第38話 ワガママ姫と貧乏王子

姫と黒崎二人…… 姫は気まずい気持ちになっていました。


「 もう関係ないですわ! だって、私の身分分かったでしょ!? 私はあの傲慢な金持ちの娘、白鳥龍平しらとりりゅうべいの娘なんだから。

黒崎君も嫌いって言ってたんだから、ほっといてくれない?? 」


姫は辛かった想いを全てぶつけました。

当然ですが、黒崎を怒ってなんかいませんでした。

ただ、色々ダメになりこれ以上傷つくくらいなら、先に終わらせようとしていたのです。


「 本当にごめんね…… 実は姫のお父さんを……

嫌、お金持ちを勘違いしてたんだ。

僕は家が貧乏だから、小さいときから貧乏バカにされたり、高級な物買った人の自慢に苦しんでいたんだ。 だからって父さんを恨んだ事はないよ?

父さんが大好きで誰よりも頑張っていることを、僕は知っていたから!

だから、僕はお金持ちを恨むしかなかったんだ……

子供だったから、仕方ないんだよね。

でも、生きてきてそんな差別だけじゃないって思えたんだ!

君のお父さんも、凄く優しくて龍平さんの気持ちに気付かなかっただけなんだよ? 本当に反省しているよ。 ごめんね……。 さっきお話をして、素晴らしいお父さんなんだなぁって思ったよ。」


黒崎は今まで生きてきた話、弱さや苦悩を全て話すのでした。 それが、一番姫に自分を分かってもらえると思ったのだから。


「 僕の好きな人知ってるかい?

その子はね、ちょっとワガママでたまに勝手な事をしたり、とっても不器用でいつも一生懸命。

誰にでも本当に優しく出来る最高な人なんだよ!

それとね、常識知らずな所も最高なんだよ! 」


姫は黙って聞いていました。


( 何よ…… そんな黒崎君に想われてる人話なんか聞きたく無かったですわ。 沢山、見てもらえてるんだもん。 それに比べて私の事なんか……。)


姫は黒崎の話を聞いていると、辛い気持ちになるだけでした。


「 僕の好きな人から貰った宝物見せてあげようか? 」


黒崎はカバンの中にある財布から、大事に折り畳んである一枚の紙を見せました。

その紙は姫には見に覚えのある紙でした。

だって、その紙はお寿司屋さんの人に感謝を伝える為に書いた、ただの一枚の紙なのです。


「 えっ? ……それ何で黒崎君が持ってるの?」


「 僕は時給が良いから、駅前にあるお寿司屋でバイトしてるんだよ。 君からの優しい手紙、凄く、凄く嬉しいかったんだ! 飲食店の裏で働いてる人に感謝する人はほとんどいないんだよ?

僕は本当に嬉しくて、その日から仕事が楽しくなったんだよ。 この手紙は君にとっては、ただの紙でも僕にとっては大切な宝物なんだ。

改めて言わせてくれるかい? 本当にありがとう。」


姫は驚きを隠せませんでした。 自分は本当に感謝を伝えたくて書いた、一枚の紙がこんなにも喜んでもらえていた事に、驚くばかりでした。


「 それとね。 初めて会った日。

偶然見つけたんじゃないんだよ? いつもの様にホットドッグを買いに行ったら、その店には似合わないくらいの綺麗な人が居て、遠くから見つめていたんだよ。 そしたら、ホットドッグも買わず何処かへ行くのが見えたから追いかけて行ったんだよ。」


最初から出会った瞬間に、黒崎は一目惚れしていたのです。


「 姫がお金持ちに見えたから、どうにか格好つけたくて助けられないか色々頑張ったんだよ?

僕にはこれしか、君の様なお金持ちに見てもらえるチャンスってないから…… 。

だから、僕は会ったその日から姫が好きだったんだ。 でも、身分が違うから自分の中ではそう思わないようにしてたけど……。」


姫は黒崎の話を聞きながら、涙が止まらないくらい出ていました。 全然見て貰えてないと思っていたのに、最初からずっと見ていてくれた事に嬉しくて涙が出てしまうのでした。


「 だから、もっと。 ……もっと、沢山姫と一緒に居たいんだ! 学校で変な目で見られたり、先生に酷い対応されても大丈夫!

僕が絶対隣に居て守るから!! だから…… 一緒に学校に行こう? 」


嬉しくて、姫はいきなり抱きつきました。

情景反射だから仕方がありません。


「 うん……。 絶対に行く! 私も黒崎君ともっと、もっと沢山あの学校に行きたいの。」


二人は日が暮れる中、公園で話していると


ぐぅ〜〜っ!


姫のお腹の音が鳴ってしまいました。


「 食いしん坊さんだなぁ笑。 一緒にホットドッグ食べに行こうか?」


「 うん! でも、私が奢るね。 あそこは私の行きつけだから、食べ放題になってるの♪」


もうお金持ちがバレてしまったので、隠さずにいられました。

姫は少し前にホットドッグを食べた事は内緒にしました。 同じ物食べると思うと、黒崎は気を使ってしまうからです。 でも、姫はホットドッグが食べたかったのです。 だって、今なら寂しく一人で食べるホットドッグより美味しいホットドッグが食べられるのだから。


二人は公園を出てホットドッグ屋さんに行きました。 いつもと違うのは、手を繋いでいる事だけでした。姫も黒崎も幸せな気分で、人相の悪いお店に行きました。


その頃、光達はリムジンが故障した為に立ち往生していました。


「 旦那様。 申し訳ありません。 車の故障によりもう少ししないと動けません……。」


「 うむ。 早くしろ! 」


「 かしこまりました。 直ちに治します。」


この車の故障は偶然なのでしょうか?

やっぱり違います。 セバスの仕業でした。


「 お嬢様。 少ししか時間を稼げませんが、二人の時間をお楽しみ下さいませ。 黒崎様。 お嬢様を任せましたよ? 」


セバスは二人を陰ながら応援していました。

なので、どうにか二人だけにしてあげたかったのでした。 セバスも姫が大好きなのですから。


リムジンの中では、光とハラケンは話をしていました。



「 はぁ。 タイミング悪いわね。 姫見つかるかなぁ? 」


「 翼も探してるんだから大丈夫だよ!

あいつはいつも、迷子の姫見つけてるんだもん。」


「 あっ。 言われてみたらそうよね。」


光も納得していた。 姫を癒せるのは黒崎だと知ってるのだから。


「 タイミング悪いんだけどさぁ…… 今度、一緒に食事に行かない? 」


いきなりのハラケンのお誘い!?

光の対応は……


「 タイミング最悪ね。 こんなときに。

まぁあんたの奢りなら、考えなくもないわよ?

姫を一生懸命探していたお礼なんだからね?

勘違いしないでよ? 後、この事は二人だけの秘密だからね?」


恥ずかしそうに、光は答えました。

ハラケンは嬉しくてたまりませんでした。


「 うん! 誰にも言わないよ。 早くスマホでお店探さないと♪ 」


ハラケンも嬉しくて、興奮しっぱなしでした。

内心、光も勇気を出して誘ってきたハラケンの気持ちがとっても嬉しかったのでした。

二人の関係が、次のステップに行くのはいつになるでしょうか?


車の外に居た龍平は、GPSにより姫が黒崎と出会えた事に気付きました。 動きだけでなんとなく分かったのです。


「 黒崎君。 良く見つけられたね。 ありがとう。」


「 本当に子離れ出来ないのね。 姫ちゃんが大好きなんだから。 黒崎君とのデートは許すの? 」


百合が聞くと


「 まずは、私の家で会食をしてからだ。

じゃないと、安心出来ないからな。

おっほっほい!」


龍平の独特の笑い声が響きました。



「 仕方ないから光ちゃんと、あのデクの棒連れて外食でもするか? 今日だけは、二人にしてやろう。」


「 優しいのね。 さすがは、私の愛した人ね。」


白鳥夫婦も幸せな気持ちになっていました。

自分の子供が、どんどん成長し、色んな人に愛されていたのだから。


それぞれ、この一日を忘れる事は無いでしょう。


次回は最高のフィナーレ。

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