第24話 エルフの訓練所

クライアバル王城の訓練室。


「まっ参りました」


エルフの兵士は尻もちをつきながらを声上げた。

その姿を確認するとジュゼスはやれやれとため息をつきながら剣の刃を腰に下げた鞘に納め、エルフの兵に手を差し出した。


「だらしないですよ。エルフの兵たるもの最後まで凛とせねば」

「すいません」


兵士は差し出されたジュゼスの手を申し訳なさそうにつかみ立ち上がるとそそくさと武器を片付け部屋を退室していった。

それを見ていたクエセレンは興奮する。


「本日も全勝とは見事でしたジュゼス。あなたはエルフの国の誇りです」

「お褒めの言葉感謝します。我が姫よ」


ジュゼスはクエセレンに向かい深々と頭を下げた。


「しかし、先ほどのご相手は、我が兵の中で一番優秀な者それを圧倒してしまうとは…今のあなたとまともに稽古ができるのは他国から来ていただいたディア様ぐらいでしょうか」


ジュゼスの実力はもはやクライアバル王国一といっても過言ではない。それ故に力量を図れる手段がなくなってきているのだ。


「ディア様にお願いしてジュゼスの稽古に付き合っていただこうかしら…」


っとクエセレンが諦めかけたその時部屋の扉が静かに開いた。


「だったら俺が相手になってやろうか」


扉にもたれかかりながら現れたのは…放浪人


「ディア様直伝ファイヤー!」


突如放浪人に向かって容赦なく火を放つクエセレン。

放浪人は慌てて向かってくる火を蹴り上げ沈下した。


「なぜいきなり攻撃した!」

「あらすいません。侵入者かと思いましたわ」


クエセレンはシレっとした顔をしそっぽをむいた。いろいろ言いたいことがあるという顔をいながら放浪人はジュゼスのところに向かう


「まぁいい。相手が欲しいんだろ俺が相手をしてやる」


放浪人の言葉にジュゼスはニヤリと笑う。


「ディア様と姉上はどうしました」

「ディアなら部屋に戻った。おまえの姉は走って巻いた」


放浪人はパキパキと手の関節を鳴らす。


「貴様との決着がまだついていない。俺との闘い受けてもらおうか」


するとクエセレンは放浪人の前に立ちはだかった


「何をおしゃっているの!あの時の戦いはジュゼスの圧勝でしたわ!あなたは頬と手を怪我しましたがジュゼスは無傷でしたわ」


「ぐっ」と言い返せないっという表情をみせる放浪人!ああ情けない。


「だったらリベンジだ!俺と勝負しろ!」


放浪人はジュゼスを指さした!

当然クエセレンは激怒。


「あなたなんという無礼な!ディア様のお友達といえど」


「姫!」ジュゼスは大声あげた。

クエセレンは驚きジュゼスの方へ振り向いた。


「わたしは別に構いません。それにこの男の言う通りまだ決着がついていません。あの時はお互い矛を収めたのです」

「しかしジュゼス…ありえないかもしれませんがあなたの美しい体に傷がついてしまったら」

「ご心配なく姫。わたしはこのような無礼な男に傷つけられるやわではありません。必ずやあなた様に勝利を見せましょう」


涙ぐむクエセレンをみてジュゼスは優しそうに微笑み二人は見つめ合う。


「いつまでイチャイチャしている。やるのかやらないのかさっさと決めろ」


意気揚々とジュゼスに向かう放浪人!しかしその腕をガシィィィ!と強く掴まれた。

放浪人は恐る恐る掴んだ相手の方に首を向けるとそこには満面の笑みで圧をかけるレティの姿があった。


「これから何をしようとしているんですか」


笑顔なのに低い声。少し動揺するも


「こいつと一戦交えるつもりだ」


と放浪人は言い返した。

その言葉にレティは放浪人腕を強く抱く。


「手を使ってはダメです!まだ完全に完治していないんですよ!」


放浪人は振りほどこうともがく


「はなせ…もう痛みはない問題なく戦える」

「だめです!痛みはなくなっていますが一時的なものです。すぐに病室に戻ってください」


レティの力はそんなに強くはないもの放浪人を離さない。

そんな二人のやり取りにジュゼスは頭を抱えた。


「せっかく姫様の前で決めたのにこの男は…」

「ジュ、ジュゼス!大丈夫ですか」


クエセレンはジュゼスの背中を撫でた。


「…仕方ありません。不本意ですが」


するとジュゼスは何かひらめいたのか

壁に飾ってある剣を1つ手に持ち放浪人に声をかける。


「放浪人!これで決着つけましょう」

「剣だと」


レティを引きずりながら放浪人は答える。


「ええ。そうです」

「俺は構わないがそれだと姫様が傷つけたと怒るんじゃないか」

「フッそれは心配ご無用」


するとジュゼスは剣の刃を掴んだ。

しかし怪我事もなく剣は透き通るように手を貫いていた。


「わたしたちの練習用の特殊な剣。剣の刃の部分は同じ刃の部分以外は

風のように透き通ります。これなら問題ないでしょう」

「それだと決着がつかないだろう」

「当たったか当たっていないかを判断できるよう少し痛みを感じるようにしたあります。この剣は特殊で致死量のダメージが入ると剣先が光るようになっています。それともう一つ」


ジュゼスは放浪人に腕輪を投げ渡した。


「その腕は体に痛みを感知すると数字が変動するような仕組みになってます。設定で100にしたありますのでその数字が0になった方が負けというのはどうでしょう」


放浪人は腕輪を付けるとそこに数値が表示され100という文字が浮かび上がった。


「いいだろう!おい担当医それならいいだろ」

「それならよろしいですよね!姉上!というかそやつの腕からいい加減離れてください」


ジュゼスと放浪人はレティに言い放った。


「えっええまあそれなら…」


二人に威圧されレティはゆっくりと放浪人の腕から手を離した。


「よし。医師の許可が下りたな」


腕が自由になった放浪人は壁にかけてある剣を二つ手に持つと意気揚々と舞台に乗りあがった。

両手に同じ大きさの剣をもっている放浪人を見て

「二本なんて卑怯よ」と場外の姫様から罵声がとぶもジュゼスはにやりと笑う。


「おやおや。素人ですか剣を二つ持つなんて。力が分散したりスキが大きくなるというのに…」


すると放浪人は剣を一本前に突き出した。


「なあにこれはゴングの変わりみたいなものさ。それに使える武器はできるだけ多い方がいい」

「つかう?」


ジュゼスが首をかしげると放浪人はニヤリと笑い

右手にもった剣を高くほおった。

そして空いた右手で剣を持ち構える。

放浪人の行動をジュゼスは理解したのか同じように構えじりじりと放浪人に近づいく

剣が回転しながら宙をまいお互い足に力を入れ身を屈めた。

見ていたクエセレンとレティも息をのむ。

剣が放浪人とジュゼスの真ん中に刺さる!

スカン!と音と共にお互い一気に距離を詰め剣がぶつかった!

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遥か彼方の放浪者~RenewalWord fuyu @natufuyu

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