第31話 すれ違いと悲しみ

3人はお腹を空かして居たので、沢山食べれそうでした。 思春期の胃袋は、計り知れないのでした。

回転寿司ターザンは、大人気の為今日は特に混雑していて、店員さんも大変そう……

3人は流れてくるお寿司を、取り始める。


「 マグロにしよう♪ 」


「 私は、イクラ! 」


光とすずめが、食べたいお寿司を取り始めた。 優柔不断だと、選ぶのが遅くて食事を始められない…… 姫はどれにしようか、悩むのでした。 沢山ありすぎて、迷うのも仕方ありませんでした。


「 ん~、やっぱり最初はカッパさんにしよ

うからし♪ 」


姫は大好きな、かっぱ巻きを手に取る。 前回の経験で、かっぱ巻きが大好きになってます。 皆は、直ぐにパクっ!と口に頬張り、美味しく食べる。


「 本当、もぐもぐ。 姫は……かっぱ巻き好

きだよね。 そんな人居ないよ笑。」


光はいつも突っ込んでしまう。 雀も笑って聞いている。 かっぱ巻きの良さが伝わりません…… でも、姫は大好きなのでした。


「 んー、やっぱり可愛いと手に取ってしま

いますわ♪」


姫は可愛い物好き。 大トロとかアワビ、高いものも美味しくて好きなのだが、見た目が一番のようです。


あっという間に、お皿を積み重ね沢山食べるガールズ! 男かと思うくらい食べまくる。 フロアの店員さん達も、段々気になり始める。


「 あの娘達も、凄い食べるわね! 」


「 凄いわね。 あの娘…… 黒崎くんがお礼

を言いたい女の子かしら? 」


黒崎がお礼を言いたいのは、フロアの人は皆知っていたのです。 なので、どうにか合わせてあげたいと思う店員達。

ですが、思うようにはいきません……

今日はフロアもキッチンも忙しいので、出て来れないのです。


そんな事も知らない姫は、どんどん食べ続ける。 モニターでの注文も沢山していた。


「 んーと、茶碗蒸し食べようかしら♪ 」


姫は茶碗蒸しを注文。 皆もそれぞれ食べたいものを注文する。


( ウッホ!ウッホ!注文したお寿司が来るゴリ。ウッホ!ウッホ! )


お寿司屋ターザン特有な音声が流れる。

可愛いゴリラが茶碗蒸しを持ってきてくれる。


「 相変わらず可愛いわ♪ 本当に大好き! 」


姫は回転寿司大好きになっていました。

光とすずめは、黙々と食べ続ける。

光なんかは、ラーメンまで頼み堪能する。


「 ラーメンも美味しい♪ 最高! 」


光もお寿司屋さんを楽しんだ。

すずめも沢山食べながら、笑い合いながら食事を楽しむ。 休みを満喫出来たようだった。


黒崎はキッチンで、大忙しで動き回る。

お寿司屋さんはキッチンも大変で、皿を洗ったり注文されたお寿司を作ったり、大変でした。 時給が高いのが良く分かる……


「 疲れるなぁ…… 忙しい。お持ち帰りも作

らないといけないから大変だぁ。」


黒崎もヘロヘロ。 すると、フロアからおばさんが急いでキッチンに入って来ました。


「 黒ちゃん《黒崎》、アンタがお礼を言い

たいお客さん来たよ。女の子の学生さ

ん。」


おばさんが黒崎に、姫が来たことを教えてくれたのです。ですが、忙しくてフロアに行く暇がありません。どうすれば良いのか……


「 そうなんですか…… おばさん。じゃあ、

お礼だけ言って貰っていいですか?」


黒崎は職場から抜ける事が出来ないので、

せめてお礼だけを伝えてと頼むのでした。

それが今出来る、黒崎の限界の表現でした。


「 黒ちゃん。任せてよ! お礼伝えるね。」


おばさんは駆け足で、客席に向かいました。 それを見る事しか出来ない黒崎でした。


お寿司を沢山食べてお腹いっぱいな3人。

そろそろ帰ろうかと、話していると


「お嬢さん達、この前来てたわよね?

この中でキッチンの人にお礼を言った人っ

ているかしら? 」


姫は手を上げると、おばさんは嬉しいそうに話をかけてきた。


「 あなたね。キッチンの学生さんがね、凄

い嬉しいかったって喜んでたわよ! あり

がとうって伝えてくれって♪ 」


「 本当ですかぁ!? 嬉しい♪ わたく しは働いてる人に、お礼を言われるなんて

初めてですわ♪ じゃあ、またお手紙書く

ので渡して貰うことって出来ますか? 」


姫は一生懸命に手紙を書いて、おばさんに

渡しました。 おばさんは、姫が書いた手紙

を持ってキッチンへ帰って行きました。

姫にはとても嬉しい出来事で、感動してい

ました。今までは、恨まれたり妬まれたりとかはありましたが、感謝されたことなんかありませんでした。まさか、お礼を言ったのが黒崎だったと知ったら、驚きを隠せないであろう…… 光とすずめがニヤニヤしながら、からかってくる。


「 姫~。いつのまにそんな事してたの?

