五木

五木亮哉は窓際の席で外を眺めながら、会長決めの一連の流れを話半分で聞いていた。はあ。フルート吹きたい。二月の演奏会で部活を引退してから、音楽室からも足が遠のいていた。

「りょーちゃん、同じクラスじゃん。」

あ、哲郎。

「相変わらずでけーな」

「まーね。187cm。なめんなよ。なんか、亮ちゃん元気ない」

「べつに」

「部活なくなって、あこちゃんに会えなくなっちゃったもんねー。」

「べつに。F組行けば会おうと思えば会えるよ。」

「おー、さすが、クラスまで把握済みですかー」

あこは吹奏楽部のクラリネットの女子のひとり。たまたま曲の趣味があってよく話していただけで、別に好きとかそういう相手ではない。

「なんかうるせークラスだな」

「あはは、恭介かなー、けどいいやつだよ。お前もすぐ仲良くなれるっしょ。なんか、楽しいクラスになりそう」

「いいなあ、楽観主義者は」

「ほんとにもう。もう少し素直にならないともてないよー、またあとでね」

この教室は音楽室の正面にある。嬉しいのはそれだけだ。昼休みになったらちょっと行って楽器吹くか。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る