18話
7月29日。
「良い
……
……そんなことより、赤井って人はどうなるんですか!? 死刑ですよね? 私の彼を奪ったんですよ! 刑事さん。あの人を殺してくださいっ! じゃないと私……私が……」
笠原真子。20歳。女性。白木学院大学経済学部経営学科二年生。
※感情的状況のため、不明瞭な箇所多々あり。
◆
7月21日。
「興味半分で、後からつけて行ったんスよ。……はい、大友にも内緒でした。あいつ真子ちゃんっていう可愛らしい彼女がいるのに。面白さもありましたけど、真子ちゃんが可哀想だったから。だから、もし大友が半端なことしたら俺がガツンと言ってやろうって気持ちもあったんスよ。……ええ、もちろん小さなケンカはよくありましたけど、大友と真子ちゃんは順調でしたよ。
……手紙っスか? ええ、俺も読みましたよ、大友のギターケースに入ってました。確かにこの手紙でした。……スタジオです。毎週水曜日の昼間は、俺たちのバンドがスタジオを使うんです。俺も大友と同じバンドに入ってて、あいつがギターで俺はドラムなんですけど、その日はテスト前だったから、俺と大友の2人しかスタジオに居なかったんです。……いつもは4人です。
……1回だけ、赤井って奴が練習中にスタジオに来ました。ゴミ回収はとっくに終わってて、今日は妙な時間に来たなって思いました。多分、その時に入れたんじゃないかな?
……事件の現場ですか? 違う刑事さんに話したまんまッスけど、大友が駐車場に呼び出されて、俺は階段脇から隠れて見てました。……多分50メートルくらい。分かんないスけど。……はい。急に犯人が飛び出してきて、大友にスタンガン打ったんですよ。俺もびっくりして、でも1回目は大友が尻餅ついただけで、そっから取っ組み合いになったから、俺も慌てて駆け寄りました。でも遅かったんです。大友のやつ、泡吹いて倒れてて、頭から血も出てました。でも、犯人は動かなくなった大友にもずっと当てて続けてたんです。……何をって、スタンガンですよ! 俺が止めるまでずっと! たぶん、犯人は頭狂ってたんじゃないですか? コーヒー溢しの犯人も、映研の倉庫荒らしたのもあいつなんでしょ? きっと頭のネジの1本や2本、外れたんですよ」
箕田謙一。21歳。男性。白木学院大学法学部政治学科三年生。
本件の通報者、ならびに第一発見兼目撃者。
◆
7月23日。
「気味の悪い学生さんでしたよ。……ああ、学生じゃないんですよね。
……ええ、毎週水曜日の夕方は、決まって来店しました。いつも奥の席にひとりで座って、ブツブツ独り言を粒やいたり、笑ったりしてたんですね。まるで見えない誰かと向かい合って話しているみたいに。
……他に変わったこと? うーん。あ、そうそう、灰皿も2つ出せと決まって言うんです。
……大友くんなら知ってますよ。ええ、彼女の真子ちゃんも。彼イケメンだし。真子ちゃんも本当に可哀想ですよね。金髪でしたけど礼儀正しくて、よく笑う子で、ハスキーな声も可愛くて。お似合いアベックでした。あ、今はアベックなんて言い方はしないのかしら? よくうちの店に来てくれてました。私、顔覚えは良い方だから。
……そう言えば、事件があった前の週の水曜日に大友君もうちに来ましたね。……ええ、赤井さんも居ましたよ。……うん、ひとりで。……赤井さんの方が先だったかしら? そうよ、後から大友君が来ました。思い出しました。確かにそうでした。……2人が直接話していませんでしたけど、赤井さんは大友君が来てからずっと彼の方を睨んでました。……理由なんて分かりませんよ。私、その時は赤井さんも白学の学生だと思ってましたから、学校で何かあったのかくらいにしか。……はい? ええ、大友さんは赤井さんの方なんて見向きもしてませんでした。まるで他人みたい。
……
木下知鶴。61歳。女性。喫茶メビウスオーナー。
◆
7月22日。
「仕事熱心な子でしたよ。他のアルバイターたちと違って、赤井君はきちんと回収も続けてたし。……みんな初めはそうなんですけど、ほら、慣れと言うか。みんな気付くんです。『これはサボってもバレない仕事だな』って。……はい、赤井君は毎週水曜日の勤務でした。……欠かさず、朝と夕方に学生会館のゴミを回収する。赤井君くらいでしたよ、全部のゴミ箱の中身を律儀に回収していたのは。
……変わったことですか? うーん、正直あんまり話はしませんでしたから。赤井君ってどこか掴み所のないキャラだったんです。あ! でも、桃口杏子の話には食い付いてたなぁ。……ええ、アイドルの。僕もそうなんですけど、赤井君も好きそうでした。直接は聞いてませんが。そんな感じがしたんです。
……事件のあった日ですか? 一昨日の20日ですよね? ……はい、水曜日。彼は普通に帰ったと思いますよ。……その日はイタズラは……あ! 違う。赤井君、確かその日は『イタズラの後片付けをします』と言って抜け出したんだった。……17時半ごろだったかな。……いつもはそうなんですけど、その日は特に学生からクレームがあって抜け出した訳ではなかったと思います。彼が自らイタズラの片付けをするからと言って、待合室から出ていきました。
そう言えば、被害にあった学生の彼女、笠原さんでしたっけ? ……あ、いえ、特に関係ないかもしれないですけど、アイドルの桃口杏子に似ている気がして。……ええ、なんか雰囲気がね。本当に関係ない話ですみません」
金子智充。43歳。男性。人材派遣サービス結カンパニー勤務。勤務地は白木学院大学学生会館。
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