第7話 初めてのお弁当

清々しい朝が来た。

朝から美味しいお弁当を作る為に早く起きたのだ。

姫はウキウキしながら顔を洗い、歯磨きをして髪をセット。

さぁ準備万端。1階の厨房に向かう。

こんなときの為に買って置いた、ウサギさんのエプロンを着けて。

厨房に入ると、


「 お嬢様。おはようございます。 」


みんなからの大きな挨拶が響き渡る。

シェフやメイド、セバスも入れて総勢30人くらいは集まっていた。


「 お嬢様、この者達を集めて置きましたので何なりとお申し付け下さいませ。」


(やっぱりセバスの仕業だなぁ?)


基本的に使用人達を動かして、無駄な事をするのはセバス。使用人の中のリーダー的な存在なのです。


「 セバス。 みんなと同じで良いのです。

シェフやメイドに頼るお弁当など聞いたことありませんわ。 」


でも、今まではシェフやメイドに頼るのなんて当たり前だったのに…

やるせない気持ちはあるけど、心にとどめて


「 申し訳ありません。勉強不足でした…… 」


「 分かればよい。」


でも、一体なにを作るつもりなのか……


「 サンドイッチにしよう。これなら難しくないぞ♪ 」


姫の手には「誰でも簡単美味しいお弁当」と言う本を持っていた。


三ツ星シェフ辰巳たつみが動き出す。


「 ここからは私にお任せ下さい。

昨日の昼食の名誉挽回させて頂きます……

メイド達入りなさい。 」


メイド達が厨房に入って来ると、沢山の食材を運んできた。


「 今日市場で下ろされたばかりの黒毛和牛と、新鮮な烏骨鶏うこっけいの卵。

山崎ファームから直に取り寄せたレタス。

私が日頃研究し、試行錯誤して作りました秘伝のドレッシング。

田中オレンジの森より採れたてオレンジ。

これでお弁当は完璧にこなせるでしょう♪」


「 うむ。ありがとう。みんなは下がってよいぞ。後はわたくしがやりますわ♪ 」


張り切る姫。セバスや他の者達は、心配で隠れて見張っている。

姫が怪我したら旦那様の雷が降りそそがれる。一度だけメイドの不注意のせいで怪我をしたとき、そのメイドはいきなり姿を消してしまった…

みんなの噂では消されてしまったとか、警察に突き出されたとか色々囁かれている。

みんなはそれがトラウマで姫に対して過保護になってしまっていた。

近くには医療スタッフも配備され、まさに言うことなし。とはこの事である。


「 パンの間に黒毛和牛のローストビーフを入れて、レタスを入れて。」


湯で卵を半分に切る事に。ここは難関だ。殻を剥いて、ちょっと不格好だけどまあいいだろう。

そして、まな板に乗せて包丁で半分に切る。みんなが慌てる。

包丁…… あんな切れ味の良いもので怪我なんてしたら…… みんな近くから祈るしかない。

メイド達なんかは、震え上がっていた。

包丁を持って、


「卵を支えてっと、…それぇーーい! 」


ズバっ!!

イヤあぁァァ!!

メイド達の悲鳴が響き渡る。


「 おっ? 意外に出来るもんね♪ 」


無事に半分に。シェフ達は安堵あんどする。

安心してメイドが倒れタンカーで運ばれて行った。

後少し、パンに卵を乗せて、上から秘伝のドレッシングをかけてパンを乗せればあっという間に完成。


「 ちょっとだけ頼ってしまったけど、初めてだから良いかなぁ? 」


自分にまだまだ甘い姫。

みんなは裏で見ていて歓声の声を上げる。

やったぁぁ!!!

辰巳たつみシェフは嬉しさのあまり涙する。

そして、挟んだパンを半分に切る。


「 うぇぇえ~~~~い!! 」


包丁を持って変な掛け声と共にパンに包丁を入れる。

ズバッ!!

切断面は汚いけど半分に切れた。後は搾りたてのオレンジでジュースを作る。

皮を手で剥いて、ジューサーに入れて少しの牛乳とレモンを1滴垂らす。

そしてかき混ぜる。


うぃぃぃーん!! 凄い早さでかき混ぜる。


「 凄いわねぇ…… やってるとシェフになったみたい♪ 」


直ぐに調子に乗ってしまう。

キレイなオレンジジュースの完成だ。

シェフとメイドは大喜び。

クラッカーや音楽隊の音楽も流れてきた。

下手したら、そこら辺で開かれるお祭りより派手になっていました。


「 よくぞ、お一人の力でここまでやりましたね。

セバスは…… 感激しております……

ぐすっ。」


姫のことになると涙もろい。

しかも甘いのだ。



「 全然ですわ、ローストビーフも作ってあったし卵も茹でてあったわ。

ドンドン作って覚えますわ♪ 」


当分はみんなが安心出来る朝はまだまだ来なそうだ……


それにしても気になることが。

何故あの親バカの二人は来なかったのか?

