第23話 謎と休息

城の廊下をジュゼスが片手に袋を持って医務室に差し掛かると

部屋から男女が言い合う声が聞こえた。

女性の聞き覚えのある声にジュゼスはすかさず聞き耳を立てた。


「…そんな…強引に……ダメ」

「うるさい!俺は好きにさせてもらう」

「いや……やめて…これ以上は…もう」


ジュゼスは慌ててドアを開いた!


「姉上!大丈夫ですか」


ジュゼスが見た光景それは…

病室から逃亡しようとする放浪人を必死に止めようとしているレティの姿だった。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


「それでお前何しにきたんだ」


放浪人は、不機嫌そうにベッドに腰掛けながらジュゼスに問いた。


「まさか、ディアがいないことを見計らって俺にここから出ていけなんていうんじゃないだろうな」

「そんな情けないことなどしませんよ」

「じゃあ、何しに来たんだ」

「わたしは場内に戻る前に食事をしてきたばかりですから。出された食事に手を出さないのはマナーが悪いと思ったので席を外させていただいたのですよ」

「ふーん」

「それに…我が姉を腹をすかせた野獣と二人きりにさせるわけにはいきません」


「誰が野獣だ!貴様!さっきの決着つけてやる!」

「別に構いませんが…」


怒る放浪人のお腹が鳴る。

するとジュゼスは袋を投げた。


放浪人は袋を掴み中を確認するといくつかパンが入っていた。


「フッ野獣には勿体ないですがしかたありません恵んであげましょう」

「ッチ!恵まれてやる」


パンを取り出すと容赦なくかぶりつく放浪人


「やっやわらかい!パンを食べる時は喉につかえるから飲み物がないとだめだがこのパンは違う!口に入れるとパンの風味と味が広がる加えて後からくるほのかな甘味!シュガー!」


ガツガツと食べるその姿にジュゼスはあきれる


「まったくマナーがなっていない。静かに上品に食事ができないのですか」

「ふふふ」


レティは笑う。


「姉上なにを笑っているのですか」

「だってジュゼスの表情がコロコロ変わって面白いんだもの」

「それはこの男がおかしいだけです」

「そう?でも話しているあなたとても楽しそうよ」

「それはないです」


二人が話している間に放浪人は見事完食する。


「み…水…」


死にそうになって


「一気に食べ過ぎです!」


レティは慌てて机に置いてある水を放浪人に渡すと一気に飲み干した。そんな放浪人の様子にやれやれとジュゼスが頭に手をやりため息をついた。


「まったくあなたという人は…本当にこの城に相応しくない立ち振る舞いですね」

「フン。悪かったな。でも安心しろよ。この手が治ったらさっさとこの国を出ていくから」

「ほう。野獣は野獣らしく森に帰るのですか?」


放浪人はジュゼスのしたり顔にイラっとする。


「セインエイツ学園だ。ここからずっと南東にあるんだろ」

「セインエイツ学園。ええ知っていますよ。ディア様も通学していたと聞きました」


レティは納得したように手をたたいた。


「一度行ったことあるの広大で施設が充実していてとてもきれいですよね」

「行ったことがないからよくわからんが」

「そうですか?素敵なところです。ここから(乗り物に乗って)5日くらいでいけると思いますよ」

「5日か…セインエイツの学生はタフなんだな」


放浪人は別れたサーナとディアの顔をうかべる


「あっタフだわあいつら」


寒雷の魔女、炎で敵を倒すディアお前らみたいな女がいるか!

放浪人はハッとする。


「さっきからディアを様付けで呼んでいるがなんでなんだ」


質問を投げかけると二人はキョトンとし顔を見合わせる。


「聞いていないのか?」

「聞かなかったからな」


するとレティは放浪人が座っているベッドの隣に座った。


「ディア様はこの国を救ってくれた英雄です」

「英雄?また随分大層な」

「いえ、それぐらいの事をして頂いたのですよ」


レティはコホンと咳払いをする。


「数ヶ月前に私たちの国は突如なんの前触れもなく襲撃に会いました」

「襲撃?」

「ええ。見たことのない種族です。人間でもなければ我々のエルフでもない。

全身毛深い体でとても速いまるで獣のような種族です。突然のことで私達はエルフ族は準備も整えられず緊急的に魔法や魔術で対抗するも追いつけませんでした…」

「おいジュゼス!さっきから貴様!俺を見ているが俺は違うからな!人間だからな」


チラチラ見るジュゼスを放浪人が一括する!


「戦いは激化しクエセレン姫を外に逃がそうとしたのですが門の手前で

その獣人に見つかってしまい襲われそうになりました」


気にせず物語話すレティマイペース!


「その時です。姫様と襲い掛かる獣人の間からとても大きな火柱が上がりました。その火柱は八股に別れると獣人に向かっていき追い払ったのです」

「それが」

「そう丁度エルフの国を訪れたディア様だったのです。ディア様の炎で形勢は一気に逆転。あっという間に獣人を全て城の外へ追い払ってくれたのです」

「ボロック…役に立ってたんだな」


「その後ディア様は、姫様と国を救った英雄として称えられたのです」


レティは放浪人の腕に抱き着く。


「素晴らしいですよね」


放浪人は抱き着かれて一瞬びっくりしたものの一つ疑問を口にする。


「追い払った獣人はどこにいったんだ?」


するとジュゼスが顎に手を置き考えた。


「確かにあなたの言う通り獣人の終息はわかりません。噂によると西の小さな森で暮らしていると聞きますが。まぁ城の警備はあの事件以降厳しくしていますし、私達も不要な争いは避けたいのであちらが何もしてこない以上動くことはありませんが、ですが当時でも城の塀には鉄壁な魔法をかけてあります。それに気づかれずあれだけの大群がどうやって侵入してきたのか」

「そうね。街の中央から突然出てきて襲ってきたのも謎なのよね」


レティは首をかしげる。

うーんと3人が考えている時再びドアが開く


「おっす放浪人見舞いにきたぞ」

「マスター元気になりました?」

「こんなところにいらしたのですかジュゼス様」


ログを片手に持つディアとクエセレンが部屋に入ってきた。

ディアは、放浪人の方に目を向けるとレティが放浪人の腕に抱きついているのを目撃。


「なっ!おまえ!何やってんだ」


ワナワナと震えるディア。

それを見てジュゼスは扉の前にいる姫に声をかけた。


「では放浪人ごきげんよう」


そう言い残し叫び声が響く部屋から出ていった。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


クライアバル王国の塀の外

ザガンが闇夜に隠れて塀に上り国を観察していた。


(さてダンナは城の方に入ったが)


出てくるのを待つか城の方へ行くかと考えながらまわりを観察していた。


(しかしエルフ族は相変わらず立ち直りが早いな確か獣人族に襲われたと聞いたが。なんとまあ平和だぜ)


ザガンは眉をしかめる。


(だが獣人族が突然現れ襲ったのか未だにわかってねえ。そもそも原因をロクに外に公表してないのも謎だ。クククク、なにかおもしれえのを隠してそうだな)


すると人通りが皆無な道に高級そうな服をきた小太りのエルフの男とガチガチに防具に身を包んだ兵士が貧相な民家に入っていった。


(あれは確かクライアバル王国の…クククク放浪人を探すよりあっちの方がおもしろそうだな)


ザガンは笑うと塀から飛び降りた。

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