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それからしばらくたった、ある日のことだった。
フェイスグラムからのメールがスマホに届いた。
"ダイレクトメッセージが届いています"
"差出人: Cunningham_112"
……「カニンガム112」!? なんで? 彼はブロックしたはずなのに?
良く調べてみたら、なんと彼は、僕にブロックされたことを知って別なアカウントを作って僕にダイレクトメッセージを送ってきたらしい。
はっきり言って見たくもない。だが、それでも一応目だけは通しておくか。
僕は久々にフェイスグラムにログインし、彼からのメッセージを読む。
予想通り、なぜ僕がブロックしたのかを問う内容だった。僕は返答してやった。
"ボットで「いいね!」を稼ぐような姑息な人間に、何も言うことはありません"
そして、そのアカウントも速攻でブロックした。
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"ボットを使っていたことはごめんなさい。だけど、一度会って話がしたいです。明日の日曜日の15時、金沢駅、もてなしドームの
しょうこりもなくまた別アカウントを作って、「カニンガム112」は昨日メッセージを送ってきた。
しかし……
まさか、はるばる金沢までやってくるとは。
北陸新幹線のせいで、新潟市から金沢までは逆にアクセスが悪くなってしまったのだ。それでもあえて来る、というのは、彼なりの誠意の表し方なのかもしれない。
そうなると、さすがに僕としても会わないわけにはいかなくなる。僕はバスに乗り、金沢駅へと向かった。
もてなしドームは金沢駅の東口前の広場を覆うガラス張りのドームだ。その手前には鼓門という木造の複雑な形状の門がある。駅前のバス停に降りて、僕は鼓門の下にたどり着いた。14:30。さすがに「カニンガム112」らしき人物はいない。時間はまだ随分早いが、このバスに乗らないと次はここに着くのが15時以降になってしまうのだ。僕はスマホを見ながら待った。
街はクリスマスムード一色だ。夜ならここもイルミネーションの光に彩られることだろう。日曜だからか、やたらカップルが目につく。せいぜい爆発してくれ。
やがて僕は、見知った顔が歩いてくるのに気が付いた。
「あれ、瀬川さん?」
「あ、平良君」
瀬川さんはバツの悪そうな顔になる。私服の彼女を見るのは初めてだが、ちょっとおしゃれしているのは僕でも良く分かった。学校では見たことのない、かわいらしいコートに身を包んでいる。
そうか……これから、デートだな。そうだよな……彼女だって付き合ってる男くらい、いるよな……
内心がっくりした僕は軽く会釈し、彼女に対して「これ以上の詮索はしない」という意思を示すため、またスマホの画面に視線を戻す。
しかし。
瀬川さんは僕の前で足を止め、僕をまっすぐ見つめながらはっきりと言った。
「お待たせしました、『フェニックス54』さん。『カニンガム112』です」
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