第8話 オレンジジュースの代償
お昼をほとんど食べて、水筒のオレンジジュースが最後の一口残っている。
美味しく出来たので王子に飲んでもらいたい……
でも王子は遠くで男子たちとお喋り
していて、声をかけにくい……
「 姫っ。激ウマオレンジジュースもう一杯頂戴♪ 本当に美味しくて♪」
光は高級オレンジの美味さにやられていた。
美味しく作りすぎたか…… (お金の力)
「 …… うん。…… 是非お飲み下さい♪」
歯切れの悪さに光は怪しむ。
姫は優しいから飲んで良いと言ってるけど、なにかある。
恋愛の達人の光の目は誤魔化せなかった。
姫が悲しい眼差しで見ていた人は王子だった。
(…… もしかして黒崎くんに惚れてるのかぁ……。ならウチにお任せを。 )
「 黒崎くんちょっと来てよ。
美味しいオレンジジュースあるのよ。」
いきなり王子を呼ぶ光。
いきなりなことに、凄い慌てる姫。
「どうしたの?? いきなり! 」
爽やかに登場する黒崎。
オレンジジュースに釣られたのかな?
「 姫が初めてお弁当作って来たんだって。
黒崎くんオレンジジュース味見したら? 」
いきなりなんてことを!?
さらに慌てる姫。王子の口に合うかなぁ……
嫌がられないかなぁ……
「本当に? 凄いね。もらってもいいの? 」
凄い目を輝かせ尋ねられるとNOとは
言えない…
「うん…… 口に合うか分からないけど。」
「絶対白鳥さんが一生懸命作ったんだから
美味しいに決まってるよ。 」
優しい。本当に好き♪
じゃあ、水筒を……ない。
あれ? 見当たらない。
「あれ? 水筒何処にいったかしら? 」
姫と光が探しても見当たらない。
すると……
「本当に美味いね。こんなオレンジジュース飲んだら、安いオレンジジュースなんて飲めないよ♪ 」
ハラケンが
「ハラケン。あんた、またこんなふざけた真似して。返しなさいよ! 」
怒る光。無理やり取り返すと、既に空っぽ……
「 あっごめんね。遠くから見てて美味しいそうだったから、一口どうしても飲みたくて。代わりに(マミー)あげるから許して笑。」
私のオレンジジュースが……
黒崎くんに飲んでもらうはずだったのに。
やっと光が重い口を開く。
「 あんたとは…… 絶交。」
冷たい一言。
光は、恋のキューピッドになろうとしてたのに…… だからこそ今回のハラケンには絶望してしまった。
あまりにもモラルが
青ざめるハラケン。
「 えぇ!?オレンジジュース飲んだだけで? ちゃんと返したのに…… 」
「ふざけんな! 折角手作りジュースなのに、あんたのせいで全て終わりよ!!
しかもマミーがお返しってなめてんの?
話かけてくんな! (元)友達!! 」
かなりのお怒りだ。
ハラケンの自分勝手さにはみんな腹が立つのは分かる。
でも、今回は我慢の限界だった。
「…… お仕舞いだ。
…… 全て終わりだ……。」
絶望のあまり涙するハラケン。
クラス中も静まりかえる。ハラケン…
もっと大人になろう。
キーン!コーン!カーン!コーン!
授業の時間だ。
「ハラケン。気にしないで?
マモーありがとう。 」
姫は一応フォローを入れる。
姫はマミーが初めてなので、名前も良く分かっていない。
無反応なハラケン。
「仕方ないよ。 残念だけど笑。
また作ってくれる? 」
黒崎が残念だけど姫にお願いする。
「うん。勿論。何度でも♪ 」
(姫は)幸せだった。
「光? あんまりハラケンを怒らないで?
何度でも作れるんだから。」
フォローを入れるも、光には響かない。
そっとして置くしかない。
授業が始まる。
授業が終わり放課後。
授業中は
黒崎はこの関係を、どうにかしたいと考えていた。
だって同じ仲間なのに、こんな些細なことで絶交なんてあんまりだから。
光の機嫌を直すにはどうすれば……
黒崎は考える。光の好きな物……
光の好きなこと…… 何なんだ。
嫌、簡単なことだ。
食べ物をおごれば簡単に許してくれる。
でも今回だけは流石に。コンビニのスイーツレベルではダメだ。
何か。何か…… あれだ!!!
先週の事だった。
(高級レストランの食べ放題やってるのよね!ちょっと高いけど、絶対私なら元が取れるわよ♪行きたいわ。)
って光が言ってたなぁ。それしかない。
黒崎は、絶望しているハラケンの元へ。
「ハラケン大丈夫か!? 生きてるか?」
静かに頭を左右に振る。
「ふざけてる場合か。
仲直りする方法があるぞ?
