第二歩

それから、何か月か経ち、春が初めて女の子の友達を家に連れてきた。


一緒に遊べるようなおもちゃも、色とりどりのお菓子も出すことはできなかったが、二人は何かを書きながらケラケラと笑っていた。


「おねえちゃん、お名前教えて。ママに一応電話しておくから。」


「大野 綾です!」


クラスの電話帳から大野さんの電話番号を見つけ、電話した。


5時のチャイムが鳴り終わるころ、大野さんが迎えに来た。


「初めまして、大野です。今日は急にありがとうございました。綾、帰るよ!」


「もうちょっと!もうちょっと!」


子供は遊び始めると止まらない、そしてママ友の世間話も始まると止まらない。


「綾、」


さくらはぼそっと声をこぼした。


懐かしい気持ちと春の新しいお友達が綾という名前だったことにくすっと笑った。


大野さんは、さくらと同じくらいの年頃だろうか。少し若くてきれいな人だった。


せっかくできたお友達。


古ぼけた家、しっかりとしたおもてなしもできない私たちを軽蔑されてしまったらどうしよう。いじめられてしまったらどうしよう。


少し、ひやひやしながらも世間話を続けた。


話していると、気づいたことがあった。そして、大野さんも気づいただろう。


お互いに父親がいないということに。


初めてのママ友だった。今すぐに今までのことを話して、楽になりたかった。


その気持ちをぐっとこらえた。


それから、定期的にランチをしたり、夜ご飯を一緒に食べた。


お花見や、夏休み、お正月や、クリスマス。様々な行事を4人で過ごした。


娘の成長の話でいつもランチ時間は終わっていたが今日は、違かった。


大野さんがみた携帯ニュースの話題で盛り上がった。


「東京都内で変質者。ふらふらと歩き、子供用品を買い、子供に話しかける女性。」


彼女ら、北海道の住人からすると、東京のことは海外のニュースのように遠い問題だったが、これから一人行動が増えていく娘たちをもつ親としてこんな変質者は怖い存在である。


気づけば、春も綾も13歳。


今年から中学生。



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