第32話 失恋からの脱出

姫は失恋したと思い、落胆していました。 黒崎の想いを知り、ショックを隠しきれないでいました。 それでも、周りにバレないようにいつも通りの自分で居るように必死でした。


ですが、それに気付く者も居ました。 親友の光でした。 流石さすがは、姫大好きっ子でした。


( 姫はどうしたのかしら? 平然を装う様にしているが、ウチの目は誤魔化せないわよ! 何故あんなに、笑って誤魔化そうとするのかしら? 何かあったのかしら? )


光は姫の事が大好きで、微妙な仕草や言動、いつもより無駄に明るく装う姿に直ぐに気付いたのでした。 でも、隠していると言う事は何かしら言いたくない理由があるから、聞こうにも聞けない状況でした。

原因は何となくだが、黒崎だと薄々感じていた。 どうしたものか……


姫の傷付いた理由を知り、どうにか慰めたいのでした。 人によっては、お節介で面倒臭く感じますが、これが光の良いところでもあるのでした。 授業が始まり、姫の事が気掛かりで集中出来ないでいると、あることに気付く。 健の存在だ。


( 待てよ。もしかしたら、アイツはいつも姫を気にしてるから、今日の一部始終を見ているかも知れない…… 休み時間に吐かせてやる! )


光は、健からどうにか姫の今日の出来事を聞き、傷付いた理由を探ろうと思うのでした。 授業が終わり、健の元へ。 健は節約して、ウィッグを買って坊主を隠していた。安物のウィッグの為、逆に目立ってしまうのは本人は知らない。


「 健。 ちょっと良いかしら? 」


「 ん? 告白かい? ちょっと間に合ってるよ笑。 」


相変わらずおごりまくる。 光は全く相手にせずに、健を連れて教室を後にした。光は姫にバレない所に連れて行き、直ぐに尋問に移る。


「 ねぇ? 聞きたい事あるんだけど、朝は姫何かしてた? 」


「 姫? いつも通り普通かな。 皆と喋ったりして、ちょっと元気過ぎる所が気になるが…… 」


健もストーカーなだけあり、姫の変化に少しですが気付いていました。


「 分からないわね。 じゃあ、黒崎くんと話してるとこ見た? 」


「 翼と? 朝挨拶して軽く話してたかな。」


やっぱり話していた様でした。 内容が気になる……


「 内容はわかんないの?? 」


「 内容? たしか、バイト先に気になるお客さんが居るって、翼が言ってたかな?」


まさに、それが理由だと光は気付いた。 気になる人が=《イコール》好きな人なのだから。 失恋した気持ちに陥っている事を悟ったのでした。


「 分かったわ。 行って良し! 」


に落ちない様子でしたが、今はそれ所ではなかったのでした。 光は親友の為に、何が出来るか考えました。


時間が過ぎて、お昼の時間に。 いつもの様に、お弁当を食べる事に。 すずめを入れ、三人で食べる準備をする。 でも、光は引っ掛かりがありモヤモヤが残ってしまう。


「 今日はお弁当に、おにぎり作って来たんですわ♪ 皆も食べて食べて。」


姫はここ最近は、毎日弁当を作って来ている。 成長の表れを感じる。


「 どれどれ、採点してやるぞ。 いただきまぁす。 もぐもぐ…… ちょっと、塩入れ過ぎ笑。 」


すずめは何も知らないので、お気楽にお弁当を楽しんでいました。 姫は恥ずかしいそうに、笑っていました。 その笑顔には、少し悲しさが込められていた。 光は気付きなから、淡々たんたんとお弁当を食べていました。