聞きたくないのか? 」
むくっ! 生気が戻るハラケン。
「どうすればいいんだ!?
教えてくれぇーーい!! 」
今のハラケンは、餌をお預けされた犬の
ように興奮していた。
「落ち着けよ! 簡単な事だよ。
この前、光が話してた高級ホテルの食べ放題をおごってあげればいいんだよ。」
ハラケンは喜びに満ち溢れる。
「ありがとう。今すぐスマホで検索。検索。ん? 2500円!? 高いよ……
自分の合わせて5000円。これは…… 」
…… 金額の高さに震える。
「高いよな…… バイト代もう無くなったか? 」
ハラケンは顔に似合わず、ファミレスで
バイトしている。
思ったよりは稼いでる筈……
「バイト代? あるけど、ママにバック買ってあげようかと思ってて…… 」
黒崎を蔑む《さげす》顔は、ハラケンは
忘れられない顔になった。
「おいおい。そんな顔するなよ! 」
ハラケンは黒崎の表情に唖然としてしまう。
それも仕方がない。
ハラケンが自分の立場を、理解していないのだから。
「 ママのご機嫌と光との仲直り。
どっちを取るんだよ? 」
黒崎が尋ねる。
ハラケンの心の中で迷いが生じた。
ここだけの話、ハラケンは光のこと
が好きだった。顔も性格も優しい所も、全部
ドストライク!!
ハラケンは顔も性格も悪い……
汗は直ぐにかくし、髪は角刈り。
食べるときはクチャクチャ音を立てる。
口を開けて食べるし良いところ無し。
唯一の取り柄は背が高いだけ。
182もある笑。
光は人の恋の話とかは得意で色々お手伝いしたりするが、自分の事になると実は鈍かった。
この事を知ってるのは黒崎だけだった。
(ママと同じくらい大切だ……決めた!!
初めてママを後回しにして、光の為に動く。)
「 光の為に奢るよ。 7万くらいはあるからなんとかなる。」
え??
結構貯めてるんだ……
「おっ…… そうだよな、さすがは男だな。
もしかしたら、光もお前に惚れちゃうかも笑。」
ちょっと言い過ぎたかな?
たまには誉めなくては。
「 そうかなぁ?? 仕方ない!
黒崎と白鳥さんも奢るよ。迷惑かけたし♪」
単純な奴だった。
そしてときが来た。
光と姫が帰ろうとしてると、ハラケンが来る。汗だくで……
「 なんの用?(元)友達。」
これはキツい…… 負けないハラケン。
「 今日はごめんね。…… モラルの欠片も無くて。ちゃんと直すから許して? 」
無視して、帰りの準備をする。
「(高級ホテル。ル・バーニーズ)!」
光の動きが止まる。
「今日、ここのホテルバイキングで迷惑かけたみんなを奢るから許してくれない?
本当にごめんなさい…… 」
光は重い口を開く……。
「 仕方ないわね。マザコンのあんたが
その決断しただけで、反省してるのがよーくわかりました。
許してあげるわよ。みんなぁ!
ハラケンの奢りで行くわよぉ♪ 」
機嫌を取り戻した光。
やっぱり高級ホテルのバイキング……
凄い効き目だった。
姫は悪いと思い、
「 ハラケン大丈夫? 無理してません? 」
ハラケンは笑顔で
「 悪いことをしたときは謝る。
世の中の常識。全然気にしないでくれよ♪」
ハラケンは仲直りしたのが凄い嬉しくて、
ご機嫌な様子。
今のハラケンを止められる者は誰も居ない。
「気にしないでいいよ。
ハラケンの好意なんだから素直に受け取ろうよ♪
僕も奢ってもらうし♪ 」
そんなものかな?
友達に奢ってもらった事がなかったから、少し罪悪感があった。
初めての事だし…… 好意には甘えよう♪
姫も楽しむ事に。
みんなでバスに乗って高級バイキングへ!
大きな高級なホテル。
そう簡単には利用しない凄い大きなホテル。
みんなも圧倒される。
姫は何回か利用していた。
入って行くお客様も、それ相応な見た目。
「すごぉーーい。楽しみね♪ 」
興奮する光。
お金が足りるか心配なハラケン。
さっき銀行で三万円下ろして来たけど心配になる。
姫はここのホテルのご飯は部屋でしか食べたことはない。
バイキングも人混みが嫌いだったので、あまり利用したことが無かった。
友達と一緒だったら楽しいし、行ってみたくなっていた。
心の高鳴りを押さえきれない。
「みんなぁ。行くわよ♪ 」
光の掛け声と共に4人は高級ホテルのバイキング。ル・バーニーズへ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます