第2話 姫の初恋

姫子は泣き止み。


「 財布とスマホを車に忘れてセバスとはぐ れてしまって……困ってて……。」


姫子は静かに答えると


「 そんなことかぁ。じゃあ、俺のスマホ貸 してあげるよ。連絡取ると良いよ。」


姫子はお辞儀をしてセバスに電話する。

直ぐに繋がり、電話に出るセバス。



「 大丈夫ですか?? お嬢様!! 直ぐに向か います。」


息の荒いセバスの声がスマホから外へ響き渡る。凄い声量だったのです。


「 ありがとうございます。

何てお礼を言えばいいか…… 」


姫子はドキドキして上手く話せない。

こんなにドキドキしたことがなかったのです。


「 大したことしてないですよ。

困ってたら、君だって同じ事をしてたと思うよ♪ 」


絶対に姫子は困ってても助けないでしょう。なぜなら、姫子は自分以外は庶民で、下だと思っていたのだから。


ぐぅ~~っ! お腹の音が鳴り出す。


「 あはははっ。 お腹減ったよね?ちょっと 待っててね? 」


王子は走りだす。

5分くらいすると、王子が帰ってきた。


「 ホットドッグ好きかい?

ここのは格別だよ。」


さっきの食べてみたかったホットドッグ。

これは何処から食べるの?

ナイフかフォークはないかしら? 迷っていると、


「 ホットドッグはね、こうやって大きな口 を開けて…… あむっ! もぐ、もぐ、こん

にゃ感じに笑。」


可愛い…… 姫子はメロメロに。

姫子は恥ずかしながら大きな口であむっ。


「 美味しい。 こんなの初めてよ。」


もぐもぐと沢山頬を膨らませ食べる。


「 良かった良かった。お嬢さん口に沢山ケ チャップついてるよ笑? 失礼……」


王子がハンカチで口を拭いてくれた。


( これが世間で騒いでいたハンカチ王子!?

ハンカチ王子最高!! )


姫子の頭のなかはお花畑でいっぱいでし

た。


「 あそこのホットドッグ屋の店主はゴリラみたいに怖いけど、味は格別なんだよね。 バイトの途中で買い食いするんだよね。」


幸せな時間を過ごしていると、暴れ牛の如く走って来る姿が見えてきた。


「 お嬢様~~。」


セバスが猛ダッシュで駆けてくる。

王子は来るのを見て安心したので、


「 迎えが来てくれたみたいだね。良かっ た。 新聞配達があるから、そろそろ行くね? 次は迷子にならないようにね。

お嬢さん♪ 」


自転車に乗り爽やかに駆けて行く…… その姿は、白馬の王子その者でした。


「 あの。 お名前を……。」


その声は車の音とセバスの叫び声に下記消された。

セバスはナイアガラの滝のような大量な汗をかいて来ました。その量は計り知れない……


「 お嬢様……お嬢様。 本当に、本当に申し

訳ありませんでした。 どんな処分でも受けます。」


姫子には全然聞こえていなかった……。ホットドッグを食べ終わると、さっき拭いてくれたハンカチを返し忘れていた。


「 王子……」


これが姫子の初恋だった。そして静かに

リムジンに乗り、家に帰るのでした。


家に着くとお父様とお母様登場。


「 セバスっ。お前、なに考えてんだ!?

私の愛する姫になにかあったら、一体どうするつもりなんだ? なぁ?? 」


凄い怒りにまみれた、怒りの魔神に変貌したお父様だった。いつもは優しい温厚な父だが、娘のことになると魔神になる。セバスは土下座してなんども謝る。 殴られそうになっていると


「 誰にでもミスすることはあるわ?

お父様許してあげて? セバス。 勝手に動いてごめんなさい……

次からは気を付けるわ。」


みんなの思考回路が止まる。セバスを守ったことなどなかったからです。

それよりもセバスに謝るなんてことも……

父も姫子の傲慢な所を治して優しい子になってもらいたい、と思っていたが甘やかしてしまうせいで注意できなかったのです。


「 セバぁス。医者だ!

どんなに高い医者でもいい。早く呼んでくれ!! 」


凄い叫び声で吠える父。

お母様は倒れてしまう。お城の中は大パニック!! 白鳥家の大事件になってしまった。


それから色々あって夜になり、姫子は絵本を読んでいた。


「 白雪姫……

あなたも同じ気持ちだったの?

