第255話 緊急事態発生

「よし、これなら大きさも問題ないだろう」




 そう口にしながら島の中央へと降り立つ。




 【幸芽島】と大きさは大して変わらないが、緩やかな起伏しかない、ほぼ平地だけの島だ。草木もそれほど生えてはいない。だからハッキリ言って超安かった。




 とはいっても1500万はしたが。しかし今となってはそう痛くない出費でもある。


 俺はまたベルゼドアのところへと転移した。




「おお! いきなり現れんなよ! ビックリするだろうが!」




 オレミアが少し大げさに驚いて見せる。




「ベルゼドア、オレミア、今からお前たちを連れてある場所へ転移する。構わないか?」


「ふむ、儂は問題ないわい」


「俺様もいいぜ。どんな場所かワクワクするしな! 強え奴がいたら最高だ!」




 オレミアには悪いが生物が一切いない場所だし、その希望には添えかねるだろう。


 今度はベルゼドアたちと一緒に転移して、先程購入した島へとやってくる。




「――っ!? ほほう、これはこれは……何もないのう」


「んだよココ、マジで誰もいねえじゃねえか」


「その方が都合が良いんだよ。下手に誰かいたら衝突しかねねえしな」


「俺様はそっちの方が良いんだけどよぉ」


「悪いが喧嘩相手は自分で探してくれ。ベルゼドア、ここで問題ないか?」


「ふむ……海が近いのう。確かに儂ら以外誰もおらぬようじゃが、穏やかでのんびりと過ごせそうじゃわい」




 どうやらお気に召してくれたようだ。




 ここならおいそれと誰かがやってくることもないだろうし、仮に侵食が始まっても、被害は少なくて済む。海に棲息している者たちには申し訳ないが。




「ボーチよ、この島は儂が自由にして良いのじゃな?」


「ん? まあ……問題ないぞ」


「うむ。では……」




 すると荒地に近かった平地が、どんどん草木が生えていき緑豊かに変貌していく。




 瞬く間に数千坪とある島一帯をジャングルと化してしまった。




 す、すげえな……。自分の意思でジャングル化させたらこんなに早えのかよ。




 もしこの力を街中で使われていたら、日本はそれこそ数日で大森林大国として生まれ変わってしまっていただろう。




 あっという間に地形ごと変えてしまうほどの能力。さすがはSランクモンスターである。これで半分の力しか持ち得ていないとか反則過ぎる。




「これで良かろう。落ち着いたわい」


「ジジイの島……つまりは俺の島ってことでもあるよな! じゃあさっそくカザだっけか! 俺とバトろうぜ! ここなら存分に暴れても良いだろうしな!」


「拙者は構わぬでござるが、大将?」


「カザが良いなら別に好きにすればいい。ベルゼドアはいいのか?」


「なぁに、森が破壊されてもすぐにまた再生させられるしのう」




 何とも便利な能力だことで。




「じゃあカザ、お前には一応これを渡しておく」




 そう言って、彼には《テレポートクリスタル》を含め、最低限致命傷を防げるようなアイテムを渡しておく。これで最悪死ぬことはない。




「俺たちは小百合さんとこに戻る。一応ソルもここに置いておくからな。ソル、何かあったらすぐに報せてくれ」


「お任せあれなのです!」




 ビシッと可愛らしく敬礼をするソル。




「ほらほら、何してんだよカザ! 早くやろうぜ!」


「どうやら向こうは待ちかねているようでござるから行くでござるよ」




 そうしてソルとカザと別れ、俺は鳥本健太郎の姿になると、『乙女新生教』の拠点へと戻ることにした。




 しかし自室に直接戻ると、鳥本健太郎に扮した《コピードール》以外の誰かと接触するかもしれない。一応俺が帰るまで誰も招き入れるなとは言っているが、強引な連中もいるので、俺は自室にあるクローゼットの中に転移することにした。




 当然シキは俺の影の中に潜んでいるし、クローゼットもそこそこ大きいので俺一人くらいは軽く隠れられるのだ。


 そうしてクローゼットの中に飛んで、部屋の様子を見ることにした。 




 ……誰もいない?




 《コピードール》には万が一のために、あまり部屋から外出しないように指示しているので違和感を覚えた。


 何せ強いショックを与えられたら人形に戻ってしまうからだ。




 するとその直後、銃声が聞こえてきた。




 何だ? 銃声?




 しかも外から悲鳴や怒号などが飛び交い、明らかに異常事態が発生していることが分かる。




 一体何が起こってるんだ?




 俺はすぐさまクローゼットから出て、窓から外を確認する。


 そして視界に飛び込んできた光景にギョッとなった。




 銃を持った男たちが攻め入り、信者たちに向けて発砲していたのである。


 信者たちも武器を手にして応戦しているが、すでに多くの死者が出ていて辺りは地獄絵図になっていた。




「どういうことだ……何だあの連中?」


「殿、こちらに誰かが向かってくる気配があります」


「何?」




 俺は壁際に身を潜めて様子を見ていると、扉を勢い良く蹴破った男が一人、銃を構えて入ってきた。




「……あん? 誰もいねえのか? ちっ、ここは外れだったのかよ」




 俺はちょうど良いと思い、シキに命令をして男を制することにした。しかし意識は奪わないように注意してだ。


 シキは影から飛び出すと、即座に男の背後に周り押し倒して制圧する。




「がはっ……な、何だぁぁっ!?」




 俺は困惑している男を無視し、とりあえず扉を閉めて、シキに男をさらに奥へ引きずり込むように指示する。




 そして男の身動きを奪ったまま、俺はコイツに質問をすることにした。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る