『ショップ』スキルさえあれば、ダンジョン化した世界でも楽勝だ ～迫害された少年の最強ざまぁライフ～

第222話 同盟締結

「そういや戦いっていえば崩原、アイツはどうなんだ？　十分に戦力になるはずだろ？」

「アイツ？」

「虎門シイナのことだ」

「あー……けどアイツは『ダンジョン攻略請負人』だしなぁ。戦争に参加してくれるとは思えねえし」

　いえいえ、金さえガッツリ払ってくれれば参加しますとも。

　ただ今回ばかりは、鳥本として動きたいから、虎門を使えないのだ。《コピードール》は強さまで再現することはできないから。

「おい鳥本、お前ならアイツとコンタクト取れるんじゃねえのか？」

「残念ながら彼女は今、この街にはいませんよ。少し前に地方に行くと言って出かけていきましたから」

「マジかそれ。だから最近あんま噂を聞かなかったのか」

　実際に地方のダンジョン攻略をしていたし、この街では活動は行っていなかった。

「アイツがいればヤクザどもも目じゃねえんだけどな」

　軽く舌打ちをしながら崩原が愚痴のように零す。

「虎門シイナ……聞いたことがあります。確か『袴姿の刀使い』という名の見目麗しき女性ですね？　確かたった一人で多くのダンジョンを攻略し続けている者と」

「ああ、とんでもねえ奴だぜ。ここにいる全員を敵に回しても、多分奴なら十分に対抗できるだろうよ」

「！　それほど……ですか？」

　驚きながらも、小百合さんは崩原ではなく俺の方を見てきた。これは俺に説明してほしいということだろう。というよりも単純に信頼の差か。

「崩原さんの言う通りですよ、小百合さん。虎門さんを敵に回すということは破滅を意味します」

「っ……鳥本さんがそう言うのでしたら真実なのでしょうね。しかし人間……なんですよね？」

「本人は人間ですよ。ただ……彼女ももちろん強いのですが、それ以上に彼女が引き連れている者たちが規格外なんです」

「引き連れている者たち……ですか？」

「ええ。彼女も俺と同じ特別な一族の出で、少々変わった能力を持っているんです。それが……モンスターを使役することができる能力です」

「モ、モンスターを！？」

　小百合さんだけじゃなく、信者たちもギョッとしている。大鷹さんは、崩原からすでに話を聞いていたのか驚いていない様子だ。

「その引き連れているモンスターが厄介でしてね。う～ん、恐らくですがその気になれば、ここにいる者たちを一分ほどで全滅させることくらいは簡単なんじゃないでしょうか」

　ただその俺の発言に、異を唱えたのはシキとカザだった。

〝殿、お言葉ですが、このような者たちならば一分もかかりませぬ〟

〝拙者も同じく。シキ殿と二人ならば十秒とかからないでござるよ〟

　一応攻撃系のスキル持ちである崩原もいるが、彼らにとっては物の数ではないようだ。

　しかし……。

〝おいおい、ここにいる者たちってことは俺も含まれてんだぞ？　こちとら一分くらいは耐えられるくらいの策はあるし〟

〝な、何と……殿まで含まれておったとは……！　しかしそれでは一分どころか、我らの敗北かと〟

〝うむ。拙者らは大将に手なんか出せんでござるからな。組手ならまだしも、殺し合いということなら、逆に我らの方が敗北を喫してしまうでござろう〟

　俺は好き勝手攻撃できるが、シキたちは俺に手を出せない。なら様々なファンタジーアイテムを駆使すれば、いずれは二人を撃破できることも事実。

　ただ俺を殺すのではなく、気絶、あるいは戦闘不能状態にするくらいなら、この二人がいれば一分……もっと短いかもしれないが全然可能だろう。

　俺だって黙ってやられるつもりはないし、一応コイツらのような強者と戦うことになった時の対策だってあるから、多少は戦闘時間を長引かせるくらいはできる……と思う。

　まあ最悪相討ちにはできるかもなぁ。

　ここで核爆弾を使用すれば、だが。何かそれでもシキたちは生き延びそうなので恐ろしいものだけれど。

「もしかして鳥本さんは、そういったその……特別な力を持つ方たちとの繋がりがあるのですか？」

「まあ、こちとら日本中を旅している流浪人ですからね。出会いはいろいろあります。中には俺や虎門さんのような特異な能力を持つ人もいましたが」

　しかし連絡を取る手段はないと言っておいた。携帯電話やネットが使えれば可能だったが、逆に使えなくなっていることで、こちらにとって都合の良い設定を作ることができた。

「ですから今回ばかりは虎門さんのことは諦めてください。なぁに、ここにおられる三つの勢力が一丸となれば、たかがヤクザなんて怖くありませんよ。それにかの武器商人さんも味方にいるとなれば尚更、です」

　無論『宝仙組』に武器を売りはしない。俺としても小百合さんたちに勝ってもらった方が都合が良いから。

「そうだな。俺らも非道な奴らをこの街から一掃できんなら文句はねえ。旦那、アンタらはどうだ？」

「ああ。だが事が終わり次第、『乙女新生教』とは改めて話し合いたい。それで構わないのであれば力を貸す」

　崩原と大鷹さんは乗り気のようだ。あとは小百合さんの決定だけ。

　皆が小百合さんに視線を向ける中、静かに彼女が口を開く。

「私どもも守りたいものがあります。そのために同盟が必要であれば是非もありません」

　俺はその言葉を聞いて、仲介役として宣言することにする。

「ではここに、『平和の使徒』、『イノチシラズ』、『乙女新生教』の短期的ではありますが同盟が締結されました」

　形だけだろうが、それでもここに集まった者たちが拍手をして歓迎ムードを作る。

「じゃあさっそく旦那、武器の調達は任せてもいいか？」

「ああ、急いだ方が良いだろうな。下手をすれば一日二日で攻めてくるかもしれんしな」

　そう言いながら大鷹さんが懐から取り出したのは一つの手鏡だった。