第九歩

3月26日。


春の19回目の誕生日。成人式に向け振袖を買ってあげよう。


「春、今日は振袖を買いにいこっか!」


「うん!赤かなあ!」


大学生になっても春は素直で良い子だった。


最寄り駅の商店街にある着物屋さんに二人で向かった。


家からお店までの間、二人はどんな色が良いだろう。どんな柄が良いだろう。と話しながら向かった。


「いらっしゃいませ。なにかお探しですか?」


「この子、成人式が控えているので振袖を。北海道にもこんな立派なお店があったのね。ねえ、春」


春の返事はなく、お店の方から返事が来た。


「お客様、ここは東京ですよ。」


さくらは、ふふっと笑った。


「そんなことないでしょ!」


急に声を荒げた。


「春!春!」


さくらは、春を呼んだ。強く、大きな声で。震えた声で呼んだ。



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