変化
個人情報を漏洩させた会社の社長というレッテルの影響は大きく、1週間、1か月が経っても、彼の再就職先は見つからなかった。
システム系のスキルを活かした案件で小銭は稼げたが、限界があった。
彼の情報漏洩事件は、ニュースにもなり、さらに彼を追い込んだ。
私も、詳しくはそのニュースを見て知ったのだが、
その事件は、彼が一番かわいがる後輩が行ったことだと知った。
私もその人は知っている。後輩は、逮捕されたが、社長だった私の彼は
全責任を負うこととなった。
「ストレスがたまっていた。」
そんな一言に私たちは狂わされた。
彼の不安や、イライラは私にも伝わってきた。それは春にも伝わっているのか、
春はずっと泣いていた。毎晩毎晩、泣き続けた。
「春、お願い。泣かないで。お願い。」
「うるせえよ。早く泣き止ませろ。」
彼が、最後に春を抱っこしたのはいつだっただろうか。
看護師になった友達のSNSをみて、私は元気をもらっていた。
彼は、酒を飲んだ。とことん飲んだ。そして、日中は家を出た。
私は、信じていた。仕事を探しにいっているんだと。
彼は、笑顔で帰ってきた。そして、春と遊んだ。そして、私を抱きしめた。
「俺、だめかもしれないな。」
そっとつぶやく、彼からたばこのにおいがした。彼は煙草を吸わなかったのに。
彼の笑顔を見たのはこの日が最後だったのかもしれない。
次の日、また彼は、たばこのにおいをまとって帰ってきた。
「パパ、何をしにいっているの?」
彼は、なにも答えなかった。そして、また酒を飲んだ。彼の逃げ場だった酒も尽きたころ、彼は、家に帰ってこなくなった。
私には、あなたと春がいればなんでもいい。
呪文のように心で何度も唱えながら、春を抱いた。そして彼の帰りを待った。
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