「 光どうしたの? 元気ない? 」


姫は光がいつもと様子が違う事に、心配になってしまう。 光は、咄嗟とっさに誤魔化す事にしました。


「 全然大したことないよ! パパがハゲ欠けてて、老化を感じて悲しくてね笑 」


酷い言い訳をした。 こんな嘘に引っかかるのか、心配になるのでした。


「 光のパパさん、そんなにハゲてたかしら? 全然気にしなくても良いのにね♪ 見た目も全然格好いいし、優しいし良いところばっかりなのに。」


姫は光の嘘に、騙されていました。 姫は単純なのを再確認する光。


「 そんな事? 気にしなくて良いのにね。」


すずめも騙されていました。 何とか乗り切り、またお弁当を食べ始める。 すると、会話の内容が何故か分からないがお肉の話に。


「 姫はお肉知らな過ぎよ。 ステーキはやっぱり、サーロインが一番よ♪」


すずめはお肉が大好き。 お肉博士なのです。 姫は自分が食べてるお肉の部位を、全然知らな過ぎていたのですずめにお説教されていました。


「 お肉かぁ。家ではバランス良く食べてるから、お肉に強い思い入れはないのかも笑」


家では、コックの辰巳たつみがバランスを気にして、最高な料理を提供していました。


「 ダメダメねぇ。 学校の近くにある、ステーキ川崎にも行った事ないんでしょ? 」


「 全然ありませんわ…… 」


姫は、基本は外食をしません。 お金持ちなので、チェーン店とは無縁な生活。


( ん? 姫はチェーン店行かないに決まってるわよね…… これだ!! )


光は閃きました。 すずめと姫の会話に、ヒントを得て元気にする良いアイディアを思いついたのでした。


「 じゃあ、ステーキ川崎行かない? あそこのジャンボステーキ食べてみたかったのよね♪ 時間制限内に食べれば、無料になるし。 三人で行こうよ♪ 姫は初めてなんだし! 」


ステーキ川崎に行けば盛り上がり、辛いことを少しでも忘れられるかも知れないと、考えた結果です。 良いアイディアでした。


「 行く行く! 私のお肉の知識を教えてあげるわよ♪ バイトも休みだし。 姫はどうする? 」


姫が来なければ、この作戦はお開き。 姫が来ないと、ただのすずめのお肉パーティーになってしまいます。 どうなるか?


「 そうねぇ…… 予定ないから行こうかなぁ? 楽しみですわ♪ 」


やっぱり元気のない様子。 でも大丈夫。 ここからは光のお節介な、励ましパーティーが始まるのだから。


「 よしっ。じゃあ、放課後行こう。 食いまくるわよ♪ 姫も楽しみにしてなさい? 」


光は姫の失恋をした気持ちを、忘れさせる為に全力で楽しませる事に。 三人は放課後にステーキ川崎へ行く事になりました。


その頃、健は格好つけながらパンを食べていました。 腑に落ちない事があり、考えていました。 さっきの光の事でした。 光からの尋問に答えたが、どんな意味があったのか考えていた。


( ん~分からん。 翼との会話が何なんだ? もしかしたら、万が一。 いや、もしかして翼に恋していたのか? そんな筈はないが。)


健は抜けてる所は多いが、勘が鋭かったのだ。 姫が転校した理由や、庶民的な高校に来た理由。 翼に一目惚れしてした行動なら、全てが合致する点が多かった。


( そう言うことか…… と言う事は、失恋したって事なのか? なら、ワンチャン《一度のチャンス》あるんじゃないのか? )


また良からぬ事を思いつき、何か企む翼でした。


放課後になり、三人は近くのステーキ川崎に到着していた。 チェーン店でも評価は高く、農場との独自の契約をしていて、美味しくリーズナブルな価格で、提供出来るのがこのお店の凄い所です。 入店すると、お肉の美味しい香りが漂って来る。 姫は初めてのステーキ店の為か、圧倒されていました。


「 凄い…… これが、すずめの舌を唸らせる実力のお店なのね。 納得。」


姫は席に着くなりキョロキョロしてしまう。 すずめは経験者の貫禄を見せ付ける。


「 甘いわね姫。 チョコよりも甘々よ。びっくりするのはこれからよ! 」


すずめは指を鳴らせると、直ぐに店員さんが駆け寄って来た。 まるで召使いの様な扱いでした。 すずめのデカイ態度は、ここでだけ発揮されるのでした。


すずめ様。 いつもご利用ありがとうございます。 今日はどうなさいますか? 」


店員さんもすずめにちゃんと、大人な対応をしてくれている。 本当に常連様の様でした。


「 今日のイチオシは何かしら? 」


「 今日は、美味しいサーロインとフィレが御座いますがどうなさいますか? 」


すずめら少し考えて、直ぐに決断する。 すずめはお肉の事になると、決断が早い。


「 じゃあ、私とこの何も知らないお嬢さんにサーロイン頂戴。 グラムは200のミディアムレアで、貰えるかしら?」


「 かしこまりました。」


いつの間にか、姫のお肉を決めてしまいました。 強引な、お肉博士でした。


「 ウチはねぇ、ジャンボステーキレディース用にしようかしら♪ 」


光の発言により、店員の笑顔が消える……


「 今……なんと!? 」


光はジャンボステーキを食べきれるのか?

ちなみに、本来の目的である姫の事は慰められるのでしょうか?

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