エクセル

「わりぃ、遅くなった」

「おはよう!集計結果まとめといた」

エクセルできれいにまとめられた表を渡された。こいつ、すごいな。

「おまえ…」

「これくらいよゆー。去年ソーマにこき使われてなれた」

エクセルって意外と便利なんだよーとか言ってるし。まじ、いいやつすぎるだろ。

「それよりも、舞監も演出も第二希望以下に入れてくれてる人はいたよ」

「お、まじか」

「けど、それは僕らも含め、キャストを志望してる人だった。」

「…なるほど」

条件はみんな同じってことか。

「あと、キャスト志望も12人で、結構ギリの人数かも…。どうしよう、これをもとにやってくれそうな人に声かけていく予定だったけど、希望に上げている人だけだと、僕らがやらないといけなくなるかも」

「それはそうだけど、とりあえず、聞いてみるしかなくね、もしかしたら、そいつらからやっていいて言ってくれるかもしれんし、いいアイデアももらえるかも」

「そうだね、そうしよう」


とは言ったものの、問題は難航を極めた。やっぱり、キャストをやりたい奴は、キャストへのこだわりが強い。俺だって、それは痛いほどわかる。先輩たち見てかっこいいって思ったし、終わった後の達成感に満ちた姿もよかったし、後輩にもそんな姿を見せたいって思う。だから、そういうやつらに強くは言えない。かといって、裏方志望のやつはもともと劇なんかに時間割きたくないって思ってそうだし。アンケートに舞監・演出を書いてない裏方志望の数人、いけるかなって思ったやつにも声をかけたが、だめだった。

「セラー。入江に相談しに行かん?」

いけ好かないメガネ野郎に負けたみたいで悔しいけど、一度そうした方がよさそうだ。

「わかった、行こう」



「やっぱりねー、そうなると思ったんだよー」

何度見てもむかつく野郎だ。

「けど、ハチがいてもだめだったかー」

俺のことは信用してないが、ハチのことは信用してるらしい。

「で、どうしようって相談にきたわけ?」

「ったく、なんでおまえはそんな偉そうなわけ?」

「まあまあ、で入江、お前ならどうする?」

「自分の手先になってくれそうなのを囲い込んで仕立て上げる。もしくは、自分が諦めてやる。」

性格悪いかよ。

「あのね、僕たち、入江みたいに腹黒じゃないんだ。けど、キャストはやりたい、これは譲りたくない。だいたい、会長副会長なんていうめんどうな役割を引き受けたんだから、これくらい自由にやらせてほしい」

「じゃあそうやっていえばいいじゃん」

「そういうことじゃなくて!」

ハチが珍しく怒ってる。ふたりともたぶん言ってることは正論だ。解決策はないのか?

「わーかってる、わかってるよ。けどいい解決策なんて俺だってそうポンポン思いつかない」

「キャストと兼任しちゃダメなの?」

「おまえ、本気か??」

「本気だ」

「…無理だ。それは許せない」

「なんでだよ!」

「舞監も演出も大事だからだ。キャストは常に当事者だ。問題が起きたとき、当事者は周りが見えなくなるものだ。だから、だめだ」

こいつ、本当に俺らと同じ高校生なのか…?

「けど、いないんだよ」

「ほんとうに誰もいないのか?全員と面談したのか?してないだろ、交渉するならそれからだよ」

「…わかった。もういい。セラ、いこう」

「お、おう」


「てか、あいつよー本当に同級生かよ。」

「ねー、ほんとそれ。ぼく、入江とは同じ中学だったんだけど、ずっとあの調子。だから、合わないやつとか結構いて。あれでも高校はいってちょっとは丸くなったんだよ」

あれで丸くなったとか、どんなんだよ。。。

「けど、言ってることは、間違っちゃいない」

「あー、なんか難しいことまで考えてるけど、納得はできる。けどどうする?」

「やるっきゃないじゃん。一人ひとり、聞いてく。」

「え、まじ?」

「いいよ、世良は部活もあるだろうし、僕がやる」

「それは、いいよ、悪いわ」

「けど、それしかないじゃん」

「もうすこし、狙い撃ちしてみない?やっぱ全員と話すとなると、おれもおまえも負担がでかすぎると思う。」

「けど、もうあてになりそうな人は聞き終わっちゃったよ」

「順番は俺が考えっから。だめ?」

「そこまで言ってくれるなら。ぼくは任せるよ」

「わかった、ありがと」

おれも他人に頼ってばっかじゃいけないよな。




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