第248話 逆襲に向けて
「シキ、《エリクシル・ミニ》だ。これを飲めば腕も再生できるはずだ」
「申し訳ありませぬ。このような無様な姿をお見せして」
「そんなこといいからさっさと飲め」
シキに《エリクシル・ミニ》を飲ませると、失ったはずの右腕も再生して顔色も良くなった。その様子を見て、俺はホッと息を吐く。
「シキ、どうやってあの場から逃れたのか聞いてもいいか? 影に潜んだって言ってたが」
「はい。殿の仰る通り、あの場には障害物などなく、それがしが潜り込めるような影はありませんでした。……しかし閃光に飲まれるギリギリで、ある影の存在に気づいたのです」
「影? どこにそんなものが……?」
「――《ジェットブック》です」
「……!? そっか……そういうことだったのか」
ピンときた。《ジェットブック》が浮上した際に、その直下にできた影に身を潜ませたということだ。
しかしその際に、完全には閃光をかわせずに右腕を持って行かれた。
「あと少し遅ければ、それがしはここにいなかったでしょう」
「だったらもっと早く出て来てくれよ。心配したんだぞ」
「すみませぬ。攻撃を受けたショックで身体がなかなか言うことを聞いてはくれませんでした」
それもそうか。あれだけの大怪我を負ったのだ。その衝撃は凄まじかったはずだ。
「でも……良かった」
「……殿?」
「お前が無事で本当に良かった。……悪かったな、俺の判断の甘さが招いたことだ」
「そのような! 頭をお上げください! 殿はいつも我々『使い魔』のことを気にかけてくださります! 本当なら奴隷のような扱いをされてもおかしくないというのに!」
「シキ……」
「それがしだけではないです。ソル殿やイズ殿、それにカザ殿も殿のお傍に居られるだけで幸せなのです。ですから……我々のせいで心を痛めるのは止めてください」
「……いや、それはできねえ」
「……と、殿?」
「俺はもう……お前らを家族だって思ってる。だからいなくなったら嫌だし……辛い。ここが……痛いんだ」
ギュッと服の上から俺は自分の胸を掴む。
ソルを購入した時、最初は役立つペットのような感覚だった。だが一緒に過ごすことで、ソルへの接し方もまた変わっていった。
そしてシキが来て、イズやカザも仲間になった。皆が俺のために尽力してくれる。その姿を見ているだけで、俺もまたコイツらのために何かをしてやりたいと思うようになったのだ。
気づけばそれはもう家族に対しての気持ちと同じだった。
「だから失うのはもうたくさんだ。……次は絶対に失敗しねえ」
「殿……っ!? ……そのお気持ちだけで胸がいっぱいです。それがしは……それがしは誠に…………あなたの『使い魔』となれて嬉しゅうございます!」
するとシキが俺に向かって土下座をしてきた。
「ですから今後とも、この命ある限り、あなた様を守らせてください」
「……ああ、頼む。俺もお前らを支えるからな」
主従の関係は変わることはないだろう。しかしそれでもこの繋がりはただの主従で完結してはいない。
互いに支え合う。そこには確かに熱い感情が込められている。そしてそれはソルたち他の『使い魔』もまた同じだ。
だから絶対に失いたくない。自分のせいで彼らを死なせることなどあってはならない。
「殿、これからどうされますか?」
やはりSランクモンスターを相手にするのは生半可なことではないことを痛感した。ベルゼドアと対話できたのは、本当に運が良かっただけのようだ。
このままオレミアを放置し逃げることだってできる。生存率で考えるならば、それが正しい選択だろう。しかしこのまま終わるのもまた……納得できない。
奴にはシキを傷つけられた仕返しもしたい。
「……お前ら、集まってくれ」
俺の言葉に三人が従ってくれる。
「今度は失敗しねえ。キッチリ奴に借りを返した上に、オレミアも救い出してみせる」
「で、でもご主人、海中からもダメだし、空からもダメ。どうするです?」
不安そうにソルが尋ねてくる。
「安心しろ。俺には《ショップ》スキルがある。今度は準備万端で挑む。奴に……ガラフェゴルンに目にものを見せてやるよ」
俺は〝SHOP〟を開いて、ソルたちに作戦を告げる。
「――さあ、逆襲だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます