成長

それから、私は、ギリギリの単位数で学校を卒業したが、綾美とは少し気まずい日々が続いた。


最後は、祝福の言葉をかけてくれたが、その顔に私の好きだった笑顔はなかった。


学校を卒業し、まもなくして私のお腹には新しい命が宿り、藤沢さくらという名前に変わった。


綾美は、無事に看護師になり、学校生活と同じように日々忙しくしていた。


友情のズレは、時間が解決してくれる。私と綾美は学生の時よりも連絡を取り合うようになった。仕事の愚痴や、人間関係の愚痴を聞くことが多かったが私は、それがうらやましかった。しかし、このとき私は、それ以上に幸せを感じていた。


翌年の3月26日。病院に強く、たくましい産声が響いた。女の子だ。


さくらと彼は、手を強く握りしめながら喜んだ。


「ねえ、和義さん。春って名前が良い。春がいれば私は咲ける。桜が咲けるの。この子がいれば、この子とあなたがいれば私は何でも良いの。」


「いいね!とても良い名前だ。さくらと春。そうしよう」


彼は、私と春を強く抱きしめ、涙を流した。ずっと、ずっと泣いていた。


お母さん、お父さん、春だよ、孫だよ。


さくらの目にも涙がたまり、彼が強く抱きしめるたびにその涙がこぼれた。


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