6

 目が覚める。


 そこは、いつもの僕の部屋。何も変わらない。いつものベッドに、僕は横たわっていた。


 帰ってきたんだ……


 この退屈な、現実の世界に。


 それにしても。


 なんて壮大な夢を見たんだろう。夢の中では半世紀近くの時間が経っていた。もっとも、そのほとんどは人工冬眠状態ではあったのだが。


 僕は、平良ヒトシ。極めて平均的な高校に通う、極めて平均的な高校二年生。クラスに一人はいる、目立たず存在感の薄い生徒だ。何の才能も無い。僕はこんな自分が……


 あまり嫌いではなくなっていた。


 ドラゴンスレイヤーのように何か一つ突出した才能があったとしても、必ずしも幸せになれるとは限らない、と分かったからだ。いや、ひょっとしたら、むしろこの「何事も平均的にこなせる」っていう能力こそ、実は僕の才能なのかもしれない。そしてきっと、いつかは社会の中でそれを生かし、僕は見ず知らずの多くの人たちを支えていくんだろう。もちろん僕自身も多くの人たちに支えられながら。それで十分だ。


 それに、僕は嫌いだったはずの歴史に、今はものすごく興味が湧いていた。大事なのは歴史を学ぶことじゃない。歴史「から」何を学ぶのか、ってことなんだ。そして未来を作っていく。子供たちにもそれを伝えながら。


 そう。僕は突出した才能なんか何も無い、極めて平均的な高校二年生。だから、小説家になるような才能も、ない。たぶん。


 だけど。


 この体験を小説仕立てにして、オンライン小説サイトに投稿するくらいのことは、やってもいいよね?


 (了)

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