第7話

「た、助かった……」


 砂埃が晴れ、完全に瓦礫の山と化した建物を見て、陽はほっと胸を撫で下ろす。間一髪のところで脱出してきた4人に、建物の周りに居た隊員達が近づいて来る。


「ステラ様、グロム様、ギブリ様、お怪我はありませんか?っと、そちらの方は?それに見たこともない動物も居るようですが」


 隊員の中の1人が尋ねる。


「あー!それアタシも気になってたんだよね!」


 ギブリが、獣のような耳を揺らしながら、陽の方を指さした。


「あぁ、こいつはヨウってんだ、階段の先の部屋でそこのドラゴンとかいう生き物と眠ってた」


「ヨウって言うんだ~ ふーん……」


 グロムから陽のことを聞いた彼女は、陽の全身をジロジロと観察している。陽は恥ずかしくなり下を向いてしまう。


「耳が尖ってないし角も無い...ヨウってなんか変わってるね~」


 と、興味深そうな顔で言った。そんな彼女の頭が、誰かの手に軽く小突かれる。


「こらギブリ、人の容姿を変わっているなんて言ってはダメだ」


「うっ、ステラ…… は~い ヨウ、ごめんね?」


 ステラに注意され、彼女は申し訳なさそうに陽に謝る。


「あ、あはは、気にしてないから大丈夫ですよ」


 陽はそう言って見せるが、内心では、ステラ達の方がおかしい容姿をしていると思っていた。

 ステラの尖った耳、グロムの額にある角、ギブリの頭頂部にある獣耳、周りに居る隊員達も同じように持っているそれらを見てそう感じたのだった。

 そしてギブリは陽への興味を失ったのか、今度は彼の隣に寄り添っているドラゴンの方へ向き直る。


「ドラゴン?こんな生き物初めて見た!狼よりもちょっとおっきいくらいかな?」


 そう言いながら少し屈み、手を出して頭に触ろうとする。するとドラゴンは触られたくは無かったのか、口を大きく開け、ギブリを威嚇した。


「うひゃあ!?何あの生き物!めちゃくちゃ凶暴だよ!!」


 と叫びながらステラの背中に風のような速さで隠れた。


「いきなり触ろうとするから驚いたんだろう、ギブリ。 そういえばヨウ、先程答えを聞きそびれたものがあったな」


 ステラはギブリにそう言った後、何かを思い出したような顔をしながら陽の方を見る。


「君は何故、あの部屋でそのドラゴンと一緒に眠っていたんだ?」


 先程その質問に答えようとした瞬間警報が鳴り、ロボットが襲ってきたのだった。


「それが、実は何も覚えていなくて、目が覚めたらあの状況で... それにこのドラゴンとかあの襲ってきた黒いロボットについても何も...」


「あの黒いのはロボットと君は言うんだな。似たような形をしているものは知っているが、私達の攻撃が通用しないのは初めてだった」


 冷や汗を搔いたよとステラは話す。彼女は陽が語ったものについてもっと知りたそうにしている。

 陽は何を話そうか、と頭で少し整理してから話を始める。


「俺も実際に見たのは初めてで、ドラゴンもあんなロボットも、物語の中に出てくるような存在なんです」


「物語、か」


「はい、でも両方ともあまり詳しいわけじゃなくて……それにこの場所も何処なのか全く……あの、ここは何処なんですか?」


 陽が周りを見渡しながらそう質問する。


「場所の名前は分からないが、ここは私達の住んでいる街からかなり遠いところだ」


「謎の建造物が見つかったってんで、その調査に来てたんだ。 さっき崩れちまったがな」


 ステラが彼の質問に答え、グロムがこの場所に来ていた経緯を説明する。


「そう、なんですね……」


 好転しない状況に、陽は肩を落とす。その様子を見て、ステラは顎に手を当てて何かを考える。

 そして、考えが纏まったのか、彼の方へと顔を向けてこう言った。


「ヨウ、もし、行く宛が無いのなら、私達の街に来ないか?」


 そして、陽へと手を差し出しながら、こう付け足した。


「マーレの街へ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る