まったて言ってくれるなら、武道場でいいかと思ってるんだけど」

「まじ?」

「おれ、剣道部だから武道場のこともよくわかるし、B組に二体譲ってもらうよりはいいんじゃないかなと思うんだよね。劇の内容も観客が近い方がいいのは確かだし。演劇部はいつも武道場でやるでしょ?うちの演劇部もきっとやりやすいんじゃないかと思うんだよね」

これは、暗に日向のことを指しているんだろうが、日向は顔色一つ変えないから、相談したのかしてないのかはさっぱりわからん。

「けど、そんな理由じゃ納得しないやつもいるだろうから、外向きにはクジにしてくれるならって話だけど」

「んー、なるほど…」

「もし、浦野がほんとにそれでいいなら、おれ、それアリだと思う」

相馬も乗ってきた。

「おっけ、ちょっと待とうか、再開させよう。みんな、いるね、それで、今、外向きクジなら、E組は武道場でもいいって言ってる、把握おっけー?」

一応確認を取るとみんなうなずく。

「問題は、それを総監督がよしとするかだよ」

春野があおる。

「いやまて、一応B組の意見を聞きたい」

「…うん、そうだよね、わたしも、そう言ってくれるなら、その言葉に甘えたいというのが正直なところです。…すごく助かります」

「いや、いいよ」

浦野も吹っ切れたように請け合う。

「で、総監督は」

「…正直、休憩前に覚悟は決めた。けど、この秘密は絶対だそ?全員それを誓えるか?」

1人1人を見る。全員神妙な顔でうなずいてる。が、一応念を押す。

「ばれたら、E組だけじゃなくて、舞監会全体の信頼に関わるからな、覚悟しろよ。」

しかたがない。だが、内情としては話し合いで決めたんだから、失敗ではない。まあ、内緒にしなきゃいけないから、結局外向きには失敗になるかもしれないが。

「じゃあ、くじで決まったことにするとして、どこからにする?一から?は不自然だよね、希望通りいきすぎてるから。浦野的にはどう?」

「そうねー、B・D・Eでいいかな。それくらいならうまく言いくるめられそう。まあ、日向がもともと武道場派だったしね。」

知らんふりを決め込んでる日向が若干嬉しそうだ。

「じゃあ、今日の会場決めは、まず、日程優先のH組が決まって、その後脚本の都合で一体希望が決まり、G組は二体ならということで移った。それで、武道場でもできる三クラスでクジを引いた。これでいいね?」

こうして無事に会場が決まり、時間帯に関してはクジでこのようになった。


第一体育館…C・(土曜午前)A(土曜午後)・F(日曜午前)

第二体育館…B(土曜午前)・D(土曜午後)・G(日曜午前)

武道場…E(土曜午後)・H(日曜午前)


始まってから三時間以上がたっていた。

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