恋は手加減を知らないのね。

こんなに心が痛い…… また会いたいなぁ…… 。」


姫子は専属パティシエのオヤツを食べながら、次の出会い方を考える。


( 家は知らないし、名前も知らない。

一緒にホットドッグを食べただけだし……

そうだ。 鬼ゴリラだ。)


そうです。鬼ゴリラのお店に行けば、いずれはお店にお腹を空かせた王子がくる。

もし来なくても、鬼ゴリラにバナナをあげてでも聞き出してやる。

姫子は鼻歌を唄いながら、大きなベッドを

駆け回るのであった。


白鳥夫婦は寝込んでしまいました。

白鳥夫婦は変化に弱いのでありました。


次の日、朝は大きなテーブルがある食堂で毎朝家族で朝ごはんを食べる。

まさに豪邸の食事。


「 昨日は大変だったねぇ、姫ちゃん。

もう心配かけないでね? 」


心配性な母。母は心配性なのです。


「 お母様。もう大丈夫だよ。安心して。」


「 おっほっほっ。 姫子もこれでまた大人の 階段を登った訳だね。」


大げさな父。姫子の事になると、過剰な発言や行動が目立つのでした。


今日は日曜日。鬼ゴリラのホットドッグ屋に行くことに。

綺麗な服に着替えてさぁ、ホットドッグ屋へ……


リムジンは大きく目立ちまくりながらも、ホットドッグ屋の近くで降りることに。


「 セバス。帰るときは連絡するから何処かに行ってて良いわよ。」


恥ずかしいので帰らせる姫子。


「 本当に大丈夫ですか? 心配です…… 」


セバスは昨日の事もあり、凄い心配になってしまう。

執事としては当然の行動でした。


「 命令です、帰りなさい。 」


( 姫様の命令は絶対!!)


セバスはあっという間に帰って行った。

…… 訳もなく近くで姫子を監視していた。


「 お嬢様。 申し訳ありません……

心配なのでこちらから監視しております。」


セバスの忠誠心の高さは計り知れない。

姫子はてくてく歩いてホットドッグ屋に行く。


「 あのぅ…… おじさん。

ホットドッグもらえるかしら? 」


姫はおどおどしながら鬼ゴリラにまだ恐怖心があるようでした。


「 この前のお嬢さんかい?

お金は今日はあるのかい? 」


少し煽る鬼ゴリラ店長。店長の民度が分かる瞬間です。


すると、万札の束を出す。

驚きを隠せない鬼ゴリラ。

飲食店ではそう簡単にはお目にかかる事は無い大金。


「 適当にお持ち帰りで作ってくれるかしら? 」


ホットドッグはお気に入りになったようです。

鬼ゴリラはお客様神様精神。

接客の鏡。

この前のことなんか無かったように笑顔で対応。

これが大人の対応である。


「 お嬢さん。

こんなには受けとれませんよ……。」


おどおどする。

誰でも当然の対応です。


「 また来るからそのときまた、ホットドッグ食べさせてくれればいいから。」


鬼ゴリラは今までで一番綺麗に、質の良いホットドッグを作りました。

赤ちゃんのオムツを変えるかの如く…… 丁寧に丁寧に…… 。


「 ありがとうございました。

お嬢さんいつでも来て下さいね。」


常連さんは今までで見たことない程の綺麗なお辞儀を鬼ゴリラがするのを見てびっくりするのでありました。


まだ午前10時。まだ来ないのかなぁ?

ホットドッグを頬張りながら近くの公園で待っていました。

それを見ているセバス。


「 お嬢様があんな下品な食べ物を食べるなんて、本当に病院に連絡しておくのも視野に入れておかねば……。」


昼の12時。


まだ来ない。

段々うとうとしてしまう。


すると王子が颯爽さっそう登場!

新聞配達が終わり、立ち寄ったようです。


「 マスターこんにちわ。

ホットドッグ下さい。」


遠くで見ても格好良すぎる。

また白馬に乗って(自転車)。


「 格好いい…… ハンカチ返して少しでも仲良くなりたい……。」


姫子は人生で初めて自分で洗濯して、アイロンをかけた王子のハンカチ。

少し焦がしてしまっている。


「 お嬢様…… まさかあの青年の為にこんなに時間待ってたのか?? 」


セバスは驚きを隠せない様子。

何故なら姫子はワガママなので、待ち時間があると凄いイライラして手をつけられなくなるからです。待つのが苦手。


「 あいよ。 ホットドッグお待ち。」


機嫌のいいマスター。

そのはずです。

何故なら沢山投資してもらったのだから。


「 機嫌良くて気持ち悪いなぁ。

いただきまーす。 もぐもぐっ。 最高だよ。」


その姿を遠くから姫子は見ていて夢中になっていた。


「 なんであんなに格好いいのよ……。」


もうなにをしても格好いいと思ってしまう。

一目惚れとはそう言う事です。


「 明日からまた学校だよ。

面倒だなぁ……」


(…… 今なんて? 学校? 何処の学校かしら? )


「 あっはっは。学校は面倒でも行かねぇとなぁ。

頑張れよ。」


ホットドッグを口に咥えて帰ってゆく。


あまりの格好よさに話をかけるタイミングを逃してしまう。でも何もしていなかった訳ではない。


「 ちょっとあなた。 聞きたいことがあるの だけど。」


マスターの所に姫子が来て問いた出す。


「 お嬢さんっ……

なんでも聞いて下さい。」


「 先程いた男性の学校は何処なの!? 」


一体なにを企んでいるんだ……

そして、ついでに遠くから監視し見ていたセバスも焦るのでした。

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