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こうしてドラゴン討伐隊が再結成された。僕は僕の子供たちに、聖剣を操る技術を徹底的に教え込んだ。と言っても、僕は彼らに対して父親として何かできるような立場ではない。だから僕は、あえて単なる弟子として割り切って教えていた。もちろん、教え子としてはちゃんと愛情を持って教えたつもりだ。彼らも教え子として、感謝の情はあったようだが、肉親に対するそれは全く感じられなかった。それでいい、と僕は思う。
そして、僕らはとうとう実戦に赴くこととなった。早々と僕らは戦果を上げた。しかし、かつてのようにその活躍が皆に知れ渡ることはなかった。僕らは全員が忌み嫌われていた者達なのだ。
それでも僕らは戦った。だけど、もう僕がドラゴンの真っ正面に立つことは、ほとんど無くなっていた。それよりも僕はチームを指揮することに力を注いだ。
そう。
僕一人ではできることに限りがある。だけど、チームのみんなの力を合わせれば、もっと安全にもっと多くのドラゴンを屠ることができるのだ。それに、僕だってもう若くはない。三十代のおっさんだ。若者たちにはどうしても体力で負けてしまう。だから、僕はこのポジションで満足だった。
昔に比べたら戦果は著しく向上していた。巷の誰もが知らなくても、自分たちは仲間を守っている、という実感が僕らにはあった。実際、ドラゴン討伐隊に助けられた人々が増えるに従い、口コミで僕らの評判はどんどん上がっていった。それが隊員たちの自己実現欲求を満たし、モチベーションを高める原因となっていた。
僕らの活躍の結果、増殖していたはずのドラゴンは見る間にその数を減らしていった。最初は全く見られなかった笑みも、時々隊員たちの顔に浮かぶようになった。僕に対する態度も何だか少し軟化したような気がする。それは素直に嬉しいことだった。
しかし。
彼らのそれとは反対に、僕のモチベーションはどんどん下がっていった。それは単に年を取ったから、というだけではない。
ドラゴンを退治したら、今度はどうなるのか。
また人口が増えて、資源を食いつぶして、戦争が起こって……
同じことの繰り返しになるだけじゃないか。
そう思うと、どうしても戦う気持ちが萎えてしまう。この世界の人たちは、歴史に学ぶということをせず、延々と同じことを繰り返しているようだ。歴史が嫌いだった僕も、あまり他人のことを言えた立場じゃないが。
そうだとしても、僕らは戦うことしかできなかった。だけど、折に触れ僕は隊員たちに、ドラゴンを退治した後にどうしたらいいか、を考えさせた。もちろん僕にだって、どうすればいいのかなんて分からない。だけど僕は彼らに日本語を教え、図書館で古文書を読ませた。そうやって得た知識をどう使って、どう未来を切り開いていくかは、彼ら自身が見つけていくべきことだ。
しかし、そのためにはまず彼らに「未来」がなくてはならない。だから彼らを全員守らなければならない。僕が成すべきことはそれだ。隊長として、そして、父親として。
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時は流れ、僕らはまたドラゴンを最後の一匹になるまで追い詰めた。しかし……
こいつは強敵だった。まず、先陣を切った双子がダメージを食らった。僕は二人を安全な場所に退避させ、ファントムの魔法の援護の元に、イーグルとコンビを組んで連続攻撃を開始する。あれだけ反目しあっていたというのに、今やイーグルと僕の呼吸はピッタリと合っていた。互いが互いの行動を読み、それを支援する形で戦いを進めていく。これが親子、というものなのか。
しかし。
「いやぁ!」
ファントムの悲鳴が響く。ドラゴンの吐いた火が彼女を直撃したのだ。ギリギリ致命傷にはならなかったが、彼女も戦線を離脱するしかない。だが、彼女は首を横に振った。
「まだ戦えます! 私があなたたちを守らなかったら……」
「ダメだ!」僕はあえて語気を荒くして告げる。「離脱しろ! これは命令だ!」
「隊長……!」
「分かったな、ファントム」
うなだれながら、彼女はついにうなずく。
「よし、イーグル、行くぞ!」
「おっしゃ!」イーグルが白い歯を見せる。
"死なないで……おとうさ……"
背中越しにそんなつぶやきが聞こえたような気がしたが、僕は無視してイーグルと共に再びドラゴンに向かった。
ヤツもかなり弱っている。だが、油断はできない。ヤツの武器は、炎と意外に俊敏に動く腕、そしてその先に付いている鋭利な爪だ。ファントムの防御がない以上、一度でも攻撃を食らったら、それで終わりだ。
しかし。
ここに来て、僕の体は鉛のように重くなっていた。疲労だ。もう若い頃のようには体が動かない。それに気づいたのか、イーグルが自分にヤツの注意を向けさせようと、かなり派手な動きをし始めた。
まずい。
彼の死角から、ヤツの爪が襲いかかろうとしていた。僕は残る力を振り絞って、彼に体当たりする。
「!」
イーグルの体が吹っ飛ぶ、と同時に、僕の体にヤツの爪が食い込んだ。
「た……隊長……!」
イーグルが呆然とした顔で僕を見つめる。
だが。
僕もただではやられない。ヤツの右腕に聖剣を突き刺していたのだ。これでヤツの利き腕の動きを封じられた。
「今だ! やれ! イーグル!」僕は叫ぶ。
「!」
僕の意図をすぐに察したのだろう。イーグルは大地を蹴り、ヤツの目の前で聖剣を振り抜いた。ヤツの首が宙を舞った。
そのまま、僕は地面に仰向けに倒れた。
「隊長!」
イーグルが駆け寄ってくる。僕には既に、言葉を発するだけの力は残されていなかった。
満足だった。僕は僕の子供たちを、守り切ることができたんだ。
もう痛みも何も感じない。目の前にイーグルの顔があるようだが、ぼやけてよく見えない。何か水滴のようなものが、僕の顔に落ちてきた。
「おい! 死ぬなよ! 隊長! おやじ……」
僕の意識は、そこで途切れた。
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