やるねぇ。付き合っちゃいなよ♪ 」


「 光の言う通りよ。羨ましいなぁ♪ 」


光達は、羨ましがるのでした。

モテるのは、誰も悪い気はしません。


「 本当に嬉しい。帰ったら、お父様達に自

慢しましょ♪ 」


いつもよりご機嫌な姫。 幸せ気分♪

姫は鼻歌を歌いながら、お寿司屋さんを出て行きました。


「 ちょっと姫~! お会計忘れてるわよ! 」


いつでもおっちょこちょいな姫でした。

そして、皆で帰りました。


黒崎はと言うと…… まだ仕事をしていた。

おばさんが、姫の手紙を持って来ました。


「 黒ちゃん。

お礼言ったら喜んでたわよ!

しかも、凄い可愛いかったわよ笑。」


黒崎は大喜びでした。 ずっと考えていたので、嬉しくてたまらない気持ちで、いっぱいでした。


「おばさん。ありがとうございます。

本当に可愛いなら、会ってみたかったな

ぁ笑。 」


残念がる黒崎。でも、いつも学校で会っているのです。近くて遠い存在です。

忘れていた、姫の手紙を渡すおばさん。


「 黒ちゃん。手紙書いてくれたわよ!

凄い良いよね♪ 」


「 本当ですか!? ありがとうございま

す。」


黒崎は直ぐに受け取り、仕事をするのでした。 内容が気になる黒崎。 いつもより仕事は長く感じる…… でも、いつも辛い仕事が楽しく感じていました。


仕事は終わり、手紙を読む事に。


( お礼ありがとうございます。私は一生懸命お寿司を作ってくれたので、嬉しくてお礼を書いただけですよ。 大変だと思いますが、頑張って下さいね♪ また来ます♪ )


良い手紙でした。 ですが、名前は書いていませんでした。残念でしたが、また来てくれるのでまた会える事に喜びを感じる黒崎。


( 良い子だなぁ…… 世間知らずで、男みた

いに沢山食べたりとか、本当に可愛いな

ぁ。 早く会ってみたいなぁ♪ どんな子な

んだろ?)


妄想が膨らむばかり。黒崎は手紙の子が

気になって仕方無くなりました。 見たことありませんが、好きになっていました。

黒崎は手紙大切に鞄に入れ帰りました。バイト来る前のイライラは、もう無くなっていました。


次の日、学校に姫が到着すると黒崎は既に来ていました。


「 おはよう! 黒崎くん♪ 」


「あっ。姫、おはよー! 」


姫は黒崎が隣の席なので、毎日のように

いつも挨拶をするのが日課。 姫の楽しみな一つ。 今日は黒崎くんの機嫌が良さそう。

どうしてなのか聞いて見ることに!


「 黒崎くんご機嫌ね。何かあったの? 」


「 ん? 分かるかなぁ? バイト先に常連さ

んが来たんだけど、凄い良い子なんだよ

ね。」


黒崎は本音で全て話していた。 姫は少し疑問が出ていました。 もしかしたら、その子の事が好きなのでは…… ?

勇気を振り絞り、聞く事にする。


「 黒崎くんは、その人が好き? 」


少し考えて口を開く。


「 実は気になってるんだよね笑。

凄い良い子で何か気が合うみたいで。」


姫は撃沈してしまう…… 黒崎が恋をしたと

聞いたら、当たり前である。でも、一切表情に出さずに、返答する。


「 そうなんだね。上手くいくといいね!」


やせ我慢しながら、頑張って返答しました。本当は、泣き出したくなるくらい辛い。

でも、応援したい気持ちもあった。


「 ありがとう。バイト行く途中で、有名な

金持ちに会ってイライラしてたから、凄

い気持ちが楽になったんだよね♪ 」


嫌な予感がする姫…… もしかしたら、自分の家の人ではないだろうか?


「 そうなのかぁ。 金持ちってどんな人? 」


「 なんとかって名字の! んー、なんだろ?

そうだ。なんとか龍平って名前の大金持

ちだよ。 別れてから思い出したんだ。 」


嫌な予感はあるものです。 お父様はどんな事をしてしまったのか?


「 黒崎くん。どんな事をされたの? 」


「大した事じゃないけど、お金持ちには僕

ら一般庶民の気持ちはわからないのか

な? って思って。 正直合わないね笑。 」


とても心が痛かった……

姫は悲しみでいっぱいになってしまいましたが、バレないように愛想笑いを浮かべる。

黒崎はご機嫌なせいなのか、姫の変化には気付く事は出来ませんでした。


神はいつも試練を与えるのでした。















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