実は前日に、姫に気にならないようにと配慮して厨房のいたる所に監視カメラを

設置してもらい別室で見ていたのです。

それなら納得。



「 ママ、ウチの娘は世界一だね。」


大袈裟な父。


「 全然違うわ。宇宙一よ。」


どっちもどっちであった。

親バカもここまで来ると可愛いものだ。


出来たお弁当をカバンに入れて準備完了。毎日のお母様方の苦労が良く分かりますね。


みんなで食事をして、いざ。学校へ!

大きなリムジンに乗り登校する。


「 行って参ります、お母様。お父様♪ 」


窓から手を振り学校へ進んで行った。

お父様とお母様も大きく手を振り見送る。

こんな親バカの朝の見送りはあまり見ることができない。

さすがは白鳥家……


「 ママ。いつの間にかあの子があんなにも成長しているとは思わなかったよ…… 」


と深く考える。


「 まだまだ子供よ。私達の可愛い姫なの。」


まだまだ子離れするのは先になりそうだ。

学校の側で降ろしてもらい学校へ。


「 セバス。行って参りますわ。」


元気に駆けて行く。

セバスは学校に送り迎えをほとんど毎日していたが、こんなに元気に出て行く姫を見るのは初めてでした。


「行ってらっしゃいませ。お嬢様ぁぁ!!」


セバスも姫のことが大好きでつい、声を大にしてしまいます。


「ちょっとおお! うるさいわよ!? 」


朝のゴミ捨て場に集まる、オバサンズに叱られるセバス。

やっぱり外では、迷惑にならないようにしましょう……


学校に到着するなり


「 おはよう。」


光と雀が挨拶してきた。


「おはよう。みんな早いのね。」


みんな自分を特別扱いしないのが心地良い。

時間はギリギリセーフ。

姫はなんとか間に合うように来ているのでギリギリだった。


「 …… 白鳥さんおはよ。 昨日はごめんね」


ハラケンはまだ気にしていた。

一体なにされたんだぁ??


「 もう本当に大丈夫よ。友達でしょ? 」


姫は本当にもう怒ってなかった。

いつの間にか少しずつですが、成長して

適応してきたのです。


「 白鳥さんおはよ。昨日は楽しかったね♪」


黒崎くんだ。朝からカッコイイ。


「 おはよう。本当に楽しいかったですわ。また遊びましょ♪ 」


そう言うと金が鳴り響く。


キーン!コーン!カーン!コーン!


授業が始まる。

姫には少し退屈になるくらい勉強のレベルは低かったが、姫には毎日楽しかった。


あっという間にお昼の時間に。


「 姫っ。一緒に食べよう♪ 」


光が駆けよってきた。


「 一緒に食べよう。

今日は私も作ってきたのよ? 」


誇らしげに語る。

だって、初めて一人で作ったのだから♪


「 本当に!? 凄いわね。味見させて。」


はしゃいでいる光。

そして今お披露目。

サンドイッチとオレンジジュース。


「 まだまだ見た目は悪いわね笑。

でも、初めてでこんなに出来れば充分よ 。」


そして一口頂くことに。


「 いただきまぁす。あむ。もぐもぐ。ん?? 凄い美味しい……

パンもふかふかで中に入ってるローストビーフも凄い美味しい。

特にこのドレッシングはそう簡単に出来ないわよ。 」


的確に指摘する。

料理が得意なので食材が良いのが直ぐに分かる。

ドレッシングの評価は、さすが三ツ星シェフである。


「 ローストビーフはスーパーで買ったの。ドレッシングも市販のだから、全然私の力じゃないのよ笑。」


どうにか誤魔化す。

さすがにスーパーではこんな味は出せないので、バレちゃうのでは?


「 そうなの? 最近のスーパーの食材は美味しいからねぇ。でも本当にこのサンドイッチ美味しい♪」


バレなくて何より……

気に入ってもらえてよかった。


「嬉しいわ。オレンジジュースも飲んで。

朝ジューサーで作った手作りジュースなの♪ 」


「 じゃあいただくね? ごく!ごく!えっ?

こんなに美味しいの初めて……

こんなの飲んだら、そこら辺で売ってるオレンジジュースは赤ちゃんの飲み物程度に感じちゃう……

これどうやって作ったの?? 」


ヤバい。美味すぎて馬になってしまった。

これも材料が良すぎて効き目が凄い。


「 私の実家がオレンジ農家だから、たまに送られてくるの。

だから美味しいのかな?? 」


バレないかな?

オレンジ農家は無理があったか……


「 やっぱり? 凄い美味しい♪

また作ってね。癖になる味。ごく。ごく。」


光も凄い喜んでくれた。

さすがは辰巳シェフの取り揃えた食材。

二人は女子トーク楽しみながら、お昼を食べました。




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