選考
オーディションがおわり、観覧者からもアンケートを回収した。意外と好評で、みんなきっちりコメントを書いてくれていた。
「結構、評価、割れるね」
エレンちゃんが以外そうに呟いたけど、正直、割れてくれた方が選考はやりやすい。
「まあ、じゃあ、主役からやっていこうか」
五木くんのその言葉で、選考会はスタートした。
オーディションの終わったときの、ハナの感想は、荒れるな、だった。
「主役は、俺は、リカさんだと思った」
五木くんがそういって推したリカちゃんは、普段はそんなに目立つタイプではないけれど、オーディションでは、よくとおる声で、動作もはっきりとしてて、劇向きだ、と思った。
「私はレイナだと思う。リカもよかったけど、なんかちょっとやりすぎかなって」
と、やはり意見が合わないのはエレンちゃん。レイナちゃんは普段どおり、堂々とした自然な演技だった。
あっくんもレイナちゃん推し、石田ちゃんはリカちゃん推しで、わかれてしまった。
こうなると、舞台監督である、私の票で決まっちゃうわけなんだけど、それは何か違う気もする。だから、
「ちなみに、鉄平役は誰だと思った?」
男の子の主役についても聞いてみることにして、質問を避けた。
主役級ふたりの方向性みたいなのも見えてくるはずだ。
「鉄平役はテツローかな。みんなは?」
即答したのは五木くん。なんとなくわかる。高校生の元気な感じの王道っていう演技じゃない。なんとなく気の抜けて、ちょっとクズ男っぽい。五木くんの中では、鉄平はそういうイメージなんだろうな。
それにしても、さすがだ、しっかりイメージができてる。脚本、読み込んだんだろうなぁ。ちょっと感動しちゃう。
ほかの三人は迷っているようた。
「正直、テツローと世良は迷うな。それぞれでよかったから。」
とあっくん。
世良の演技は、予想どおりで、声は聞き取りやすいし、エネルギッシュだった。だから、彼を選んでも問題ないし、練習もそのエネルギーで引っ張ってくれることは間違いなかったが、五木くんのイメージには合わないんだろうな。
「なんか、わたしは、世良くんは鉄平っていうよりは、銀平って感じだと思った。」
銀平は鉄平の兄役でこいつもダメ男だけど、シリアスな場面はすくない。たしかに、世良のエネルギッシュなところはとても合う。
なるほど、おなじく、と場がまとまる。
「それでいうと、俺はレイナさんは、あやめ役だと思う。落ち着きがあって、大人の女性の役っぽい。」
あやめさんの役は鉄平の妻でもある。
「なるほどね!そういう、ポジティブな決め方、いいかも!」
石田さんのそんな意見もあって、その後は残りふたりまで、順調に決まっていった。
しかし、残りふたり、難題にぶつかる。
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