再び、第一歩

「さくらさ~ん、もう、勝手に抜け出したらダメだって、何回言ったらわかるんですか!」


若い看護師が息を切らしながら、着物屋へ飛び込んできた。


さくらの細々とした腕を掴み、店を出ようとした。


「春が、成人式だから。振袖を買ってあげないと!北海道は寒いから、少し厚手のを買ってあげないと。」


看護師がさくらの正面に立ち、両肩を掴んだ。


「さくらさ~ん。深呼吸して~。春ちゃんはもういません。いつもいってますよね~。ここは東京ですよ~。」


子供をあやすようにさくらに声をかけた。


さくらは看護師に引きずられるように病室に連れ戻された。


病院には、『精神科』と書かれていた。


病室の横には、一人の女性が立っている。


「さくら、おかえり。春ちゃんの振袖は買えた?」


綾美だった。


「綾美先生。勘弁してくださいよ。。」


若い看護師が、綾美へ愚痴をこぼす。


「ごめんね、でも3月26日だけは自由にしてあげたいの。」



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